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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第2部「継承編」
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Chapter 10 「英雄の影」

静かだった。


 ついさっきまで、

 宇宙を揺らしていた戦場とは思えないほど。


 崩壊しかけた学園コロニー。


 漂う残骸。


 消えていく粒子光。


 そして。


 宇宙空間で停止した、

 黒い機体。


《ヴァルグレイヴ》


『ソラナム!!』


 リゼの叫びが響く。


 だが。


 返答はない。


WARNING

SYNC RATE ERROR


86%


87%


 危険域突破。


 普通の人間なら、

 精神崩壊していてもおかしくない数値。


「お、おい……。」


 カナタが青ざめる。


 ヴァルグレイヴから溢れる黒い粒子。


 それはもう、

 兵器の光じゃなかった。


 まるで。


 “何か別の存在”が目覚めようとしているようだった。


『近づくな。』


 AURELIONが静かに言う。


『現在のヴァルグレイヴは極めて危険だ。』


「でも!!」


『終焉因子暴走時、

 人格維持率は著しく低下する。』


『最悪の場合、

 敵味方識別も消失する。』


「ッ……。」


 カナタは拳を握る。


 さっきまで、

 あの人は戦っていた。


 誰かを守るために。


 なのに。


 その時だった。


『……まだ、

 壊れてはいない。』


 ノヴァリオンが前へ出る。


『何?』


 AURELIONが僅かに反応する。


『彼は、

 まだ戻れる。』


 次の瞬間。


 ヴァルグレイヴが動いた。


 ゆっくり。


 こちらを見る。


 赤い片目。


 黒い粒子。


 その姿に、

 カナタは息を呑んだ。


「ソラナム……さん?」


 沈黙。


 そして。


 ヴァルグレイヴ内部から、

 低い声が漏れる。


『……誰だ。』


 その瞬間。


 リゼの顔色が変わった。


『ッ……。』


『ソラナム?』


『私よ。

 リゼ。』


 数秒。


 沈黙。


『……リゼ。』


 その声だけで、

 リゼが少しだけ安堵する。


 だが。


 次の瞬間。


 ヴァルグレイヴから黒い粒子が噴き出した。


『ぐッ……!!』


 ソラナムが苦しみ始める。


『侵食反応再上昇。』


 AURELIONが告げる。


『限界が近い。』


「なんとかなんねぇのかよ!?」


 カナタが叫ぶ。


『……方法はある。』


 ノヴァリオンが静かに言う。


『だが、

 成功率は高くない。』


「あるならやれ!!」


『終焉因子同士を共鳴させる。』


「え?」


『私とお前だ。』


 カナタの顔が引きつる。


「いや待て。」


「なんか嫌な予感しかしない。」


『大丈夫だ。』


「最近その台詞で安心できなくなってきたぞ!?」


 一方。


 学園内部。


 崩壊した整備ブロックでは、

 避難誘導が続いていた。


「そっち瓦礫気をつけて!!」


 赤茶色の髪を揺らしながら、

 一人の少女が工具箱を抱えて走っていた。

「ったくもう!!

 なんで入学初日からこんなことになってんのよ!!」

彼女の名は、火乃宮 アカリ。

整備科の学生。そして、カナタの幼馴染。


 彼女は怒鳴りながら、

 負傷した整備員へ駆け寄る。


 だが。


 その時。


 上空モニターへ、

 ノヴァリオンの姿が映った。


「……え?あぁ、今外で戦闘してる奴の中継か。」


 アカリの目が止まる。


 白いHX。


 蒼い光翼。


 そして。


 コクピット識別。


PILOT:

AMAGI KANATA


「……は?」


 数秒停止。


 そして。


「はぁぁぁぁぁぁぁ!?!?なんであいつが出撃してんのよ!?」


 絶叫が学園中へ響いた。


 一方宇宙空間。


 ノヴァリオンが、

 ヴァルグレイヴへゆっくり近づく。


『始めるぞ。』


「マジでやんのかよ……。」


『安心しろ。』


『死ぬ確率は低い。』


「“ある”んじゃねぇか!!」


 その瞬間。


 ノヴァリオンの光翼が展開する。


 蒼い粒子が、

 ヴァルグレイヴへ伸びていく。


SYNC LINK CONNECT


 白と黒。


 二つの終焉因子が、

 接触した。


 その瞬間。


 カナタの脳裏へ、

 膨大な感情が流れ込む。


 孤独。


 怒り。


 後悔。


 喪失。


 そして。


 炎の中で笑う、

 赤い機体。


『ソラナム!!』


「ッ……!?」


 カナタは初めて理解する。


 この人は。


 ずっと。


 壊れながら戦ってきたんだ。


次回予告


 終焉因子共鳴。


 その先で、

 カナタは“英雄の記憶”へ触れる。


『なんで……

 こんなの一人で背負ってんだよ……。』


Chapter 11


「共鳴」

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