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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第2部「継承編」
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Chapter 9 「三つの翼」

三機のHXが宇宙を駆ける。


黒、白、黄金。


 それぞれ異なる粒子光を放ちながら、

 白銀HXは第二形態へ突撃していた。


『重力場拡大!!』


『学園外周ブロック崩壊します!!』


 警報が鳴り止まない。


 既に宇宙コロニー外壁の一部は崩落。


 民間区画も被害が出始めていた。


「チッ……!!」


 ソラナムが舌打ちする。


 ヴァルグレイヴの左腕部。


 侵食紋様がさらに広がっていた。


SYNC RATE:82%


 危険域。


 普通なら、

 とっくに精神崩壊している数値。


『ソラナム。』


 ノヴァリオンが通信を開く。


『そのまま戦えば、

 お前が先に壊れる。』


「……まだ戦える。」


『そういう問題ではない。』


「黙ってろ。」


 短い返答。


 だが。


 カナタには分かった。


 この人。


 本当に止まらない。


 一方。


 白銀HX第二形態は、

 さらに巨大化を始めていた。


 白い結晶構造体が増殖。


 周囲空間を侵食。


 まるで。


 “宇宙そのもの”へ根を張っているようだった。


『第三段階移行確認。』


 AURELIONが静かに言う。


『このままでは、

 コロニー全域が重力崩壊へ巻き込まれる。』


「止める方法は!?」


 カナタが叫ぶ。


『核を破壊する。』


『だが。』


 黄金の視線が細くなる。


『通常攻撃では届かない。』


 その瞬間。


 白銀HXが咆哮した。


 重力衝撃波。


 三機同時に吹き飛ばされる。


「うわぁぁ!?」


 ノヴァリオンが姿勢制御。


 だが。


 ヴァルグレイヴは直撃を受けていた。


 黒い装甲が砕ける。


『ソラナム!!』


 リゼの叫び。


 しかし。


 ヴァルグレイヴは止まらない。


「……まだだ。」


 低い声。


 黒い粒子がさらに膨れ上がる。


 その時だった。


 カナタの脳裏へ、

 一瞬だけ映像が流れ込む。


 炎。


 崩壊。


 赤い機体。


 そして。


 誰かの叫び。


『ソラナム!!』


「ッ……!?」


『見るな。』


 ノヴァリオンが即座に遮断する。


「今の……なんだよ。」


『終焉因子の残滓だ。』


『彼の記憶に近づきすぎている。』


 カナタは息を呑む。


 五年前。


 ソラナムは、

 何を失ったんだ。


 その時。


 AURELIONが騎槍を構える。


ガギギギギ……


 黄金ランス分解。


 内部フレーム展開。


 無数の粒子リング形成。


「また変形したぁ!?」


『《DIVINE LANCE MODE》』


『高位殲滅形態。』


 黄金の翼が広がる。


 空間そのものへ、

 巨大な魔法陣のような粒子円環が展開した。


「うおおおおお……。」


 カナタが普通に見惚れる。


『反応が少年だな。』


「だってカッコいいだろこれ!!」


『分かる。』


 ノヴァリオンがちょっと嬉しそうだった。


 だが。


 AURELIONは冷静だった。


『だが単独では足りない。』


『二機の出力補助が必要だ。』


「え?」


 その瞬間。


 黄金機がヴァルグレイヴを見る。


『羽吹・K・ソラナム。』


『終焉因子を使用しろ。』


『核へ道を開く。』


『駄目!!』


 リゼが即座に叫ぶ。


『これ以上使ったら、

 本当に戻れなくなる!!』


「……。」


 ソラナムは黙っていた。


 そして。


 小さく笑う。


「今更だろ。」


『ッ……!!』


「俺は最初から、

 普通に戻れる側じゃない。」


 その言葉。


 リゼの表情が凍る。


「だから。」


 ヴァルグレイヴが前へ出る。


 黒い翼展開。


 粒子暴走。


「終わらせる。」


OVERDRIVE起動


SYNC RATE:85%


 宇宙が震えた。


 ヴァルグレイヴの背部装甲が崩れ落ちる。


 内部から現れる、

 漆黒の光翼。


「うわ……。」


 カナタが息を呑む。


 綺麗だった。


 でも。


 同時に怖かった。


『カナタ。』


『お前も行くぞ。』


「えっ俺も!?」


『補助しろ。』


『ソラナムを死なせるな。』


 ノヴァリオンの光翼が広がる。


 白と黒。


 二つの粒子が交差する。


 その瞬間。


 白銀HXが、

 惑星級重力砲を形成した。


 巨大な白い球体。


 学園都市そのものを呑み込む規模。


『来るぞ!!』


「やるぞォォォ!!」


 カナタが叫ぶ。


 ノヴァリオン加速。


PHASE SHIFT


 空間転移。


 一瞬で敵中枢へ接近。


 ビット兵器展開。


 蒼い粒子光が宇宙へ走る。


 一方。


 ヴァルグレイヴが真正面から突撃。


 黒い粒子が暴風のように荒れ狂う。


「どけェェェェ!!」


 拳。


 斬撃。


 蹴り。


 白銀HXの重力障壁を強引に突破する。


『今だ。』


 AURELIONが砲撃体勢へ入る。


 黄金粒子収束。


 空間リング全展開。


 騎槍中央へ、

 超高密度エネルギーが集束していく。


『発射。』


 黄金の閃光。


 宇宙を貫く一撃。


 白銀HX中枢へ直撃。


 轟音。


 崩壊。


 白い結晶体が砕け散る。


 さらに。


 ヴァルグレイヴの黒粒子砲。


 ノヴァリオンの光翼砲。


 三方向同時攻撃。


 そして。


 白銀HX第二形態が、

 ついに完全崩壊した。


『敵反応消失!!』


『重力場収束!!』


『学園宙域、

 安定化します!!』


 歓声が上がる。


 避難区画。


 艦隊。


 学生達。


 全員が安堵していた。


 だが。


 その時。


 ヴァルグレイヴが停止した。


「……ソラナム?」


 カナタが呟く。


 黒い機体が、

 ゆっくり崩れ落ちる。


『ソラナム!!』


 リゼの叫び。


 通信ノイズ。


 SYNC RATE異常上昇。


WARNING

MENTAL COLLAPSE


 その瞬間。


 ヴァルグレイヴの片目が、

 赤く染まった。

次回予告

 終焉因子の侵食は、

 確実にソラナムを蝕んでいた。


『……誰だ。』


 赤く染まるヴァルグレイヴ。


 暴走寸前。


 そして。


 カナタは初めて、

 英雄の“弱さ”を見る。


Chapter 10


「英雄の影」

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