Chapter 8 「黄金の残響」
宇宙が裂けていた。
空間ゲート。
その中心から、
ゆっくりと現れる黄金の機影。
巨大な光翼。
白金装甲。
全身を流れる黄金粒子。
そして。
右腕に固定された長大な騎槍。
『……。』
戦場が静まり返る。
防衛艦隊。
FW部隊。
全員がその存在へ視線を向けていた。
あまりにも異質。
あまりにも圧倒的。
『識別不能。』
『データベース照合失敗。』
『ですが……』
オペレーターの声が震える。
『粒子波形が、旧GENESIS戦争時の高位HXと酷似しています……!!』
一方。
ヴァルグレイヴ内部。
ソラナムの目が細くなる。
「……似てる。」
黄金。
騎槍。
超高機動粒子。
五年前も戦った宿敵。
LANCELOT
だが、違う。
あれはもっと鋭かった。
もっと狂気的だった。
今目の前にいる存在は、
どこか静かすぎる。
『……何故お前がいる。』
ノヴァリオンが初めて、
明確な動揺を見せる。
「知ってんのか!?」
『……。』
一瞬沈黙。
そして。
黄金の機体が、
ゆっくりこちらを向いた。
『識別。』
『HX-07A』
『生存確認。』
低い声。
だが。
どこか人間的だった。
カナタが目を丸くする。
「また喋るHX!?」
『最近のHXは会話機能が豊富だな。』
「お前が言うな!!」
その瞬間。
黄金機体の騎槍が展開する。
ガギギギギ……
内部フレーム露出。
黄金粒子収束。
長大なランスが、
砲撃形態へ変形した。
「うおおおお!?」
カナタの目が輝く。
「変形した!!」
『良い変形だろう。』
「いや敵だよな!?」
次の瞬間。
黄金の閃光。
超高速粒子砲が、
白銀HX第二形態へ直撃した。
轟音。
空間崩壊。
白銀HXが初めて大きく吹き飛ぶ。
『敵性HXへ攻撃!?』
『未確認黄金機、
交戦を開始しました!!』
指令室が騒然となる。
だが。
ソラナムは油断しない。
「……目的はなんだ。」
その瞬間。
黄金機体が静かに告げた。
『識別コード:AURELION』
『GENESIS監察機構所属。』
『任務:暴走因子回収。』
その言葉。
ソラナムの顔色が変わる。
「暴走因子……?」
カナタが呟く。
すると。
ノヴァリオンが低く言った。
『終焉因子のことだ。』
『人類側呼称:SYNC FACTOR。』
「え。」
『終焉因子は、
本来人類へ渡るべき力ではない。』
その瞬間。
AURELIONの視線が、
ヴァルグレイヴへ向く。
『羽吹・K・ソラナム。』
『終焉因子侵食率:危険域。』
『回収対象へ指定。』
戦場の空気が凍る。
「……は?」
カナタが顔を引きつらせる。
『回収ってなんだよ。』
『簡単に言えば。』
ノヴァリオンが静かに言う。
『ソラナムを、
HX側へ連れて行く気だ。』
「はぁ!?」
一方。
ヴァルグレイヴ内部。
ソラナムは小さく息を吐いた。
「……やっぱ来るよな。」
五年前から分かっていた。
終焉因子は、
“人類の兵器”じゃない。
GENESISは終わっていない。
HXも消えていない。
なら。
いつか必ず回収が来る。
『ソラナム少佐!!』
リゼの声が飛ぶ。
『下がって!!』
『今のあなたじゃ――』
「リゼ。」
ソラナムが静かに遮る。
『なに。』
「もし俺が暴走したら。」
『やめなさい。』
「撃て。」
通信が止まる。
『……嫌よ。』
リゼの声が震えていた。
『もう、そういうの嫌なの。』
その一言。
カナタは息を呑む。
ソラナムは何も返さない。
その時だった。
白銀HX第二形態が、
再び動き出す。
損傷再生。
重力暴走。
さらに。
周囲空間へ、
異常粒子を撒き散らし始めた。
WARNING
SPACE COLLAPSE IMMINENT
『まずい!!』
『宙域崩壊します!!』
『……時間がない。』
AURELIONが騎槍を構える。
『暴走因子を排除する。』
その照準。
ヴァルグレイヴ。
「ッ……!!」
『待て!!』
カナタが叫ぶ。
『ソラナムさんは味方だろ!?』
黄金機体が静かにこちらを見る。
『現在は。』
「は?」
『だが終焉因子侵食は、
いずれ人格を崩壊させる。』
『危険因子は、
早期処理が最適解だ。』
「ふざけんな!!」
カナタが怒鳴る。
『あの人、人間守ってただろ!!』
『……。』
AURELIONが沈黙する。
その時。
ノヴァリオンが静かに前へ出た。
『AURELION。』
『その判断は早い。』
『ノヴァリオン。』
『彼はまだ壊れていない。』
白と黄金。
二機の高位HXが対峙する。
その瞬間。
白銀HX第二形態が咆哮した。
重力場暴走。
巨大空間裂傷形成。
学園都市そのものが崩れ始める。
『全員死ぬぞ。』
ソラナムが低く言う。
『なら。』
ノヴァリオンの光翼が広がる。
『先にあれを止める。』
カナタが拳を握る。
「……やるぞ。」
そして。
ヴァルグレイヴ。
ノヴァリオン。
AURELION。
三機が同時に加速した。
次回予告
三機のHX、
共闘。
だが。
暴走する白銀HXは、
さらに異常進化を始める。
『第三段階移行。』
『惑星侵食モード起動。』
一方。
カナタは初めて、
ソラナムの“侵食の苦しみ”を目撃する。
『……なんで、
そこまで戦えるんだよ。』
そして。
黄金の騎槍が、
ついに真の姿を解放する。
Chapter 9
「三つの翼」




