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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第2部「継承編」
32/40

Chapter 5 「SYNC RATE」

宇宙が軋んでいた。


 未確認HX。


 第二形態。


 白銀の装甲が展開し、

 内部から青白い結晶構造体が露出していく。


 その周囲では、

 空間そのものが歪み始めていた。


WARNING

SPACE COLLAPSE


『重力異常拡大!!』


『学園ブロックが崩壊します!!』

『住民避難急げ!!』


 指令室は混乱していた。


 通常兵器では止められない。


 既に防衛艦隊の半数が行動不能。


 残ったFW部隊も近づけない。


 圧倒的だった。


 一方。


 崩壊した通路内。


 カナタは、

 震える手を握り締めていた。


 怖い。

当たり前だった。

 さっきまで普通に授業してただけだったのに。

 今は。

 戦場のど真ん中にいる。

「なんなんだよこれ……。」

 レンも青ざめている。

「俺ら、マジで死ぬのか……?」

 その時。

 ノヴァリオンの小型端末が、

 ふわりと浮かび上がる。

『安心しろ。』

『私がいる。』

「いやお前さっきから軽いんだよ!!」

『軽い方が緊張が和らぐ。』

「そういう問題か!?」


 だが。

 次の瞬間。

 宇宙全体へ、

 白銀HXの声が響いた。

『終焉因子反応を複数確認。』

『脅威判定を更新。』

 その瞬間。

 敵HXの視線が、

 ヴァルグレイヴへ向く。

『羽吹・K・ソラナム。』

『危険度:最上位。』

「……。」

 ソラナムは無言だった。

 ヴァルグレイヴが静かに構える。

 黒い粒子が噴き出す。


『敵性HX出力上昇!!』

『来ます!!』

 白銀HXが消えた。

 超高速。

 空間跳躍。

 次の瞬間。

 ヴァルグレイヴの目前。

 重力刃形成。

 斬撃。

 轟音。

 黒と白銀が激突した。


「うわ……。」

 カナタは思わず息を呑む。

 速すぎる。

 目で追えない。

 宇宙に残るのは、

 黒と白の閃光だけ。

 拳。

 粒子。

 衝撃波。

 そして。

 ヴァルグレイヴが、

 敵HXを蹴り飛ばす。

 さらに。

 黒い翼が展開した。


『OVERDRIVE反応確認!!』

『ソラナム少佐、また出力を!!』

 リゼの声が飛ぶ。

『やりすぎないで!!』

『侵食率まだ安定してないのよ!?』

「……分かってる。」

 低い返答。

 だが。

 その瞬間。

 ヴァルグレイヴ左腕へ、

 黒い侵食紋様が浮かび上がる。

 カナタは息を呑んだ。

「……あれ。」

『終焉因子侵食。』

 ノヴァリオンが静かに言う。

『長期適合者に発生する症状だ。』

「……ッ。」

『彼は長く戦いすぎた。』

 その言葉だけは、

 少しだけ重かった。


 一方。

 ヴァルグレイヴは押され始めていた。

 敵HX第二形態。

 空間崩壊能力。

 重力制御。

 そして。

 異常な再生能力。

 黒い粒子砲が直撃しても、

 数秒で修復してしまう。

『再生速度、

 通常HXを超えています!!』

『キリがありません!!』

 さらに。

 敵HXが腕を掲げる。

 空間が裂ける。

 巨大な重力槍が形成された。

『危険。』

 ノヴァリオンが即座に反応する。

『あの攻撃は、

 学園区画ごと消滅させる。』

「……は?」

『推定被害:約四万人。』

 カナタの顔色が変わる。

「四万……。」

 避難途中の学生。

 教師。

 住民。

 全員消える。


 その時。

 ソラナムの声が響く。

『リゼ。』

『……なによ。』

『避難艦を下げろ。』

『何する気!?』

『止める。』

 短い言葉。

 だが。

 リゼはすぐ理解した。

『駄目。』

『それ以上OVERDRIVE使ったら――』

『放っといたら全員死ぬ。』

『ッ……!!』

 通信が詰まる。

 そして。

 リゼが小さく呟いた。

『……帰ってきなさいよ。』

「……。」

 ソラナムは返事をしなかった。


 ヴァルグレイヴが前へ出る。

 黒い粒子が爆発的に増加する。

WARNING

SYNC RATE RISING

72%

75%

78%

 機体が軋む。

 空間が悲鳴を上げる。

 カナタは震えていた。

 これが。

 英雄。

 HX戦争を生き残った男。

 なのに。

 どこか危うい。

 まるで。

 自分を壊しながら戦っているようだった。


『……だから嫌なんだ。』

 ノヴァリオンが小さく呟く。

「え?」

『彼は、

 全部一人で背負おうとする。』

 その声は、

 少し寂しそうだった。


 その瞬間。

 敵HXの重力槍が放たれる。

 終焉の光。

 一直線に学園へ迫る。

『来るぞ!!』

 ヴァルグレイヴ加速。

 黒い翼が宇宙を裂く。

 真正面から迎撃。

 衝突。

 超重力と黒粒子が激突し、

 宇宙そのものが震えた。


「止めろォォォォ!!」

 ソラナムが叫ぶ。

 SYNC RATE上昇。

80%

81%

 黒い粒子が暴走し始める。

 侵食紋様が首筋まで広がる。

『ソラナム!!』

 リゼが叫ぶ。

『それ以上は駄目!!』


 だが。

 その時だった。

 カナタの頭へ、

 再びノヴァリオンの声が響く。

『……見ていられない。』

「え?」

『あのままだと、彼はまた壊れる。』

「また……?」

『カナタ。』

 ノヴァリオンが静かに言う。

『力を貸してくれ。』

「……俺に、

 何ができるんだよ。」

『君なら、彼を止められるかもしれない。』

その瞬間。戦闘していたノヴァリオンがカナタの降り立つ。

『SYNC LINKを開始する。』

『怖いか?』

「……そりゃ怖ぇよ。」

『正常だ。』

 ノヴァリオンが少し笑うような声を出す。

『だが。』

『君は、逃げないタイプだろう?』

「……。」

 図星だった。

 カナタは、

 ゆっくり拳を握る。

 そして。

 宇宙で戦うヴァルグレイヴを見る。

 あんな風に。

 誰かを守れるなら。

 そう思ってしまった。


「……乗ればいいんだな。」

『あぁ。』

『歓迎しよう、天城カナタ。』

 その瞬間。

 ノヴァリオンの光翼が、

 さらに眩く広がった。

次回予告

 ついに始まる、

 カナタとノヴァリオンのSYNC LINK。

 だが。

 終焉因子との接続は、

 決して安全なものではなかった。

『SYNC RATE上昇。』

『精神同期開始。』

 一方。

 暴走寸前のソラナムは、

 五年前の悪夢を見始める。

『……フレア。』

 そして。

 白き翼が、

 初めて宇宙を翔ける。

Chapter 6

「初起動」

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