Chapter 4 「接触」
黒。
白。
二つのHXが、
崩壊した学園宙域で対峙していた。
《ヴァルグレイヴ》
《ノヴァリオン》
片方は、
終焉戦争を生き残った“黒き英雄”。
もう片方は、
記録に存在しない“白き新星”。
そして。
その中央。
未確認HXが、
静かに両機を観測していた。
『……解析不能。』
白銀HXが初めて、
僅かなノイズを発する。
『終焉因子反応、
二重確認。』
『危険度を再設定。』
次の瞬間。
敵HX全身から、
膨大な粒子が噴出した。
WARNING
GRAVITY FIELD EXPANSION
『重力場拡大!!』
『学園ブロックが引き込まれます!!』
空間が歪む。
崩れた瓦礫。
デブリ。
戦艦残骸。
全てが白銀HXへ吸い寄せられていく。
「うわっ……!!」
カナタが壁へ叩きつけられる。
重い。
立てない。
空気そのものが押し潰してくる。
『カナタ!!』
レンも床へ這いつくばる。
その時だった。
白い光翼が広がる。
《ノヴァリオン》
蒼い粒子が空間へ拡散した瞬間、
重力歪曲が相殺される。
『重力干渉を確認。』
『ノヴァリオンが空間固定を行っています!!』
指令室が騒然となる。
一方。
ヴァルグレイヴは静かだった。
ソラナムは、
敵HXを睨んでいる。
「……空間制御型か。」
五年前には存在しなかったタイプ。
しかも。
明らかに、
カナタを狙っている。
その理由は。
終焉因子。
ソラナムの顔が僅かに険しくなる。
『ソラナム。』
突然。
通信が開く。
女性の声。
『無茶しないで。』
リゼだった。
ブリッジモニター越し。
銀髪。
鋭い目。
だが。
ソラナムを見る時だけ、
少しだけ柔らかくなる。
「来てたのか。」
『当たり前でしょ。』
『未確認HXなんて案件、
放っておける訳ないわ。』
少し呆れた声。
そして。
リゼはカナタの映像を見る。
『……あの子?』
「あぁ。」
『適合者なの?』
「多分な。」
短い返答。
だが。
その声色だけで、
リゼは理解した。
ソラナムがかなり警戒している。
『また、
一人で抱え込む気?』
「……。」
『返事しなさい。』
「してない。」
『嘘。』
即答だった。
ソラナムが小さく息を吐く。
「……リゼ。」
『なに。』
「後でいいか?」
『…わかった、絶対よ。』
通信終了。
その時。
突然、
カナタの目の前へ、
小型ドローンのような物体が降りてきた。
「……は?」
白い球体。
青い発光ライン。
小さな光翼。
どこかノヴァリオンに似ている。
「なんだこれ。」
『よっ。』
「ッッッ!!?なんだこれ!?」
カナタが飛び上がる。
『あそこで戦っている白いほうのHXだか?どうした。』
「しゃ、喋ったぁぁぁぁ!?」
レンも固まる。
「は?」
「え?」
ドローンが少し傾く。
『驚きすぎではないか?』
「いや驚くだろ!?」
「HXって喋んの!?」
『喋る。』
『というか、
会話機能が無いと不便だ。』
「不便て。」
カナタが完全に混乱する。
『改めて自己紹介しよう。』
ドローンが胸を張るように浮かぶ。
『私は《ノヴァリオン》。』
『形式番号はHX-07Aだ。』
「……は?」
『よろしく、
カナタ。』
「いや待て待て待て!!」
「なんでそんなテンション軽いんだよ!?」
『軽い方が話しやすいだろう?』
「そういう問題じゃねぇ!!」
だが。
その時だった。
ソラナムの声が割り込む。
『少年。』
低い声。
空気が変わる。
カナタが顔を上げる。
ヴァルグレイヴが、
こちらを見ていた。
『その機体から離れろ。』
冷たい声だった。
「え……。」
『ノヴァリオンに接続するな。』
『終焉因子に関われば、人生が壊されるぞ』
その言葉。
あまりにも重かった。
『む。』
ノヴァリオンが少し不満そうな声を出す。
『私は壊す気はない。』
『むしろ友好的だ。』
『あと君、言い方ってものがあるだろ、オブラートに2重に3重に包んでから話したまえ。』
「お前そんな感じなの!?」
カナタがまた混乱する。
だが。
ソラナムは真剣だった。
『……ノヴァリオン。』
『その少年へ近づくな。』
『拒否する。』
「拒否するな!!」
レンが叫ぶ。
次の瞬間。
白銀HXが再び動いた。
超加速。
一直線にカナタへ迫る。
『危険。』
ノヴァリオンが即応する。
だが。
敵HXの速度が速い。
間に合わない。
「ッ!!」
その瞬間。
黒い粒子が宇宙を裂いた。
《ヴァルグレイヴ》
黒い拳が、
敵HXを真正面から殴り飛ばす。
轟音。
白銀HXが吹き飛ぶ。
「……。」
カナタは目を見開く。
速い。
凄い。
映像なんかより、
遥かに圧倒的だった。
そして。
ヴァルグレイヴが、
ゆっくりこちらを見る。
『……少年。』
「は、はい!!」
『死にたくなかったら、ノヴァリオンに乗るな。』
低い声。
それだけ言って。
ヴァルグレイヴは再び敵HXへ向かう。
だが。
ノヴァリオンが小さく呟いた。
『説得が下手だな、あの男。』
「お前ほんと何なんだよ……。」
『HXだが?』
「そこじゃねぇ。」
カナタは頭を抱える。
なのに。
不思議だった。
怖いはずなのに。
この白いHXと話していると、
少しだけ安心してしまう。
その時。
ノヴァリオンが突然静かになる。
『……来るぞ。』
「え?」
次の瞬間。
白銀HXが、
全身を変形させ始めた。
重力粒子暴走。
空間崩壊。
学園宙域全体が震える。
『第二形態へ移行を確認!!』
『まずい!!』
『出力が急上昇しています!!』
そして。
敵HXが、
初めて“感情”のような声を出した。
『終焉因子を、
排除します。』
次回予告
暴走する未確認HX。
学園崩壊まで、
残された時間は少ない。
一方。
カナタは、
ノヴァリオンとの接続を迫られる。
『君なら大丈夫だ。』
『多分。』
「多分!?」
さらに。
ソラナムは、
五年前の“ある記憶”を思い出していた。
『……また、
同じ目をしてる。』
Chapter 5
「SYNC RATE」




