Chapter 3「白き翼」
白い光が、
学園宙域を染め上げていた。
崩壊した地下区画。
砕けた装甲壁。
その中心で。
一体のHXが、
静かに浮かんでいる。
《HX-07A ノヴァリオン》
純白の装甲。
内部フレームを流れる蒼い粒子。
黄金色のラインが、
神秘的な光を放っていた。
そして。
背中から展開された巨大な光翼。
それはまるで、
“天使”そのものだった。
『未確認機体反応!!』
『HX……!?』
『いや違う!!』
学園指令室が混乱する。
誰も知らない。
記録に存在しない機体。
なのに。
その姿には、
どこか人類製FWとも違う“意思”があった。
一方。
地下通路。
カナタは呆然と、
その機体を見上げていた。
「……なんだよ、
あれ。」
胸が熱い。
頭痛も消えていない。
むしろ強くなっている。
そして。
頭の中へ、
また声が響いた。
『適合者を確認。』
『リンクを開始します。』
「ッ……!!」
視界が揺れる。
その瞬間。
ノヴァリオンの瞳が、
ゆっくりこちらを向いた。
『対象保護を優先。』
次の瞬間。
白銀HXが動いた。
超高速。
一直線にカナタへ迫る。
「危ねぇ!!」
レンが叫ぶ。
だが。
その前へ、
ノヴァリオンが割り込んだ。
光翼展開。
空間が歪む。
瞬間移動。
次の瞬間には、
白銀HXの目前へ現れていた。
『――!?』
敵HXが初めて反応を乱す。
そして。
ノヴァリオンの右腕へ、
蒼い光が収束した。
粒子ブレード形成。
閃光。
一閃。
白銀HXの腕部が、
空間ごと切断された。
『なっ……!?』
『未確認HXが押されている!?』
指令室がざわめく。
圧倒的だった。
ノヴァリオンの動きは、
既存HXを完全に上回っている。
軽い。
速い。
そして美しい。
「すげぇ……。」
カナタが思わず呟く。
だが。
その瞬間。
頭の奥へ、
激痛が走った。
「ッぁぁ!!」
『カナタ!?』
レンが支える。
脳裏へ映像が流れ込む。
宇宙。
戦争。
光の翼。
そして。
知らない少女の声。
『あなたは、
選ばれています。』
「……誰、だよ。」
『SYNC LINK接続率上昇。』
『現在18%』
「は……?」
数字の意味が分からない。
だが。
本能的に理解する。
これは危険だ。
一方。
ノヴァリオンは、
白銀HXを圧倒していた。
光翼噴射。
超加速。
蒼い残光が宇宙を走る。
敵HXが迎撃粒子砲を放つ。
だが。
当たらない。
ノヴァリオンが空間そのものを滑るように回避する。
『空間位相移動……!?』
『あれがPHASE SHIFT……!?』
指令室の技術士官が震える。
次の瞬間。
ノヴァリオン背部展開。
六基の小型ユニットが分離した。
『新兵装確認!!』
『遠隔兵器です!!』
《AETHER BIT》
蒼いビット群が、
一斉に敵HXへ襲いかかる。
高速射撃。
包囲攻撃。
全方位粒子砲火。
白銀HXが初めて後退した。
『対象脅威度上昇。』
『回収任務を中断。』
『戦闘行動へ移行。』
敵HXの全身から、
青白い粒子が噴き出す。
次の瞬間。
学園宙域全体へ、
重力異常が発生した。
『重力波反応!?』
『まずい!!』
宇宙空間のデブリが、
一斉に引き寄せられていく。
防衛艦隊が崩れる。
「なんだよこれ……!!」
カナタも息を呑む。
すると。
ノヴァリオンが、
ゆっくりこちらを見た。
『適合者へ警告。』
『敵性HX、
殲滅モードへ移行。』
「……適合者って、
俺の事か?」
『YES』
即答だった。
「いやいやいや!!」
『搭乗を推奨します。』
「はぁ!?」
レンも叫ぶ。
「搭乗ってなんだよ!!」
『ノヴァリオン単独戦闘では、
出力制限があります。』
『SYNC LINK接続を要求。』
「無茶言うな!!」
だが。
その瞬間。
白銀HXが再加速した。
狙いは。
カナタ。
『危険。』
ノヴァリオンが動く。
だが。
間に合わない。
敵HXの粒子砲が、
真正面から放たれる。
「ッ――!!」
死を覚悟した。
その瞬間だった。
黒い閃光。
宇宙が裂ける。
次の瞬間。
巨大な黒い機体が、
粒子砲を真正面から切り裂いた。
轟音。
爆炎。
黒い翼。
禍々しい装甲。
そして。
蒼く光る瞳。
《HX-01C ヴァルグレイヴ》
学園全体が静まり返る。
『あれって……』
『まさか……!!』
『ヴァルグレイヴ……!?』
コクピット内部。
一人の男が、
静かに前を見ていた。
羽吹・K・ソラナム。
五年前の英雄。
だが。
その表情は、
どこか冷え切っている。
「……間に合ったか。」
低い声。
そして。
ヴァルグレイヴが、
白銀HXへ向き直る。
『IDENTIFICATION』
『終焉因子適合者:
羽吹・K・ソラナム』
敵HXが初めて、
僅かに後退した。
カナタは呆然としていた。
目の前の黒い機体。
何度も映像で見た。
英雄。
伝説。
人類を救った存在。
ヴァルグレイヴ。
そして。
ソラナム本人。
「……本物。」
小さく呟く。
その瞬間。
ヴァルグレイヴのカメラアイが、
一瞬だけこちらを向いた。
なぜか。
カナタの背筋が震えた。
英雄だった。
なのに。
その姿はどこか、
酷く危うく見えた。
ソラナムは、
ノヴァリオンを見つめていた。
「……目覚めたのか。」
低い声。
そして。
その視線が、
カナタへ向く。
次の瞬間。
彼の表情が僅かに変わった。
「……マジかよ。」
SYNC波形。
終焉因子反応。
適合率。
全部が異常だった。
五年前の自分以上に。
次回予告
ついに現れた、
黒き英雄ソラナム。
だが。
彼はカナタを見るなり、
険しい表情を浮かべる。
『お前、ノヴァリオンに触るな。』
一方。
未確認HXは、
さらなる戦闘形態へ移行。
学園宙域は完全戦場と化す。
そして。
ノヴァリオンは、
カナタへ“搭乗”を要求する。
『SYNC RATE上昇。』
『適合限界を突破します。』
Chapter 4
「接続」




