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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第2部「継承編」
28/33

Chapter 1「青い新星」

夢を見ていた。


 赤く燃える宇宙。


 崩壊する艦隊。


 巨大な黒い翼。


 そして。


 一人の男。


 黒い機体へ乗り、

 終焉の光へ立ち向かう背中。


『ここで引いたら、終わる。』


 その声だけが、

 妙に鮮明だった。

「――おいカナタ!!」


「ッ!?」


 机へ突っ伏していた少年が、

 勢いよく顔を上げる。


 教室が笑いに包まれていた。


「また寝てたぞお前。」


「いや、起きてましたけど?」


「完全に白目だった。」


「マジか……。」


 ざわざわとした教室。


 大型モニター。


 士官候補生用デスク。

壁へ掲げられた、

 EVA管理局の紋章。


 ここは。


 EVA士官学校・第二宇宙学区。


 HX戦争終結から、

 五年後の世界。


「天城カナタ。」


 教壇の女性教官が、

 冷たい目を向ける。


「授業中の居眠りは感心しないわね。」


「すみません……。」


「なら今の説明を復唱してみなさい。」

「えーっと……。」


 カナタは立ち上がる。


 そして。


 モニターへ映る文字を見る。


【第一次終焉戦争】


 人類史最大規模の宇宙戦争。


 HX文明。


 GENESIS。


 ヘリオス戦役。


 黒きHX。


 ヴァルグレイヴ。


 それらの単語が並んでいた。

「……HX文明は、

 外宇宙由来の機械生命体群であり。」


「続けて。」


「人類との戦争後、

 現在は停戦状態……?」


「疑問形にしない。」


 教室から笑いが起きる。


 カナタは頭を掻いた。


「特に重要なのは。」


 教官がモニターを切り替える。


 一枚の写真。


 そこに映るのは。


 黒い機体。


《HX-01C ヴァルグレイヴ》

教室の空気が少し変わる。


「ヘリオス戦役において、

 単独でGENESIS主砲へ接近した機体。」


「うおー……。」


「マジでかっけぇ。」


 男子生徒たちがざわつく。


 当然だ。


 この機体は、

 もはや伝説だった。


「搭乗者は。」


 次の写真。


 一人の青年。


 黒髪。


 鋭い目。


 どこか疲れた表情。

羽吹・K・ソラナム。


「人類史上初の、

 終焉因子適合者。」


「……。」


 カナタは黙って画面を見つめる。


 幼い頃から、

 何度も見た顔だった。


 HX戦争を終わらせた英雄。


 世界を救った男。


 だけど。


 最近の写真はほとんど無い。


 ヘリオス戦役以降、

 前線へ出ているという話も少ない。


 今どこで何をしているのか。


 それを知る者は少なかった。

「はいはーい。」


 一人の女子生徒が手を上げる。


「ソラナムって、

 今もヴァルグレイヴ乗ってるんですか?」


「機密事項よ。」


「えー。」


「ただし。」


 教官が静かに言った。


「現在もEVA管理局所属である事は確認されています。」


 その瞬間。


 カナタの目が少し輝く。


「……。」


 やっぱり。

まだ戦ってるんだ。


 授業終了後。


 食堂。


 騒がしい昼休み。


「お前ほんとソラナム好きだな。」


 友人の早乙女レンが呆れたように言う。


「そりゃ好きだろ。」


 カナタは即答した。


「HX相手に一人で突っ込んだんだぞ?」


「英雄マニアめ。」


「でも実際すげぇじゃん。」


「まぁなー。」


 レンも苦笑する。

五年前。


 HX戦争は世界を変えた。


 都市はいくつも消えた。


 難民も増えた。


 軍事制度も変わった。


 そして。


 “英雄”という存在も。


「つーかさ。」


 レンがジュースを飲みながら言う。


「お前なんで士官学校来たん?」


「……守りたいから。」


「お、真面目。」

「茶化すな。」


 カナタは少しだけ視線を落とす。


 幼い頃。


 HX襲撃で故郷は半壊した。


 その時見た。


 燃える街。


 泣いていた人たち。


 そして。


 空を飛ぶ黒い機体。


 ヴァルグレイヴ。


 あの瞬間から。


 自分も、

 誰かを守れる側になりたいと思った。

その時だった。


WARNING

WARNING

WARNING


 警報。


 食堂全体へサイレンが響き渡る。


「なっ……!?」


 モニターが赤く染まる。


【未確認HX反応】


【学園宙域へ接近中】


「はぁ!?」


「演習じゃないの!?」


 生徒たちが騒ぎ始める。


 教官たちの表情も険しい。

『全候補生へ通達。』


『直ちに避難シェルターへ移動。』


『繰り返す――』


「マジでHX!?」


「嘘だろ!?」


 カナタも立ち上がる。


 胸がざわつく。


 五年前とは違う。


 現在HXは大規模侵攻してこない。


 小規模出現はある。


 だが。


 学園宙域に現れるなんて。

「カナタ!!」


 レンが叫ぶ。


「早く行くぞ!!」


「あ、あぁ!!」


 生徒たちが走り出す。


 その時。


 窓の外。


 宇宙空間へ、

 一筋の青白い光が走った。


 次の瞬間。


 爆発。


 防衛艦隊の一隻が吹き飛ぶ。


「ッ……!!」


 カナタの息が止まる。

見えた。


 敵影。


 白銀色。


 細長い人型。


 HX。


 しかも。


 今まで見た機体とは違う。


『IDENTIFICATION ERROR』


『UNKNOWN HX』


『コード未登録』


「未確認……?」


 その瞬間。


 頭の奥で、

何かが響いた。


 ノイズ。


 耳鳴り。


 そして。


 黒い声。


『――適合確認。』


「……え?」


 カナタが立ち止まる。


 視界が揺れる。


『SYNC FACTOR DETECTED』


『候補個体を認識。』


「な、んだ……?」


 頭痛。

心臓が熱い。


 そして。


 宇宙のどこかから。


 “何か”に見られている感覚。


『カナタ!!』


 レンが腕を掴む。


「お前顔色やべぇぞ!?」


「……ッ。」


 その瞬間。


 宇宙空間。


 未確認HXが、

 ゆっくり学園方向を向いた。


 まるで。

“カナタを見つけた”ように。


 次の瞬間。


 HX加速。


 防衛ライン突破。


『対象接近!!』


『速すぎる!!』


『迎撃間に合いません!!』


 白銀の閃光が、

 一瞬で学園外壁へ迫る。


「ッ――!!」


 爆発。


 衝撃。


 窓ガラスが砕け散る。


 悲鳴。

炎。

 崩れる天井。

「うわぁぁぁぁ!!」

 生徒たちが吹き飛ぶ。

 カナタも床へ叩きつけられた。

「ぐっ……!!」

 煙の向こう。

 巨大な影。

 HX。

 学園内部へ侵入してきていた。


 赤い単眼が光る。

 ゆっくり。

 こちらを見る。

 カナタの背筋へ、

 冷たいものが走った。

『SYNC TARGET CONFIRMED』

『回収を開始します。』

「……回収?」

 その言葉の意味を理解する前に。

 HXが動いた。

 腕部展開。

 青白い粒子砲収束。

「カナタぁぁぁ!!」

 レンが叫ぶ。

 逃げなきゃ。

 分かってる。

 なのに。

 体が動かない。

 死。

 その瞬間。

 頭の奥で、

 再び声が響いた。

『――起動しますか?』

 知らない声。

 でも。

 どこか優しかった。

「……誰だ。」

『応答を確認。』

『HX-07A 起動承認待機。』

 その瞬間。

 学園地下深部。

 封鎖区画。

 巨大な白い瞳が、

 静かに発光した。


 そして。

 宇宙の遥か彼方。

 暗い格納庫の中。

 一人の男が、

 静かに目を開く。

 黒いコート。

 左腕へ残る侵食痕。

 疲れた瞳。

 羽吹・K・ソラナム。

『未確認SYNC反応を感知。』

『適合率、

 異常上昇。』

 無機質なオペレーター音声。

 ソラナムは沈黙する。

 そして。

 小さく呟いた。

「……またか。」

 その目は、

 どこか諦めているようだった。

次回予告

 突如襲来した未確認HX。

 学園は戦場へ変わる。

 一方。

 地下封鎖区画で眠っていた、

 白きHXノヴァリオンが、

 ついに起動を開始する。

 そして。

 天城カナタへ現れる、

 謎の“声”。

『あなたは、

 適合しています。』

 だが。

 終焉因子へ適合するという事は、

 同時に“終焉”へ近づくという事だった。

Chapter 2

「適合者」

 その光は、

 希望か終焉か。

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