Chapter 25「終焉を超える者」
赤黒い光が、
宇宙を裂いていた。
《RAGNAROK》。
HX侵食率、急上昇。
紅黒の翼が展開され、
周囲空間を侵食していく。
対するは。
《ヴァルグレイヴ》
黒き終焉天使。
SYNC RATE:95%
両機が存在しているだけで、
空間が悲鳴を上げていた。
「終わりだ。」
フレア――いや、
《RAGNAROK》が低く呟く。
「もう誰も信じない。」
黒槍構築。
超高密度終焉粒子収束。
『危険!!』
『宙域崩壊レベルです!!』
だが。
ソラナムは退かない。
「フレア。」
「その名前で呼ぶなッ!!」
《RAGNAROK》突撃。
超高速。
紅黒の残光が、
一瞬で《ヴァルグレイヴ》へ到達する。
衝突。
粒子爆発。
黒槍と黒翼が激突し、
宇宙そのものが割れた。
一方。
《ANGEL PRIME》は、
静かに戦場を見つめていた。
『観測継続。』
『終焉因子同士の共鳴を確認。』
その視線の先。
二機の粒子が、
互いを侵食し合っている。
『人類は、
何故ここまで抗う。』
その問いに。
誰も答えない。
「ぁぁぁぁぁぁッ!!」
《RAGNAROK》猛攻。
槍。
蹴り。
拳。
重い。
速い。
そして。
悲しいほど迷いが無い。
「アンタを超える!!」
《ヴァルグレイヴ》吹き飛ぶ。
装甲破砕、黒翼崩壊。
だが。
ソラナムは立ち上がる。
「……フレア。」
「黙れ!!」
「俺は!!」
ソラナムが叫ぶ。
「お前を救いたい!!」
その瞬間。
フレアの動きが、
一瞬だけ止まった。
「……は?」
「俺が壊した!!」
ソラナムの声が震える。
「ミリアを殺したのも!!お前をこんな風にしたのも!!全部俺だ!!」
沈黙。
宇宙が静まり返る。
「だから。」
《ヴァルグレイヴ》が、
ゆっくり武器を捨てた。
「もうこれ以上、誰も傷つけたくない。」
「……。」
「殺したいなら殺せ。」
「でも。」
ソラナムが前を見る。
「お前だけは、終わらせたくない。」
フレアの瞳が揺れる。
脳内へ、
記憶が流れ込む。
アカデミー時代。
笑っていた日々。
無茶ばかりする先輩。
それを追いかけていた自分。
そして。
ミリアの声。
『生きて。』
『アンタ、
すぐ無茶するから。』
「……ッ。今さら綺麗事をほざくなぁぁぁぁぁ!!!」
《RAGNAROK》の剣が震える。
だが。
次の瞬間。
WARNING
GENESIS PARTICLE REACTION
《RAGNAROK》全身へ、
黒い侵食が走った。
『適合完了を開始。』
『感情因子を排除します。』
「がぁぁぁぁぁぁッ!!」
フレアが絶叫する。
「な、んだ……これ……!!」
HX粒子暴走。
侵食急加速。
《RAGNAROK》巨大化開始。
『まずい……!!』
リゼが息を呑む。
『フレアが、機体に喰われてる……!!』
その瞬間。
ソラナムの目が変わった。
「ヴァルグレイヴ。」
『応答。』
「力を貸せ。」
『終焉継承を許可しますか。』
「違う。」
ソラナムが前を見る。
「終わらせるためじゃない。」
「助けるために使う。」
沈黙、そして初めて。
《ヴァルグレイヴ》が静かに答えた。
『……承認。』
SYNC RATE:100%
黒い翼が、
白く染まる。
『え……?』
リゼが息を呑む。
終焉粒子が変質していく。
破壊ではない。
収束。
安定。
光。
《ヴァルグレイヴ》が、
白黒混合の新形態へ変化する。
『新形態確認。』
『CODE:VALGRAVE - REBIRTH -』
ソラナムが加速する。
一瞬。
宇宙から黒と赤が消えた。
次の瞬間。
《RAGNAROK》の胸部へ、
《ヴァルグレイヴ》の手が突き刺さる。
「返せ。」
ソラナムが叫ぶ。
「フレアを返せぇぇぇぇ!!」
白黒粒子爆発。
終焉侵食逆流。
《RAGNAROK》が絶叫する。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
そして。
紅黒の装甲が、
少しずつ剥がれていく。
一方。
遥か彼方。
撤退中の《GENESIS》。
巨大な瞳が、
静かに瞬いた。
『観測更新。』
『終焉因子変質を確認。』
『可能性値上昇。』
そして。
初めてGENESISが、僅かに沈黙した。
『人類は――』
『未だ結論に至らず。』
巨大な門が閉じる。
《GENESIS》消失。
HX群完全撤退。
終焉戦争、
一時終結。
宇宙。
崩壊した《RAGNAROK》から、
一機のFWが分離する。
《クリムゾナー》
ボロボロだった。
だが。
まだ生きている。
「……フレア!!」
ソラナムが駆け寄る。
フレアは、虚ろな目で宇宙を見ていた。
「……フレア?」
返事がない。
ソラナムが震える。
「おい……。」
肩を掴む。
反応無し。
その時。
フレアが小さく呟く。
『……ミリア?』
ソラナムの呼吸が止まる。
『見てくださいよ先輩。』
『俺、やっと強く――』
言葉が途切れる。
焦点が合わない。
記憶が壊れている。
宇宙に、
静かな光が漂っていた。
白い粒子。
まるで。
ミリアが、
最後に残した羽のようだった。
次回予告
第1部、完結。
終焉戦争は一時終結。
だが。
失われたものは、
あまりにも大きかった。
ミリアを失ったフレア。
終焉因子へ侵食されたソラナム。
そして、
人類へ残された“HXの真実”。
一方。
《ANGEL PRIME》は、ある未来を観測する。
『第二観測フェーズ開始。』
『次なる終焉が接近しています。』
そして。
宇宙の果てで、
新たな影が目を覚ます。
Chapter 26 FINAL
「END OF GENESIS」
人類は、
まだ終わっていない。




