Chapter 24「継承戦争」
黒と紅。
二つの終焉因子が、
宇宙で激突していた。
《ヴァルグレイヴ》
《RAGNAROK》
衝突の度、
粒子嵐が宙域を裂く。
残骸。
炎。
崩壊した艦隊。
もはや戦場に、
普通の兵士が介入できる領域ではない。
『両機出力異常上昇!!』
『空間そのものが歪んでいます!!』
ヘリオス・ベース司令室。
誰もがモニターを見上げていた。
「ぁぁぁぁぁッ!!」
《RAGNAROK》の黒槍が振り下ろされる。
超高熱。
HX粒子侵食。
直撃した小惑星が蒸発した。
「フレア!!」
ソラナムが叫ぶ。
だが。
「その名前で呼ぶな。」
紅黒の瞳。
そこにはもう、
以前の熱血な後輩はいなかった。
「アンタがその名前を呼ぶたび、反吐が出る。」
超加速。
《RAGNAROK》消失。
次の瞬間。
《ヴァルグレイヴ》腹部へ膝蹴り。
「ッぁ!!」
装甲破砕。
黒い機体が吹き飛ぶ。
「全部アンタのせいだ。」
「違う!!」
「違わない!!」
フレアが吠える。
「ミリアは!!」
「アンタを助けようとして死んだ!!」
黒槍突撃。
《ヴァルグレイヴ》防御。
だが。
押し切られる。
出力差ではない。
怒り。
憎悪。
喪失。
その感情が、
《RAGNAROK》を異常進化させていた。
一方。
ソラナムの視界は、
徐々に黒く侵食されていた。
SYNC RATE:93%
『終焉天使化進行。』
『肉体侵食率48%』
左腕が黒く変色している。
感覚も薄い。
それでも。
「俺は……。」
ソラナムが歯を食いしばる。
「お前を止める……!!」
「止める?」
フレアが笑った。
乾いた笑い。
「また上からかよ。」
「……ッ。」
「いつもそうだった。」
《RAGNAROK》が加速。
「アンタは、
全部一人で背負い込んで。」
「勝手に壊れて。」
「勝手に人を巻き込む。」
紅剣回転。
粒子爆発。
《ヴァルグレイヴ》右肩部損壊。
「だったらどうすればよかった!!」
ソラナムが叫ぶ。
「俺は守りたかっただけだ!!」
「結果が全部だろ!!」
その瞬間。
《RAGNAROK》の拳が、
《ヴァルグレイヴ》顔面を叩き砕いた。
「守れてねぇんだよ!!」
沈黙。
その言葉だけが、
ソラナムへ深く刺さった。
一方。
リゼはモニターを見つめていた。
震えている。
『リゼ……。』
オペレーターが声をかける。
だが。
彼女は動けない。
ミリアの最後が、
頭から離れなかった。
『私が行くべきだった……。』
小さな呟き。
『ミリアじゃなくて、
私が……。』
その時。
ANGEL PRIMEが、
静かにリゼを見る。
『お前は恐れた。』
『……。』
『だがそれは、
人間として正常反応。』
「慰めるつもり?」
『違う。』
ANGEL PRIMEが言う。
『恐怖を抱えながら進めるか。』
『それが、
人類の価値だ。』
リゼの瞳が揺れる。
一方。
戦場。
《RAGNAROK》が、
ゆっくり槍を構えた。
その姿はもう、
完全にHXだった。
『侵食率72%』
『適合完了間近。』
「力があれば。」
フレアが呟く。
「もう失わなくて済む。」
「違う!!」
ソラナムが叫ぶ。
「その先にあるのは終焉だ!!」
「だからなんだ。」
フレアが静かに言う。
「人間のままでも、どうせ失う。」
その瞬間。
《RAGNAROK》背部ユニット展開。
赤黒い粒子が、
剣へ収束していく。
『超高密度粒子反応!!』
『まずい!!』
「だったら。」
フレアの瞳が、
完全な紅へ染まる。
「全部壊せる側になる。」
黒槍最大出力。
そして。
《ヴァルグレイヴ》もまた、
黒翼を広げた。
終焉天使。
喪失者。
二体の怪物が、
最後の衝突へ向かう。
次回予告
第1部、最終決戦。
HXへ堕ちていくフレア。
終焉天使化するソラナム。
親友同士の戦いは、
ついに決着の時を迎える。
一方。
ANGEL PRIMEは、
人類へ最後の観測を開始する。
『人類は、
終焉を超えられるか。』
そして。
リゼは、
ある決意を胸に戦場へ向かう。
『もう逃げない。』
Chapter 25「終焉を超える者」
その涙は、
未来へ届くか。




