Chapter 23「紅き終焉」
宇宙は静まり返っていた。
つい先程まで、
終焉そのものだった戦場。
だが今。
HX群の動きが、
一斉に停止していた。
『……敵反応、減少?』
『いや……。』
『HX群、後退しています!!』
ヘリオス・ベース司令室がざわつく。
そして。
《GENESIS》中心部。
巨大な瞳が、
ゆっくり閉じていく。
『観測完了。』
『進化因子確認。』
『新規終焉適合者:
二体。』
その視線。
向けられているのは。
《ヴァルグレイヴ》
そして。
《クリムゾナー》
『文明進化段階、
次位領域へ到達。』
『第一観測フェーズ終了。』
「……何?」
リゼが息を呑む。
『まさか……。』
ANGEL PRIMEが、
静かにGENESISを見る。
『最初から。』
『これが目的だったのか。』
『肯定。』
GENESISが答える。
『文明は、
絶望によって進化する。』
『喪失は、次なる個体を生む。』
その瞬間。
ソラナムの拳が震えた。
「ふざけんな……。」
ミリアの死。
フレアの絶望。
全部。
“進化のため”だったと言うのか。
「そんな理由で!!」
《ヴァルグレイヴ》から、
黒粒子が噴き出す。
「人を弄ぶなァァァァ!!」
加速。
《GENESIS》へ突撃。
だが。
その前へ、
赤い機体が立った。
《クリムゾナー》
いや。
違う。
装甲各部へ、
黒いHX粒子が侵食している。
右腕部変質。
背部推進器肥大化。
赤黒い発光。
そして。
背中へ装着された、
巨大な紅剣。
『機体反応変化……!?』
『HX侵食率急上昇!!』
「……フレア。」
ソラナムが息を呑む。
《クリムゾナー》が、
ゆっくり顔を上げた。
瞳が赤く光る。
「……ソラナム。」
その声は静かだった。
静かすぎた。
「消えろ、俺はアンタを許せない。」
「フレア……。」
「今のアンタ見てると。」
《クリムゾナー》が、
黒槍を構える。
「吐き気がする。」
「ッ……。」
「守るって何だよ。」
「希望って何だよ。」
「アンタが、一番壊してるじゃないか。」
その言葉。
ソラナムは返せない。
返せるはずがない。
「俺は……。」
「黙れ。」
初めて。
フレアの声へ、
明確な怒気が混じった。
「アンタは。」
「俺の憧れだった。」
学生時代。
誰より強かった背中。
誰より人を守ろうとしていた人。
「だから。」
《クリムゾナー》粒子出力上昇。
「許せない。」
その瞬間。
赤黒い粒子が爆発した。
『新名称登録。』
『《RAGNAROK》』
《クリムゾナー》装甲変形。
HX侵食開始。
肩部大型化。
頭部変質。
片目が黒く染まる。
そして。
巨大な紅黒の翼が展開した。
『フレア機が……』
『HX化していく……!!』
一方。
《GENESIS》は、
静かに後退を始めていた。
『第一観測フェーズ終了。』
『次段階観測へ移行します。』
『GENESIS、
宙域離脱開始。』
巨大な門が開く。
HX群が次々撤退していく。
『待て!!』
ソラナムが叫ぶ。
だが。
その前へ、
《RAGNAROK》が立つ。
「アンタの相手は。」
フレアが低く言う。
「俺だ。」
次の瞬間。
超加速。
紅黒の残光。
《RAGNAROK》の黒槍が、
《ヴァルグレイヴ》へ突き刺さる。
「ッぁ!!」
衝撃。
黒粒子と赤粒子が激突する。
終焉天使と喪失者。
二体の怪物が、
宇宙でぶつかり合った。
次回予告
《GENESIS》撤退。
だが戦いは終わらない。
ミリアを失ったフレアは、
HX侵食機体《RAGNAROK》へ変貌。
その怒りは、
ついにソラナムへ向けられる。
『アンタだけは殺す…絶対に!』
一方。
《ヴァルグレイヴ》との同期固定化が進み、
ソラナムの肉体にも異変が現れ始める。
そして。
ANGEL PRIMEは、
ある未来を観測する。
『二体の終焉因子適合者。』
『いずれ片方が、
文明を滅ぼす。』
Chapter 24
「継承戦争」
かつての友は、
最悪の敵となる。




