Chapter 21「約束の果て」
終焉の光が迫る。
《GENESIS》最終殲滅砲。
星系を消し飛ばす白赤の奔流が、
宇宙そのものを裂きながら進んでいた。
その前へ。
黒い翼が立つ。
《ヴァルグレイヴ》
六枚翼展開。
黒粒子暴走。
SYNC RATE:91%
『ソラナム!!』
リゼが叫ぶ。
『もう限界よ!!』
「……まだだ。」
低い声。
だが、
その声にはもう、
人間らしい温度が薄れていた。
コクピット内部。
黒い紋様が、
首筋まで侵食している。
『終焉継承進行。』
『感情因子分解開始。』
『終焉天使化まで残り7%』
「……黙れ。」
ソラナムが前を見る。
終焉の光。
その向こう。
守るべき人たち。
「俺は……。」
拳を握る。
「まだ、人間だ……!!」
OVERDRIVE:限界突破
その瞬間。
《ヴァルグレイヴ》から、
黒い衝撃波が噴き上がった。
空間震動。
HX群停止。
周囲艦隊が吹き飛ぶ。
『粒子濃度急上昇!?』
『制御不能です!!』
そして。
ソラナムの視界から、
敵味方識別表示が消えた。
一方。
《アークウィング》は、
黒い嵐へ接近していた。
『ソラナムさん!!』
ミリアが叫ぶ。
『聞こえるなら応答してください!!』
ノイズ。
返答無し。
だが。
黒い翼が、
ゆっくりこちらを向いた。
「……ソラナム、さん?」
ミリアが息を呑む。
モニターへ映る瞳。
完全な黒。
そこに、
“人間の光”がほとんど残っていなかった。
『危険。』
《ヴァルグレイヴ》が呟く。
いや。
それはソラナムではない。
『終焉妨害因子確認…排除します。』
「ッ――!?」
次の瞬間。
黒い粒子砲が展開された。
『ソラナムさん!?』
ミリアが叫ぶ。
『私は敵じゃ――』
発射。
黒い閃光。
《アークウィング》直撃。
「ぁ――」
白と青の機体が、
宇宙で崩壊した。
「……え?」
フレアの声が止まる。
爆炎。
砕ける翼。
散る装甲。
その中心。
《アークウィング》
『ミリア!?』
通信ノイズ。
返答無し。
「……うそ、だろ。」
《クリムゾナー》が震える
「おい……。」
「おいミリア……!!」
推進器全開。
ボロボロの赤い機体が、
爆炎へ突っ込む。
その時。
通信が繋がった。
『……フレ、ア……。』
「ッ!!」
ミリアだった。
だが。
コクピット内部は炎に包まれている。
警報。
火花。
血。
『ごめん……。』
「喋るな!!」
『最後まで……。』
『止められなかった……。』
「やめろ!!」
フレアが叫ぶ。
「今助ける!!」
《クリムゾナー》が腕を伸ばす。
だが。
《アークウィング》コア崩壊警告。
WARNING
CORE MELTDOWN
『来ないで。』
ミリアが静かに言う。
「……は?」
『巻き込まれる。』
「ふざけんな!!」
『……ねぇ。』
ミリアが小さく笑う。
『生きて。』
「やめろ……。」
『アンタ、
すぐ無茶するから。』
「やめろォォォォ!!」
その瞬間。
《アークウィング》が、
白い光へ包まれた。
爆発。
宇宙へ、
白い羽のような粒子が散っていく。
「……………………ぁ。」
フレアの声が消える。
動かない。
何も言わない。
ただ。
宇宙に漂う光だけを見ていた。
一方。
《ヴァルグレイヴ》内部。
ソラナムの瞳が揺れる。
「……え。」
視界へ、
撃墜ログが映る。
TARGET:ALLY
《ARKWING》
「……な、に。」
記憶が戻る。
黒い砲撃。
ミリアの声。
爆発。
「……俺が?」
呼吸が止まる。
「俺が、撃った……?」
その瞬間。
フレアから通信が入る。
『……先輩…いや、ソラナム。』
静かな声。
感情が消えた声。
『なんでだよ。』
「フレア……。」
『なんで……。』
《クリムゾナー》が、
ゆっくり《ヴァルグレイヴ》を見る。
『アンタが。』
『アンタだけは、
守ってくれるって思ってたのに。』
「違う……!!」
ソラナムが叫ぶ。
「俺は!!」
『もういい。』
その一言。
それだけだった。
だが。
その声は、
ソラナムの心を完全に砕いた。
次回予告
ミリア・ノクト、戦死。
その死は、
フレアとソラナム、
二人の心を深く引き裂く。
一方。
《GENESIS》は、
なお最終殲滅砲の収束を続けていた。
絶望の戦場。
崩壊する希望。
そして。
フレア・ダクバットは、
ある決断を下す。
『……力が必要だ。』
『全部壊せるくらいの。』
その時。
HX群の奥から、
一機の黒い機体が姿を現す。
Chapter 22
「喪失者」
復讐は、
人を終焉へ近づける。
☆補足説明
「あれ?なんかソラナムの暴走を止めようとしてるのミリアだけで、リゼ何もしてなくない?」と思った方、いるでしょう。
この時のリゼは、
「ソラナムを止めたい、でも…こわい」
そういう風な感情だったんだと思います。




