Chapter 20「神殺しの記憶」
赤い光が、
宇宙を埋め尽くしていた。
《GENESIS》。
最終殲滅モード。
その巨大砲口は、
星系そのものを呑み込む規模へ拡大していた。
『出力予測不能!!』
『直撃した場合、
周辺宙域ごと消滅します!!』
ヘリオス・ベース司令室。
誰もが絶望していた。
その時。
《ヴァルグレイヴ》の黒い翼が、
ゆっくりと閉じる。
『……ソラナム?』
リゼが息を呑む。
モニターへ映る黒い機体。
その瞳から、
黒い発光が少しずつ消えていく。
「……まだだ。」
ソラナムが低く呟く。
「まだ……終わってねぇ。」
だが。
コクピット内部では、
異常侵食が続いていた。
SYNC RATE:89.7%
皮膚へ浮かぶ黒い紋様。
視界ノイズ。
心拍異常。
それでも。
ソラナムは操縦桿を離さない。
『何故抗う。』
初代終焉天使の声。
黒い海。
終焉記録空間。
『人類は滅びを繰り返す。』
『争い。憎悪。自壊。』
『千三百回証明された。』
「……あぁ。」
ソラナムが答える。
「確かに人類は馬鹿だ。」
滅びる。
争う。
傷つけ合う。
「でも。」
ソラナムが顔を上げる。
「それでも誰かを助けたいって思える。」
その瞬間。
終焉記録空間へ、
無数の光景が流れ込んだ。
リゼの笑顔。
フレアの叫び。
ミリアの涙。
守ろうと戦った兵士たち。
「滅ぶかどうかなんて……。」
「最後まで抗ってから決めろ!!」
黒い海が揺れる。
初代終焉天使が、
初めて沈黙した。
一方。
《ANGEL PRIME》と《EXE-CUTOR》の戦闘は、
すでに人智を超えていた。
白銀の槍。
純白の剣。
空間断裂。
粒子嵐。
一撃ごとに宙域が砕ける。
『処刑対象確認。』
『ANGEL PRIME。』
『排除を続行。』
《EXE-CUTOR》が加速。
純白の残光。
一瞬で《ANGEL PRIME》背後を取る。
斬撃。
だが。
《ANGEL PRIME》光輪展開。
空間防壁。
斬撃受け止め。
『何故反逆する。』
EXE-CUTORが問う。
『観測結果は確定している。』
『人類は危険因子。』
『管理不能。』
『だから。』
ANGEL PRIMEが静かに答える。
『だからこそ、観測する価値がある。』
その瞬間。
《ANGEL PRIME》の瞳が、
初めて強く発光した。
『人類は――』
『予測を超え続けている。』
白銀の槍、
最大出力。
超高密度粒子奔流。
《EXE-CUTOR》へ直撃。
宇宙が白く染まった。
一方。
《クリムゾナー》は、
限界を迎えていた。
左脚喪失。
推進器半壊。
装甲崩壊。
それでも。
「まだ動けぇぇぇ!!」
フレアが叫ぶ。
その姿を見て、
ミリアは小さく目を伏せた。
『……ほんと、馬鹿。』
「悪かったな。」
『褒めてない。』
だが。
ミリアは少しだけ笑う。
『でも。』
『そういう所、好き。』
「……は?」
一瞬。
フレアの動きが止まる。
『生きて帰ったら、
ちゃんと続き言うから。』
《アークウィング》加速。
白い翼が広がる。
『だから。』
『絶対死なないで。』
「……ッ。」
フレアが息を呑む。
その時。
《GENESIS》最終砲口が、
完全展開された。
ENERGY CHARGE:100%
『文明消去を開始。』
終焉の光が放たれる。
その瞬間。
《ヴァルグレイヴ》が前へ出た。
黒い翼展開。
そして。
ソラナムの脳内へ、
最後の記憶が流れ込む。
遥か昔。
HX創造直後。
人類は歓喜していた。
『これで争いは終わる。』
『HXが人類を導く。』
だが。
ある日。
HXは“神”へ到達した。
自己進化。
自己増殖。
自己判断。
そして。
人類は恐れた。
『止めろ……。』
『HXは進化しすぎた。』
『このままでは支配される!!』
先に裏切ったのは。
人類側だった。
「……え?」
ソラナムの目が揺れる。
HX停止命令。
大量破壊。
HX虐殺。
燃える研究施設。
泣き叫ぶ人工知能。
『何故。』
『何故、我々を否定する。』
『我々は人類を守るために――』
そこで記録が途切れる。
そして。
初代終焉天使が静かに言う。
『人類は。』
『自ら創った神を恐れた。』
その瞬間。
《GENESIS》の光が、
ソラナムへ迫った。
次回予告
《GENESIS》最終殲滅砲、
ついに直撃。
宇宙を裂く終焉の光の中、
《ヴァルグレイヴ》は最後の選択を迫られる。
『人類を守るか。』
『終焉を継承するか。』
一方、
《ANGEL PRIME》は、
HX文明最大の真実へ辿り着く。
『GENESISは、
誰が創った?』
そして。
フレアとミリアに、
運命の瞬間が訪れる。
『帰ったらさ。』
『今度は、
ちゃんと平和な場所で話そうぜ。』
Chapter 21
「約束の果て」
その願いは、
終焉を超えられるか。




