Chapter 2 「疑惑の翼」
リメイク版2話
爆炎。
閃光。
そして、宇宙を震わせる衝撃波。
《ヴァルグレイヴ》と《EXECUTION TYPE》の激突は、既存FW同士の戦闘とは完全に別次元だった。
重装甲同士の衝突。
高出力ビーム。
人間では到底追えない機動。
戦場にいたFWパイロットたちは、ただ呆然とそれを見るしかなかった。
「なんなんだよ、あの動き……」
「本当に同じ人型兵器か……?」
量産FW隊の兵士たちが息を呑む。
その中央で。
《ヴァルグレイヴ》が黒い残光を引きながら宙域を駆け抜けた。
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「うおッ……!?」
ソラナムは歯を食いしばる。
視界の流れが異常に速い。
だが、《ヴァルグレイヴ》の動きが“分かる”。
自分の身体の延長。
いや。
それ以上だ。
機体が先に敵を予測している。
敵機動。
慣性。
重力偏差。
全てが脳へ直接流れ込む。
「はは……っ、マジで化け物だな、お前!」
ソラナムは《EXECUTION TYPE》の剣撃を回避。
直後。
背後のデブリ帯が丸ごと斬り裂かれた。
数百メートル級残骸が、一瞬で真っ二つ。
「笑えねぇ威力……!」
ソラナムは即座にライフルを構える。
照準。
発射。
高出力ビームが宇宙を貫く。
しかし。
《EXECUTION TYPE》は異常な速度で回避した。
> 『解析。』
> 『戦闘パターン学習開始。』
「学習?」
その瞬間。
敵機が消えた。
「――っ!?」
本能。
ソラナムは反射的に機体を捻る。
次の瞬間。
黒剣が《ヴァルグレイヴ》肩部を掠めた。
火花。
装甲が抉れる。
「ぐッ……!!」
普通のFWなら致命傷。
だが《ヴァルグレイヴ》は止まらない。
逆に。
装甲内部から赤黒い光が走った。
> SYSTEM:
> “DAMAGE RESPONSE ACTIVE”
「おいおい、自己修復機能まであるのかよ……!」
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艦橋。
レオニス艦長たちはモニターへ釘付けになっていた。
「戦闘データは!?」
『解析追いつきません!』
『両機とも既存FW性能を大幅超過!』
オペレーターが震える声で叫ぶ。
『特に《ヴァルグレイヴ》側、異常です!』
『パイロット反応速度、人間限界を超えています!』
その時。
クロスモニターへ、一つの数値が表示された。
## SYNC RATE:31%
「同期率……?」
リゼが眉をひそめる。
整備主任が険しい顔で答えた。
「HX特有の精神同期現象だ。」
「高いとどうなるの?」
「機体性能を引き出せる。」
少し間。
「……代わりに、人間じゃなくなる。」
リゼの顔色が変わった。
「そんな……」
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宇宙空間。
《EXECUTION TYPE》が再び突撃してくる。
今度は直線ではない。
フェイント。
残像。
デブリを利用した超高速機動。
「読みにくくなってる……!」
学習している。
敵もまた、戦うほど強くなる。
ソラナムは舌打ちした。
「だったら……!」
《ヴァルグレイヴ》のスラスター最大噴射。
真正面から加速。
敵も加速。
HX同士が正面衝突する。
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## 激突。
黒剣。
レーザーソード。
火花が宇宙へ散る。
凄まじい衝撃。
ソラナムは操縦桿を握り締めた。
「ッ……うおおおおッ!!」
> 『戦闘能力、上昇確認。』
「喋んな!!」
ソラナムは蹴りを叩き込む。
《EXECUTION TYPE》が後退。
その隙に、《ヴァルグレイヴ》肩部ミサイルポッド展開。
「全部持ってけ!!」
ミサイル一斉発射。
爆炎が敵を包み込む。
だが。
煙の中から、赤い単眼が浮かび上がる。
「……チッ。」
> 『脅威度更新。』
> 『対象、危険指定。』
「そりゃどうも!」
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その時。
戦場全域へ警報。
『高エネルギー反応!!』
『第二目標接近!!』
宇宙空間が、白く輝いた。
次の瞬間。
一条の白いビームが《EXECUTION TYPE》を吹き飛ばす。
「なっ――!?」
ソラナムが振り向く。
そこにいたのは。
純白のHX。
六枚の光翼。
流麗な白銀装甲。
神々しいほどの機体。
識別コードが表示される。
## 《HX-02A セラフィム》
コックピット内で、リゼが不敵に笑った。
『一人で突っ走りすぎ。』
「リゼ!?」
『援護するわ。』
「いや待て、お前まで出てきたのかよ!」
『放っておけるわけないでしょ。』
《セラフィム》がライフルを構える。
白い粒子が翼から放出される。
その姿はまるで天使だった。
「……派手だな。」
『そっちほどじゃない。』
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二機のHX。
黒と白。
それが並び立った瞬間。
《EXECUTION TYPE》が初めて警戒するように後退した。
> 『高次危険個体、複数確認。』
> 『戦術変更。』
敵背部装甲展開。
無数の黒いワイヤーブレードが射出される。
「また新武装かよ!?」
『来る!!』
リゼが叫ぶ。
次の瞬間。
宇宙空間を埋め尽くすほどの斬撃嵐が襲いかかった。
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黒い刃。
高速機動。
HX同士の激戦。
その裏側で。
誰もまだ気付いていなかった。
遠方宙域。
深い闇の奥で。
“巨大な赤い眼”が、静かに開いたことを。
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# Chapter 2 END
次回予告
《EXECUTION TYPE》との激戦。
《ヴァルグレイヴ》と《セラフィム》の共闘によって、戦況は一時均衡したかに見えた。
しかし。
敵HXは“学習”していた。
戦うほど強くなる未知兵器。
加速するSYNC RATE。
そして、《ヴァルグレイヴ》内部から聞こえる謎の声。
ソラナムは少しずつ、“機体と繋がりすぎて”いく。
一方その頃。
遠方宙域では、人類軍が把握していない超巨大反応が目覚め始めていた。
HX。
それは兵器なのか。
あるいは――。
さらに軍上層部は、《ヴァルグレイヴ》封印計画を始動。
ソラナムへ下される、ある命令。
だが、その時。
宇宙そのものを震わせる、新たな存在が姿を現す。
『確認。』
『終焉因子、起動中。』
そして《ヴァルグレイヴ》は、“真の力”へ近づいていく。
次回
Chapter 3「終焉因子」
「俺は……まだ、人間だ。」
赤く染まり始める翼。
その先に待つのは、希望か、破滅か――。




