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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第1部「覚醒編」
2/27

Chapter 2 「疑惑の翼」

リメイク版2話


 爆炎。


 閃光。


 そして、宇宙を震わせる衝撃波。


 《ヴァルグレイヴ》と《EXECUTION TYPE》の激突は、既存FW同士の戦闘とは完全に別次元だった。


 重装甲同士の衝突。

 高出力ビーム。

 人間では到底追えない機動。


 戦場にいたFWパイロットたちは、ただ呆然とそれを見るしかなかった。


「なんなんだよ、あの動き……」


「本当に同じ人型兵器か……?」


 量産FWジェガード隊の兵士たちが息を呑む。


 その中央で。


 《ヴァルグレイヴ》が黒い残光を引きながら宙域を駆け抜けた。


---


「うおッ……!?」


 ソラナムは歯を食いしばる。


 視界の流れが異常に速い。


 だが、《ヴァルグレイヴ》の動きが“分かる”。


 自分の身体の延長。


 いや。


 それ以上だ。


 機体が先に敵を予測している。


 敵機動。

 慣性。

 重力偏差。


 全てが脳へ直接流れ込む。


「はは……っ、マジで化け物だな、お前!」


 ソラナムは《EXECUTION TYPE》の剣撃を回避。


 直後。


 背後のデブリ帯が丸ごと斬り裂かれた。


 数百メートル級残骸が、一瞬で真っ二つ。


「笑えねぇ威力……!」


 ソラナムは即座にライフルを構える。


 照準。


 発射。


 高出力ビームが宇宙を貫く。


 しかし。


 《EXECUTION TYPE》は異常な速度で回避した。


> 『解析。』


> 『戦闘パターン学習開始。』


「学習?」


 その瞬間。


 敵機が消えた。


「――っ!?」


 本能。


 ソラナムは反射的に機体を捻る。


 次の瞬間。


 黒剣が《ヴァルグレイヴ》肩部を掠めた。


 火花。


 装甲が抉れる。


「ぐッ……!!」


 普通のFWなら致命傷。


 だが《ヴァルグレイヴ》は止まらない。


 逆に。


 装甲内部から赤黒い光が走った。


> SYSTEM:


> “DAMAGE RESPONSE ACTIVE”


「おいおい、自己修復機能まであるのかよ……!」


---


 艦橋。


 レオニス艦長たちはモニターへ釘付けになっていた。


「戦闘データは!?」


『解析追いつきません!』


『両機とも既存FW性能を大幅超過!』


 オペレーターが震える声で叫ぶ。


『特に《ヴァルグレイヴ》側、異常です!』


『パイロット反応速度、人間限界を超えています!』


 その時。


 クロスモニターへ、一つの数値が表示された。


## SYNC RATE:31%


「同期率……?」


 リゼが眉をひそめる。


 整備主任が険しい顔で答えた。


「HX特有の精神同期現象だ。」


「高いとどうなるの?」


「機体性能を引き出せる。」


 少し間。


「……代わりに、人間じゃなくなる。」


 リゼの顔色が変わった。


「そんな……」


---


 宇宙空間。


 《EXECUTION TYPE》が再び突撃してくる。


 今度は直線ではない。


 フェイント。


 残像。


 デブリを利用した超高速機動。


「読みにくくなってる……!」


 学習している。


 敵もまた、戦うほど強くなる。


 ソラナムは舌打ちした。


「だったら……!」


 《ヴァルグレイヴ》のスラスター最大噴射。


 真正面から加速。


 敵も加速。


 HX同士が正面衝突する。


---


## 激突。


 黒剣。


 レーザーソード。


 火花が宇宙へ散る。


 凄まじい衝撃。


 ソラナムは操縦桿を握り締めた。


「ッ……うおおおおッ!!」


> 『戦闘能力、上昇確認。』


「喋んな!!」


 ソラナムは蹴りを叩き込む。


 《EXECUTION TYPE》が後退。


 その隙に、《ヴァルグレイヴ》肩部ミサイルポッド展開。


「全部持ってけ!!」


 ミサイル一斉発射。


 爆炎が敵を包み込む。


 だが。


 煙の中から、赤い単眼が浮かび上がる。


「……チッ。」


> 『脅威度更新。』


> 『対象、危険指定。』


「そりゃどうも!」


---


 その時。


 戦場全域へ警報。


『高エネルギー反応!!』


『第二目標接近!!』


 宇宙空間が、白く輝いた。


 次の瞬間。


 一条の白いビームが《EXECUTION TYPE》を吹き飛ばす。


「なっ――!?」


 ソラナムが振り向く。


 そこにいたのは。


 純白のHX。


 六枚の光翼。


 流麗な白銀装甲。


 神々しいほどの機体。


 識別コードが表示される。


## 《HX-02A セラフィム》


 コックピット内で、リゼが不敵に笑った。


『一人で突っ走りすぎ。』


「リゼ!?」


『援護するわ。』


「いや待て、お前まで出てきたのかよ!」


『放っておけるわけないでしょ。』


 《セラフィム》がライフルを構える。


 白い粒子が翼から放出される。


 その姿はまるで天使だった。


「……派手だな。」


『そっちほどじゃない。』


---


 二機のHX。


 黒と白。


 それが並び立った瞬間。


 《EXECUTION TYPE》が初めて警戒するように後退した。


> 『高次危険個体、複数確認。』


> 『戦術変更。』


 敵背部装甲展開。


 無数の黒いワイヤーブレードが射出される。


「また新武装かよ!?」


『来る!!』


 リゼが叫ぶ。


 次の瞬間。


 宇宙空間を埋め尽くすほどの斬撃嵐が襲いかかった。


---


 黒い刃。


 高速機動。


 HX同士の激戦。


 その裏側で。


 誰もまだ気付いていなかった。


 遠方宙域。


 深い闇の奥で。


 “巨大な赤い眼”が、静かに開いたことを。


---


# Chapter 2 END

次回予告

 《EXECUTION TYPE》との激戦。

 《ヴァルグレイヴ》と《セラフィム》の共闘によって、戦況は一時均衡したかに見えた。

 しかし。

 敵HXは“学習”していた。

 戦うほど強くなる未知兵器。

 加速するSYNC RATE。

 そして、《ヴァルグレイヴ》内部から聞こえる謎の声。

 ソラナムは少しずつ、“機体と繋がりすぎて”いく。

 一方その頃。

 遠方宙域では、人類軍が把握していない超巨大反応が目覚め始めていた。

 HX。

 それは兵器なのか。

 あるいは――。

 さらに軍上層部は、《ヴァルグレイヴ》封印計画を始動。

 ソラナムへ下される、ある命令。

 だが、その時。

 宇宙そのものを震わせる、新たな存在が姿を現す。


『確認。』

『終焉因子、起動中。』


 そして《ヴァルグレイヴ》は、“真の力”へ近づいていく。


次回

Chapter 3「終焉因子」


「俺は……まだ、人間だ。」


 赤く染まり始める翼。

 その先に待つのは、希望か、破滅か――。

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