Chapter 14「天門」
宇宙が、軋んでいた。
《ヘリオス・ベース》周辺宙域。
そこに存在していた全艦隊、全HX、全FWが、
同時に異常を感知していた。
UNKNOWN SIGNAL DETECTED
『反応増大!!』
『空間歪曲率、限界突破!!』
『な、なんですかこれ……!?』
モニター中央。
宇宙空間そのものが捻じ曲がっていた。
光が吸い込まれる。
星が歪む。
黒い亀裂。
まるで。
“宇宙に穴が開いている”。
「……なんだ、あれ。」
ソラナムが呟く。
その瞬間。
《ANGEL PRIME》が反応した。
光輪展開。
『天門反応確認。』
『観測段階を終了する。』
「天門……?」
《THRONE》と《LANCELOT》が、
同時に《ANGEL PRIME》の後方へ移動する。
『HXが隊列を……?』
リゼが息を呑む。
そして。
宇宙の裂け目が、完全に開いた。
《GATE OPEN》
闇。
無限の黒。
その奥から。
“巨大な眼”が現れる。
「ッ――!?」
あまりにも巨大だった。
コロニーサイズ。
いや、それ以上。
宇宙の彼方からこちらを覗き込む、
赤黒い単眼。
『うそ……。』
『あれ、生物なの……?』
その視線だけで。
全員が凍り付いた。
本能が叫んでいる。
“見てはいけない”。
その瞬間。
ソラナムの脳へ、
大量の映像が流れ込む。
崩壊した銀河。
HX軍団。
消滅する文明。
泣き叫ぶ人々。
そして。
空を覆う“巨大な眼”。
『観測完了。』
『文明成熟確認。』
『終焉処理を開始する。』
「……なんだよ、それ。」
ソラナムの声が震える。
《ANGEL PRIME》が静かに告げる。
『HXは兵器ではない。』
『管理装置である。』
『そして“あれ”は――』
一瞬。
《ANGEL PRIME》の声が僅かに乱れた。
『管理者。』
戦場が静まり返る。
「管理……者……?」
『文明が危険領域へ到達した時。』
『我々HXは観測を行う。』
『そして、管理者が“不要”と判断した文明は消去される。』
『そんなの……。』
リゼが青ざめる。
『神様気取りじゃない……!』
『否定。』
『管理である。』
その時。
巨大な眼が、ゆっくりと開いた。
重圧。
「ぐッ……!!」
全機体が強制的に停止しかける。
艦隊すら動けない。
空間支配。
存在格差。
次元が違う。
『主機関停止!?』
『エネルギーが吸われる!!』
『逃げろ!!』
だが。
逃げられない。
その瞬間。
《ヴァルグレイヴ》が反応した。
終焉因子共鳴。
赤黒い粒子が爆発的に噴出する。
SYNC RATE:75%
「ぁ……!!」
ソラナムの瞳が赤く染まる。
『適合率上昇。』
『管理者接続可能領域到達。』
「やめろ……!!」
しかし。
声は止まらない。
『羽吹・K・ソラナム。』
『問う。』
巨大な眼が。
こちらを見た。
『人類は、存続に値するか?』
「……ッ。」
ソラナムの脳裏へ浮かぶ。
リゼ。
フレア。
ミリア。
避難民。
泣いていた子供。
必死に戦う兵士たち。
不完全で。
弱くて。
争って。
間違える。
それでも。
「……価値ならある。」
宇宙が静まる。
『理由を問う。』
「決まってんだろ。」
ソラナムは前を見る。
「生きようとしてるからだ。」
一瞬。
巨大な眼が停止した。
その時だった。
WARNING
UNKNOWN MASS DESCENDING
『新反応!?』
天門の奥。
さらに巨大な影が動く。
それは。
“星”だった。
『うそだろ……。』
巨大な機械構造体。
惑星サイズ。
無数の赤い眼。
HX群を従える“本体”。
《TYPE:GENESIS》
《ANGEL PRIME》が初めて、
僅かに警戒反応を示した。
『管理者直属終焉機構確認。』
「終焉……機構……。」
その瞬間。
《GENESIS》中央部が発光した。
超広域殲滅砲、起動。
『エネルギー反応増大!!』
『撃つ気です!!』
狙い。
《ヘリオス・ベース》。
「ッ!!」
ソラナムが《ヴァルグレイヴ》を前へ出す。
だが。
その時。
フレアが叫んだ。
「先輩!!」
《クリムゾナー》が並ぶ。
「俺もいます!!」
さらに。
『私たちもよ。』
《セラフィム》。
《アークウィング》。
FW部隊。
艦隊。
全員が前へ出る。
人類は。
まだ。
終わっていなかった。
次回予告
宇宙の外側から現れた、
惑星級終焉機構《GENESIS》。
その圧倒的存在によって、
HXすら“下位端末”だった事実が明かされる。
一方。
《ヴァルグレイヴ》SYNC RATEは75%へ到達。
ソラナムは、
“管理者の声”を直接聞き始めていた。
さらに。
《GENESIS》による超広域殲滅砲が、ついに発射体勢へ移行。
狙いは《ヘリオス・ベース》全域。
数百万人規模の虐殺が始まろうとしていた。
その時。
フレアが笑う。
「先輩。」
「昔、言いましたよね。」
「“守りたいなら前に出ろ”って。」
そして。
《クリムゾナー》が、
限界を超える。
次回。
Chapter 15
「守る理由」
それでも人類は、
抗うことをやめない。




