Chapter 11「覚醒領域」
宇宙空間。
無数の残骸が漂っていた。
燃え尽きたFW。
砕けたHX。
そして。
赤黒い粒子を纏う《ヴァルグレイヴ》。
SYNC RATE:64%
「ッ……!」
ソラナムは息を荒げる。
視界が不安定だった。
敵位置。
熱源。
通信。
全部が流れ込みすぎる。
脳が焼けるような感覚。
『殲滅効率、上昇。』
『継続戦闘を推奨。』
「……黙れ。」
だが。
《ヴァルグレイヴ》の声は止まらない。
『人類は脆弱。』
『終焉は不可避。』
「うるせぇって言ってんだろ……!!」
その瞬間。
《LANCELOT》が突撃してきた。
黄金の閃光。
「ッ!!」
ソラナムは反射的に回避。
ランスが掠めただけで装甲が裂ける。
『ソラナム!!』
リゼの《セラフィム》が援護射撃。
白いビームが宇宙を裂く。
だが。
《THRONE》が前へ出た。
青い粒子障壁。
ビームを受け止める。
『防がれた!?』
『人類側HX、排除を開始する。』
《THRONE》背部ユニット展開。
青白い光球形成。
「まず――」
ソラナムが叫ぶ。
「避難艦を守れ!!」
モニターには。
コロニーから脱出を始める民間避難艦群。
その進路上へ。
飛行型HXが迫っていた。
『くそっ、数が多すぎる!!』
『護衛部隊突破される!!』
「だったら――!」
ソラナムは《ヴァルグレイヴ》を急加速。
黒い残光。
一瞬で戦場横断。
HX群中央へ突っ込む。
乱戦。
拳。
蹴り。
ビームサーベル。
高速機動で次々とHXを破壊していく。
だが。
その度にSYNC RATEが上がる。
65%
「ぐッ……!」
ソラナムの呼吸が乱れる。
視界の端で、赤いノイズが走った。
その時だった。
UNKNOWN UNIT APPROACHING
『新反応!?』
管制官が叫ぶ。
『高速接近!!』
次の瞬間。
真紅のFWが戦場へ突入した。
《FW-X9》
《クリムゾナー》
赤い重装甲。
巨大ヒートブレード。
過剰推進機。
炎のような粒子を撒き散らしながら加速する。
「なっ――!?」
ソラナムが目を見開く。
《LANCELOT》がランスを構える。
だが。
その瞬間。
超高速突撃。
《クリムゾナー》が真正面から激突した。
轟音。
ヒートブレードと黄金ランスがぶつかる。
火花。
衝撃波。
《LANCELOT》が初めて後退した。
『援軍だと!?』
通信回線が開く。
そこから聞こえた声に。
ソラナムは固まった。
「大丈夫ですか!? 先輩!!」
「……は?」
コックピットモニターへ映る顔。
燃えるような赤髪。
鋭い目。
熱血そうな笑顔。
「五年ぶりですね!!」
「羽吹先輩!!」
「フレア……?」
フレア・ダクバット。
アカデミー時代の後輩。
かつてソラナムへ憧れていた少年。
「お前、なんでここに――」
「EVA統合機関から援軍です!!」
「いやぁ、先輩がとんでもないことになってるって聞いて!!」
その瞬間。
《LANCELOT》が再び突撃。
「話は後だ!!」
「了解です先輩!!」
共闘開始。
《ヴァルグレイヴ》が前へ。
《クリムゾナー》が側面から突撃。
黒と赤。
二機が同時加速する。
『機動パターン補完!?』
リゼが驚く。
息が合いすぎている。
まるで昔から一緒に戦っていたような動き。
「左行きます!!」
「了解!!」
フレアが《LANCELOT》へ真正面突撃。
高熱ブレード振り下ろし。
《LANCELOT》が受け止める。
その隙。
《ヴァルグレイヴ》加速。
背後へ回り込み。
至近距離射撃。
直撃。
《LANCELOT》が初めて大きく吹き飛ばされた。
『やった……!?』
だが。
《THRONE》が静かに前へ出る。
『新個体確認。』
『人類側適応兵。』
青い単眼が、フレアを見る。
『感情出力、極めて高。』
「なんだコイツ。」
フレアは笑う。
「喋るHXとか趣味悪いですね。」
ソラナムは少しだけ笑った。
久しぶりだった。
こんな風に。
誰かと並んで戦うのは。
だが。
その瞬間。
《ヴァルグレイヴ》内部で。
再び声が響いた。
『危険。』
『感情接触増加。』
『終焉因子安定率低下。』
赤い警告。
SYNC RATE:67%
「ッ……!」
ソラナムの瞳が揺れる。
そして。
《ANGEL PRIME》は遠くから、それを静かに観測していた。
『観測継続。』
『人類は、何故繋がろうとする。』
戦場の運命は。
さらに加速していく。
Chapter 11 END
次回予告
EVA統合機関からの援軍――
フレア・ダクバット参戦。
五年ぶりに再会した、
アカデミー時代の後輩。
熱血。
猪突猛進。
そして誰よりも“人を守ること”に真っ直ぐな男。
《クリムゾナー》と《ヴァルグレイヴ》の連携によって、
戦況は徐々に変わり始める。
一方。
《THRONE》はソラナムへ警告する。
『終焉因子は、人との繋がりを拒絶する。』
『感情接触は崩壊を早める。』
だが。
フレアは笑い飛ばす。
「先輩が一人で抱え込むタイプなの、昔から知ってますから。」
さらに。
リゼとフレアの間でも、
少しずつ奇妙な空気が生まれ始める。
「……距離近くない?」
「え、そうですか?」
そして。
戦場の裏側で、
人類軍上層部が極秘裏に動き始めていた。
HX回収計画。
その対象は――
《ヴァルグレイヴ》。
さらに。
《ANGEL PRIME》は静かに呟く。
『観測対象、“感情”を確認。』
『人類評価値、変動開始。』
次回。
Chapter 12
「紅蓮の再会」
並んで戦う。
ただそれだけなのに、
少しだけ世界が救われた気がした。




