Chapter 10「黒き天使」
宇宙が燃えていた。
《ヘリオス・ベース》周辺宙域。
無数の閃光。
爆発。
撃墜されていくFW。
HX群47機による侵攻は、ついに第一防衛ラインを突破していた。
『第三区画炎上!!』
『敵飛行型HX、民間ブロック接近!!』
『迎撃部隊足りません!!』
通信が悲鳴で埋まる。
その中を。
黒銀の巨体が突き進んでいた。
《HX-01C ヴァルグレイヴ》
ソラナムは前方を睨む。
モニターには、民間避難艦へ向かうHX群。
「……間に合えよ。」
ARMOR PURGE SYSTEM
赤い文字が表示される。
リミッター解除。
重装甲解除。
『ソラナム!!』
リゼの声。
『それ以上SYNC上げたら危険よ!!』
「分かってる!!」
ソラナムは叫ぶ。
「でも今は!!」
操縦桿を押し込む。
EXECUTE?
「――やれ。」
ARMOR PURGE:START
瞬間。
《ヴァルグレイヴ》全身装甲が分離した。
排除。
肩部大型装甲。
腰部追加ユニット。
背部重火器。
全てが宇宙へ射出されていく。
そして。
内部から現れる。
漆黒。
細身になった機体。
鋭いシルエット。
赤黒い粒子を纏う高機動形態。
まるで。
“拘束を解かれた怪物”。
『なっ……!?』
FW部隊が驚愕する。
SYNC RATE:60%
「ぐッ……!」
ソラナムの瞳が赤く染まる。
頭の中へ流れ込む大量の情報。
視界が拡張される。
敵機動予測。
空間把握。
熱源解析。
通常人類では処理不能な領域。
だが。
《ヴァルグレイヴ》は止まらない。
加速。
一瞬で消える。
『消え――』
次の瞬間。
HX群中央で爆発が起きた。
超高速戦闘。
黒い残像。
斬撃。
拳撃。
粒子砲。
飛行型HXが次々と切り裂かれていく。
『速すぎる……!!』
『センサーが追えない!!』
ソラナム自身も感じていた。
身体感覚が薄れていく。
代わりに。
機体そのものになっていく感覚。
『最適。』
『殲滅効率上昇。』
「黙れ……!」
だが。
その声すら、どこか心地よい。
その時。
《THRONE》が前へ出た。
『終焉因子出力上昇確認。』
「……お前。」
『人類保護行動継続。』
『理解不能。』
「理解しなくていい。」
ソラナムは構える。
「守りたいから守る。」
『非合理的。』
「そうだよ。」
激突。
《THRONE》と《ヴァルグレイヴ》。
宇宙空間で高速戦闘が始まる。
青い粒子。
赤黒い粒子。
光が交差する。
だが。
次の瞬間。
新反応接近。
『高エネルギー反応!!』
『新型HX来ます!!』
宇宙の闇。
そこから現れたのは。
白銀の騎士。
巨大ランス。
マントのような装甲。
頭部には王冠型アンテナ。
そして。
金色の単眼。
《HX-13》
《LANCELOT》
『また人型……!?』
《LANCELOT》は静かにランスを構える。
その動きには、“意思”があった。
『原初個体命令確認。』
『終焉因子確保を開始する。』
「来るぞッ!!」
ソラナムが叫ぶ。
突撃。
速い。
紫HXすら超える直線機動。
黄金の残光。
激突。
「ッッッ!!」
《ヴァルグレイヴ》が吹き飛ばされる。
凄まじい衝撃。
装甲火花。
『ソラナム!!』
《LANCELOT》はさらに追撃。
高速連続突き。
まるで騎士の剣技。
「こいつ……!」
ソラナムは辛うじて回避する。
だが。
敵は異常に強い。
その瞬間。
《THRONE》が静かに告げた。
『HX-13《LANCELOT》。』
『近接戦闘特化型。』
『終焉因子回収執行者。』
「物騒な肩書きだな……!」
一方。
コロニー内部。
地下シェルター。
リゼは避難誘導を続けていた。
「急いで!!」
「子供優先!!」
兵士たちも必死に動いている。
その時。
リゼは、あの少女を見つけた。
白い髪。
赤い瞳。
静かな表情。
「あなた……。」
少女はモニターに映る《ヴァルグレイヴ》を見る。
「黒い天使が泣いてる。」
リゼが息を呑む。
「……どういう意味?」
少女は静かに呟く。
「あの子、壊れる。」
その瞬間。
宇宙空間で。
《ヴァルグレイヴ》内部警告が鳴り響いた。
WARNING
SYNC RATE:64%
「ッ……!!」
ソラナムの視界が赤く染まる。
脳裏へ無数の声。
『壊せ。』
『滅ぼせ。』
『全テヲ終ワラセロ。』
そして。
《ヴァルグレイヴ》の装甲が、さらに変形を始めた。
Chapter 10 END
次回予告
《ARMOR PURGE》によって解放された、
《ヴァルグレイヴ》高機動殲滅形態。
だがその力は、
ソラナムの人間性すら削り始めていた。
SYNC RATE:64%
限界を超えていく同期率。
脳へ流れ込むHX戦争の記憶。
そして。
《ヴァルグレイヴ》は、
さらに新たな形態へ変貌を始める。
一方。
新型人型HX《LANCELOT》参戦。
圧倒的近接戦闘能力によって、
《ヴァルグレイヴ》を追い詰めていく。
さらに《THRONE》も動き出し、
戦場は“三機の人型HX”による超高速戦闘へ突入。
そして。
地下シェルターで出会った謎の少女。
彼女はリゼへ告げる。
「黒い天使を止められるのは、あなたしかいない。」
さらに明かされる。
少女自身もまた、
HXと深い関係を持つ存在だということ。
その頃。
《ANGEL PRIME》は宇宙空間を見つめながら、
静かに観測を続けていた。
『終焉因子、覚醒段階移行。』
『人類最終試験を継続する。』
次回。
Chapter 11
「覚醒領域」
力を使えば壊れていく。
それでも、
守りたいものがある。




