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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第1部「覚醒編」
10/21

Chapter 9「群青の防衛線」

宇宙港コロニー《ヘリオス・ベース》。


 その外宙域に、異常な数の熱源が浮かび上がっていた。


HX SIGNAL:47


 赤い光点。


 無数の機影。


 闇の宇宙を埋め尽くすように接近してくる。


 その光景を見た瞬間。


 誰もが理解した。

“今までとは違う”。


『全戦闘要員、第一種戦闘配置!!』


『民間ブロック、全域シェルター閉鎖!!』


『艦隊主砲、発射準備!!』


 《ヘリオス・ベース》全域が戦時モードへ移行する。


 軍港ドック。


 大量のFWがカタパルトへ並んでいた。


 量産機ジェガード


 重装型バルディオ


 高速機レイヴン


 数百機規模。


 これが人類軍の総力。


 だが。


 格納庫内の空気は重かった。


「47機って正気かよ……。」


「HX一機だけでも災害レベルだぞ……。」


「俺ら量産FWだぞ……?」


 兵士たちの顔には緊張が浮かんでいる。

その中央。


 ソラナムは《ヴァルグレイヴ》を見上げていた。


 黒銀の装甲。


 巨大な重装フレーム。


 だが。


 今はどこか“呼吸している”ように見える。

『……悩んでる顔。』


 通信。


 リゼだった。


 《セラフィム》のコックピット映像が表示される。


「そりゃな。」


 ソラナムは苦笑する。


「急に“人類の未来背負ってます”とか言われても困る。」


『でも逃げないんでしょ。』


「逃げられる状況か?」


『性格の話。』


 ソラナムは少し黙った。

そして。


「……まぁ、放っとけない。」


 リゼが少しだけ笑う。


『そういうとこ。』


「何だよ。」


『好きよ。』


「…………は?」


 ソラナムが固まる。


 リゼは平然としていた。


『その、“誰かを見捨てられないところ”。』


「お、おう……。」


 ソラナムは露骨に視線を逸らした。


『何その反応。』

「いや急に来るなって!」


『戦場前だから。』


「怖ぇよ。」


 だが。


 少しだけ緊張が和らいだ。


 その時。


 警報が鳴り響く。


ENEMY CONTACT


『HX群、交戦距離到達!!』


『第一防衛ライン展開!!』

モニターへ映る敵群。


 獣型。


 飛行型。


 重装甲型。


 様々なHXが迫ってくる。


 その中心。


 一機だけ。


 人型HXがいた。


 青い外装。


 細身の機体。


 頭部には、まるで王冠のような構造。


 そして。


 青い単眼。


「……あれ。」


 ソラナムが眉をひそめる。


 他と雰囲気が違う。


 機械的なのに。


 妙に“人間っぽい”。

『識別コード:HX-11』


『名称:《THRONE》』


『人型指揮機……!?』


 オペレーターが叫ぶ。


 次の瞬間。


 HX群が一斉加速した。


戦闘開始。

『FW部隊、迎撃開始!!』


 無数の量産FWが宇宙へ飛び出す。


 ライフル。


 ミサイル。


 ビーム砲撃。


 宇宙空間が閃光で埋まった。


 だが。


 HX群は止まらない。


 飛行型HXが高速突撃。


 一瞬でFW部隊へ食い込む。

『うわぁぁぁぁ!!』


 爆発。


 撃墜。


 量産FWが次々と散っていく。


「クソッ!!」


 ソラナムは《ヴァルグレイヴ》を発進させた。


 黒い巨体が宇宙へ躍り出る。


 直後。


 敵飛行型HXが三機突撃。


「邪魔だァ!!」

 ビームライフル連射。


 二機撃破。


 残る一機へ体術機動。


 回し蹴り。


 HX爆散。


『相変わらず無茶苦茶な動き……!』


 リゼの《セラフィム》も出撃。


 白い翼を展開し、後方援護へ回る。


 その時だった。

 《THRONE》が、ゆっくりと前へ出た。


 青い単眼。


 静かな動作。


 そして。


 通信回線へ直接声が響く。


『終焉因子確認。』


『質問を開始する。』


「……質問?」

『何故、人類を守る。』


 ソラナムが顔をしかめる。


「またそれかよ。」


『人類は争う。』


『奪う。』


『滅ぼす。』


『それでも、守る価値があるのか?』


 戦場。


 爆発。


 悲鳴。

確かに。


 人類は綺麗じゃない。


 だが。


 ソラナムは前を見る。


 避難艦。


 守ろうとする兵士。


 泣いている子供。


 戦う仲間たち。


「……ある。」


『理由を問う。』

「そんなの。」


 ソラナムは《ヴァルグレイヴ》を構える。


「俺が、守りたいからだ。」


 一瞬。


 《THRONE》の青い単眼が揺れた。


『感情論。』


「そうだよ。」


 ソラナムは加速する。


 激突。


 《ヴァルグレイヴ》と《THRONE》。


 黒と白。


 HX同士が宇宙空間で衝突した。


 しかし。


 次の瞬間。


 《THRONE》が異常な速度で回避。


 そのまま《ヴァルグレイヴ》背後へ。


「速っ――!?」

 青い粒子。


 高機動。


 そして。


 《THRONE》は静かに告げた。


『ならば証明しろ。』


『人類に、存続する価値があることを。』


 直後。


 HX群が一斉に《ヘリオス・ベース》へ突撃を開始した。


『敵群突破!!』

『防衛ライン崩壊します!!』


『民間区画へ侵入コース!!』


「ッ!!」


 ソラナムが目を見開く。


 守り切れなければ終わる。


 本当に。


 この世界は終わる。


 そして。


 《ヴァルグレイヴ》内部で、再び赤い文字が点灯した。

ARMOR PURGE SYSTEM

STANDBY


「……来たか。」


 重装甲解除システム。


 禁断の高機動形態。


 だが。


 それを使えば。


SYNC RATE急上昇予測


 ソラナムは静かに息を吐く。

「ったく……。」


 そして。

 不敵に笑った。


「使ってみるか」


Chapter 9 END

次回予告

 HX群47機による全面侵攻。

 ついに《ヘリオス・ベース》防衛ラインが崩壊する。

 民間区画へ雪崩れ込むHX。

 炎上するドック。

 撃墜されていくFW部隊。

 人類軍は、かつてない窮地へ追い込まれていた。


 そんな中。

 ソラナムは決断する。

《ARMOR PURGE SYSTEM》起動。

 重装甲を解除し、

 《ヴァルグレイヴ》は“高機動殲滅形態”へ移行。

 黒い巨体は、

 まるで拘束を解かれた怪物のように加速する。


 だが、その代償は大きかった。

SYNC RATE 60%領域接近。

 人間性を削られていく感覚。

 機体と融合していく意識。

 そして。

 ソラナムの脳裏へ流れ込む、“HX戦争”の記憶。


 一方。

 リゼは避難民救助中、

 地下シェルターで再びあの少女と出会う。

 少女は静かに言う。


「黒い天使が泣いてる。」



 さらに。

 《THRONE》の背後で、

 新たな人型HX反応を確認。

 その機体は、

 まるで“騎士”のような姿をしていた。


 次回。

Chapter 10

「黒き天使」

 守る力か。

 滅ぼす力か。

 その境界線が、壊れ始める。

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