第61話:冬灯樹の元に散る
小さい手のひらは巡る刻のなかにほどけていく
まだ何も知らぬぬくもりが
疑いもなく私の指を掴んでいた
やわらかな土を踏みしめ
風に追われるように笑っていた日々
転びながら覚えた歩みは、いつしか振り返らぬ隔たりとなり
呼べば届いていた名さえも、風の彼方へと解けていく
ゆく先は、庭から境へと移ろうのでしょう
ことばにもならぬ影は、すでにあなたの内に息づいている
転ぶことを知った足は、ひとり立つことを覚え
背はやがて、背負うものの重みを知る
その歩みの果てに、何が待ち受けているのかを
私は、知っている
名を呼び
めぐる季を教え
いたみの数だけ、やさしさを重ねてきた
伸びゆく背に、もはや触れることがなくとも
それでもなお、信じている
あの日、確かに握り返されたぬくもりは
いまもなお、ここに在りつづけている
だから、どうか
たとえその先が
誰にも祝福されぬ道であろうとも
わたしはここで、静かに見守っている
あなたが、あなたとして在りつづけることを
中央区の大通りは、季節の厳しさを持ち込まない。
熱循環パネルが風の角をまるくして、街灯や外壁に張り巡らされた気候制御網のおかげで、吐く息が白くなるほどの冷え込みでも、人々は凍えることなく足を進められるのだ。
見上げれば、雲の薄い空を高層ビル群が切り取り、その間を走るホログラム広告が淡い光を落とす。
店先には新しい季節を迎えるための装飾が並び、風に拭かれる鮮やかなガーランドが暖かく迎え、行き交う人々のコートやマフラーが靡くたび、重なる会話はどこか浮き足立っていた。
そんな穏やかな雑踏を、甲高い男の声が突き裂く。
「へへ……おーいィ!! どうしたァ!? もうギブかァ?」
人の波をかき分けて現れた男は豪快にパーカーを脱ぎ捨てる。
露わになった細身の上半身にはびっしりと刺青が走りタンクトップから覗く両腕の筋肉が、不気味な笑みとともに波打った。
「おぉっと…さっぶ…この俺ちゃんのスピードに勝てる奴はいねェのかよォ」
歩道沿いのカフェテラスから、面白がったギャラリー。
一斉に端末を向け始めるそのカメラの先――通りの向こうで、一人のオーダーが人波を縫うようにして駆けていた。
「オーダーさーん!! 頑張ってー!!」
「あとちょっと! あと少しで追いつくよ~!」
テラス席の子どもたちが無責任な声援を飛ばす。
追われる男は舌打ちをひとつし、腰を低く落としてスタートの姿勢を取った。
「あばよ、オーダーくん! 次は足も鍛える事だなァ! テメェの運がよけりゃまた会おうぜェ!」
刹那、男の足元が閃光を放つと、気付いたころには彼の姿はそこになかった。
爆ぜる風圧が大通りを駆け抜け、通行人のコートの裾を大きくはためかせると、店先の装飾が揺れ、ガーランドが波打つ。
「どけどけェ!! 暇を持て余してんだ! 遊びまくるゼェ!!!」
声だけを残し、男はビルの谷間を弾丸のように駆け抜ける。
信号を無視して横断歩道を裂き、屋台の前を一瞬で通過し、緩やかな風さえ切り裂いていった。
だが、その足が唐突に止まる。
アスファルトを削り、急停止した衝撃が周囲の空気を震わせた。
ズザッ――
「……ン?」
行く手に立っていたのは、派手な男。
胸ポケットからチャームのように揺れる金属タグが赤く滲んだ。
「デート日和なのに、バイブス下がりまくり」
総柄のシャツがちらりと覗き、ハート型のサングラスを引っかけた出で立ち。
染め上げた金髪が街の光を受けてきらめき、健康的な褐色の肌とその派手さこの都市の寒さにはどうも浮いている。
「せっかく街が浮かれてる時期なんだしさぁ。飾りつけが台無しじゃん?」
犯罪Novactorを前にしても、その笑みは余裕と遊び心に満ちている。
「……なんだァそのトンチキなカッコはよォ? 俺がVoidに閉じこもってる間に、オーダーの風紀は馬鹿になっちまったのかァ?」
「うわ、その格好センスないなー…女の子の前でそれはないよ…うーん…7点ってとこ? 仕方ない……俺が女の子の口説き方、教えてあげる」
「あー…、ただのアホか。警戒して損したゼ……あばよ。色男サン」
男が横をすり抜けようとした、その瞬間。
アミルは自然な動作で片膝をつき、手のひらを静かに地面へ触れた。
「――残念。行かせてあげてもいいけど、足場は選んだ方がいい」
指先から、淡い翠光走る。
舗装の継ぎ目を縫うように光が広がり、歩道下に埋め込まれた緑化層へと染み込んでいった。
ご、と低い地鳴り。
平らだったはずの舗装がゆっくりと持ち上がり、やがてそれは生きたような大きな波に変わる。
逃走する男の進路に沿って波のような起伏を作り出した。
「うおっ、なんだこれェ!? このチート地面、走りづれェ!!」
男の足元でアスファルトが柔らかな隆起を繰り返し、一歩ごとに着地の感覚を狂わせる。
踏み込んだ場所が半拍遅れて盛り上がり、次の一歩を置こうとした先が沈む。
加速に乗った脚が、そのわずかなズレで乱れた。
「自然は俺の味方ってことじゃん? 逃走犯を捕まえるのなんて、みんなのアミルにかかれば…」
「――なァんてな」
男は不敵に笑うと、盛り上がった路面の山を逆に踏み台にした。
波打つ舗装を蹴り上げ、その反発を利用して高く跳躍すると、身体が弓なりにしなり、アミルの頭上をハードルに見立て飛び越えた。
「じゃあな! バカオーダー!!」
乾いた笑い声が風に流れ、男の姿は再び通りの先へと消えていく。
路面の波が静かに収まり、アミルは立ち上がりながら軽く首を傾げた。
「あちゃ〜…流石に早いかも」
「ギャーーーッ!! アミルーー!! 付き合って〜!!」
いつの間にか集まっていた彼のファンたちが、デコったキラキラのうちわを振りながら、身を乗り出している。
その中の一人へ、アミルは振り向きざまに指で銃の形を作った。
「モテ男も困っちゃうなぁ〜。はい、君にラブショット」
バキュン、と効果音を鳴らす。
撃ち抜かれた少女は石のように固まり、そのまま友人にもたれ込むように崩れ落ちた。
「えぐ…今の見た……?」
「好き、うちもう無理、まぢ無理。まぢ限界…」
「ビジュも動きも全部ズルいんだけど! は!!?」
「ちょ待って、この子落ちてるって! 大丈夫? メンテいっとく!!?」
熱の増した歓声を背に指先の煙を吹く芝居をしてから、鼻歌まじりに逃走犯が消えた通りの奥へ視線を流した。
「さあて、そっちに行ったよ。――子猫ちゃん?」
✧✧✧
細く入り組んだ裏通りは、中央区の華やかな表通りとはまるで別世界だ。
高層ビルの隙間に押し込められたような路地には陽も届かず、熱循環パネルの恩恵も薄い。
そこへ滑り込んだ男は、荒い息を押し殺しながら息を潜めた。
「へへ……ここまで来たら、もう追ってこれねェだろ。ハァ…オーダーもVoidもうんざりダゼ…。地下で縄張り争いしてるよりこっちの方がよっぽどおもしれェじゃねェか…」
周囲を見回し、コンテナを乱暴に漁る。
捨てられた作業布、工具箱の蓋、古い配送用のフードジャケット。
「おいおい…ミレリスはゴミ箱にも規律があんのかァ…? 酒もガキも捨てられてねェゼ? これなら使えるか…ンン、クソ面倒だが、変装したほうがいいなァ」
「オーダーに見つかると面倒だしね」
「そうそう、面倒だから――」
男の肩がびくりと跳ねる。
声は、頭上から落ちてきた。
反射的に振り返ったその先。
暗闇に慣れない眼がやっとその姿を捉える。
非常階段の影、その少し手前で――宙に浮かぶ女が、その長い足を組んで静かに見下ろしていた。
猛禽のごとき金色の双眼が獲物を捉えんと怪しく光る。
「クソッ……」
走り去ろうと踏み出した足。
しかし、瞬間的な重圧がのしかかる。
地面が軋むほどの力が男を押し潰し、膝をつかせた。
「グェッッ……」
「オーダーから逃げるなら、路地裏に来るのはおすすめしない」
つま先が地面に触れる。
「アタシみたいな奴が待ち構えてるから」
軽やかに着地し、男の頭を踏み付ける。
逃げ場を完全に断たれた男はそれでも抵抗を続けるが、女の腰ベルトに吊られた手錠の金属音が耳に入ると、怯んだように固まった。
それは引力に導かれるように静かに滑ると、背中に回された両手首へ音もなく噛み合った。
「確保」
路地裏の静けさの中、首元の通信機に指を添えた。
「こちらオーダー196O1……はぁ…これ必要ある? 通報のあった“走るだけの男”を確保。通報通り右腕に獅子の刺青あり、こいつで間違いない」
『了解。もうキーパー達を向かわせてるよ。よく追いつけたな、ロビン』
「馬鹿の逃げ場所なんて、だいたい決まってるから」
「おいッ!! 聞こえてんぞォ!!! このVoidの裏切り――ぐえっ……!」
抗議の声など聞く耳も持たず、遠慮なく足で再度踏み潰す。
潰れたカエルのようなくぐもった声が、路地に響いた。
『周辺の追加通報はなし。そろそろ昼休憩に戻っていいよ。淡砂街はクイルたちが入れ替わりで担当するってさ』
「了解」
軽く手を上げると、男の身体が見えない力に持ち上げられた。
拘束されたまま宙でじたばた暴れる男を片手で制し、そのまま路地の出口へ歩き出す。
表通りへ出たところで、重い足音が近づいてきた。
影が差し、がっしりした体格の男が息を切らして駆け寄ってくる。
「おッ、やっと来たなァ。やたら図体のでかいのろまが一匹」
「……っ…はぁ…お前を…ここに誘導するために、走らされたんだよ…!」
オーティスは肩で息をしながら額の汗を拭う。
その様子を見て、ロビンはわずかに口元を緩め空いた手を差し出した。
肘まで覆うあの手袋はもうそこにはない。
「いい作戦だったでしょ」
「まあ、……っ結果オーライだな」
パシッ。
その手を打ち返す。
打ち合わされた掌の音が冷えた空気に乾いて弾け、任務完了の合図のように軽やかな音が路地裏に響いた。
「あー…のろま二匹目のご登場だぜェ? …グラサン付きのウゼェ方」
そこへ広場へ続くメインストリートの方からやや遅れてやってきたのは――ファンに囲まれながら悠々と歩いてくるアミルだった。
「ごめんねみんな〜今ちょっとヒーロー中! 来週のファンミでサイン会もするから、その時また会お?」
「……なんだろうな。妙な既視感が…」
「なに? 既視感?」
「いや〜今日も目立っちゃったな。 やっぱ俺いると華が違うよね〜?」
アミルは襟元をぴしりと整えて何事もなかったように胸を張ると、背を少しだけ屈めて顔を寄せた。
「さて…と、犯人も捕まえたしランチいっちゃう? それとも俺とデートしちゃう?」
「それはもう無理そうだぞ」
分厚い肩が差し込み、顎で広場のほうを示した。
その先では、広場の中心にそびえる冬灯樹がどっしりと根を下ろし、枝を四方に伸ばしていた。
しかし、そこには目を奪うような輝きなど見る影もなく、発灯晶の葉は無残にも散り果て、むき出しの枝が広がるばかりだった。
「うそ……さっきまで綺麗だったのに」
「パパぁ、お星さまの木……消えちゃった……」
泣きそうな顔をしている子どもたちの姿が見える。
光景を見下ろしながら、宙に拘束された男は悪びれもせず口元を吊り上げた。
「へへ……いい眺めだなァ。派手に散ったじゃねェか」
「おい、楽しみにここに来る人もいるんだぞ」
「お説教かよ……いいぜェ? そののろい足また試してみるかァ?」
「いい度胸だな。次は本気でいくぞ」
「ただの挑発。こいつ、逃げたいだけだよ。それに常習犯」
「……チッ…騙しがいのねェ……」
男が吐き捨てた直後、低く唸るような駆動音が通りの奥から近づいてきた。
やがて広場の外縁部に、白い装甲車両が滑り込むように停止する。
ドアが跳ね上がり、数名の隊員たちが軽やかに降りてくる。
「お疲れ様でーす! 回収来ましたー!」
先頭の男が手をひらひら振りながら駆け寄ってきた。
明るい声色に、場の空気が緩む。
「ずいぶん派手にやってくれましたね、この辺一帯」
「風圧で装飾がなぎ倒されてた。後処理ちょっと大変そうだな」
「……で、こいつか」
軽口を交えながらも、視線はすぐに犯人へ向く。
空中で拘束された男を見上げ、キーパーの表情が一瞬で引き締まった。
「おい、好き放題やってくれたな! 公共のど真ん中で暴走、器物損壊、通行妨害……はいアウト。反省する気ある?」
「ハハッ!! んなもん……いってェ!!!!」
「ないよな! 顔見りゃ分かるよ」
言い終わる前に、拘束具のロックが強制的に締め上げられる。
ロビンが指を軽く動かすと、男の身体が滑るようにキーパーの元へ移動する。
キーパー達は慣れた手つきで拘束具を追加固定し、そのまま車両へ押し込んだ。
「オーティスさんもナイス誘導っす」
「まあな」
「走ってただけでしょ」
「アミルさんも相変わらず目立ってましたよ。後で映像回ってきそうですね」
「一番目立ってたっしょ? 今のオーダー機関でナンバーワン人気はこの俺じゃん?」
短い笑いが交わされる。
「じゃ、あとはこっちで片付けます。現場処理と報告もまとめとくんで、皆さんは上がって大丈夫ですよ」
ドアが閉まり、車両が低い駆動音を残して走り去ると、巻き上げられた風が、路面に散った結晶片を静かに揺らした。
「うわぁぁん!!!」
今度は子どもの泣き声。
さっきの風圧で発灯晶がほとんど剥がれ落ち、今はただの黒い骨組み。
その数時間は、いつか心の奥を彩る鮮やかな記憶へ変わるはずだった。
大人たちが思うよりずっと、子供にとっての“今”は残酷なほど唯一無二で、取り返しのつくものではない。
泣き声を上げる小さな女の子が、涙で濡れた顔を上げると、バチッと目が合う。
涙を浮かべオーティスの足元へと駆け寄り、ぎゅっと足元を掴んだ。
「オーダーさん…なおしてよ……」
「あー…えっと、……」
オーティスは困惑した顔で固まり、目線だけでロビンに助けを求める。
「俺じゃ無理だ」と無言で訴えるように。
「…ったく」
しゃがみ込み、ロビンはその一枚を指先で摘まみ上げる。
冷たい発灯晶が、彼女のNovaに呼応するようにふわりと浮かんだ。
「…………見てな」
両手をゆっくりと持ち上げる。
すると路面に散らばっていた無数の発灯晶が、重力を失い一斉に宙へ舞い上がった。
ざわり、と周囲が息を呑む。
光の欠片たちは冬の星屑のように空中で渦を描き、広場中央の冬灯樹へと吸い寄せられていく。
一本、また一本と、黒く沈んでいた枝に光の筋が戻っていく。
やがて樹全体が白銀の輝きに包まれ、幻想的な空間に変わった。
「わぁ……!!」
「お星さま戻った……!」
子供たちは一斉に走り出し、歓声を上げてその樹の下に集まっていく。
花びらが舞う幻想の中、広場は歓声に包まれていた。
無邪気に笑い、大人たちもカメラを構えてその奇跡を記録しようとしている。
その中で、一人の若い女性が呟いた。
「…………綺麗だわ」
震えるような声で、彼女は端末を掲げた。
その視線にはまだ微かな夢が残っている。
だが、その腕は唐突に押し下げられた。
彼女の隣に立っていた老人が、腕を払い落とすようにして声を荒げたのだ。
「…綺麗だと? 本気で言ってるのかい? Vorderがやったことだぞ。あの連中がこんな都合のいいことするわけがない。どうせ見せかけだ、信用させて、油断させて、あとで何をするかなんて分かったもんじゃない」
「……っ…でも、さっきのは――」
「お前さんのような若いのが一番危険だ。ああいうのに騙されて、気づいたときには手遅れになる…。今までだってそうだったじゃないか。結局、下層のネズミ共は“こっち側”じゃないんだからな」
吐き捨てるように言うその声に、周囲が凍りつく。
カメラを構えていた人々が、まるで催眠から覚めたかのように一斉に彼女――ロビンのほうへと目を向けた。
たった一言で、その目に宿っていた感嘆と憧れは冷たく沈んだものに変わる。
目の前の眩い光景は暗く濁った光景として見られはじめる。
「さっきの犯罪NovactorもVoidの奴なんだろ…? この女が呼び寄せたんじゃないか…?」
「混ざったつもりでいるのかもしれないけど、壊す側が“直しました”って顔してるの、滑稽だと思わない? 無理よ。あの目、あのやり方…同じだわ」
「騙されるとこだった…向こうにいた人間が、そう簡単に変わるわけないよな」
「……っ、…」
怒りと恐れの混ざった声が、四方から投げられ始めた――そのとき。
「はいストップストーップ! それ以上聞かなくていいよ~!」
「……、…?」
その人々の声を遮断したのはアミルだった。
彼女の耳を後ろから両手でふさいでしまう。
「行こ。ここ、長居する場所じゃないっぽいじゃん?」
ロビンは手を振りほどこうともがくが、アミルはそれを軽やかに躱し、まっすぐに本部の方向へ歩き出した。
「はやく本部に帰ろ? 俺もう、へとへと…疲れちゃった~」
冗談めかした調子を崩さず、彼女の背中を胸で押しながら一歩、また一歩と歩き続ける。
――その後ろで、オーティスは立ち止まっていた。
広場の端に背を向けたまま、鋭い視線を残された人々へと向けている。
その眼差しは、無言のまま何かを滲ませていた。
足元の地面に、ぴたりと影が重なる。
彼はゆっくりと、ほんの一歩、踏み出そうとした。
しかし、その動きを遮るような声が静かに割って入った。
「はいはい、そこまで。ここで動けば子猫ちゃんに矛先が向いちゃうじゃん? 今は本部に戻る! そっちが先決」
その言葉を受け、足は止まった。
視線はまだ広場を向いていたが、次第に熱が抜けていく。
少しして、彼は息をひとつだけ吐き、静かにアミルたちの後を追った。
風が吹き抜ける。
咲き戻されたはずの光の粒が、枝からひとつ、静かに落ちた。
子供たちの歓声の余韻が、遠ざかっていく足音に吸い込まれていく中――
広場に残った大人たちは誰も口を開かず、ただそれぞれの沈黙に包まれていた。




