096 獣人国の冒険者ギルド
『疾風』の二つ名を持つ冒険者であるエルフのエリ。
人間の姿になって後を付いていく雪女のユキ。
奇麗どころの二人は街中を歩くと目立ち、道行く人も振り返り見とれる。
そんな二人が冒険者ギルドの扉を開けて中に入る。
魔神パズズのバズも同行しているが、エリの近くで見えない様に寄り添っているので、見た目は二人だ。
「ここが冒険者ギルドでありんすね。」
ユキは相変わらずキョロキョロして物珍しそう。
「始めに冒険者登録した方が良いじゃろう。」
エリはユキを連れて受付に向かう。
受付は3箇所、何処も混んでおり、列になって並んでいた。
その中で1番短い、男性の受付の列の1番後ろに二人は並んだ。
やっぱり綺麗な女性の受付は人気があるようだ。
冒険者ギルドの受付の横に酒場がある。
待ち合わせや食事、休憩等に使う。
その中で昼間から酒を飲んで酔っ払ってる冒険者も数人いた。
「おい、可愛い姉ちゃんが入って来たぞ。」
「見慣れない女だな。」
「新人か?」
「キョロキョロしてるぞ。」
「ちょっと酌でもさせるか。」
止せば良いのに、酔っ払い冒険者がユキの元に近づく。
「おい、姉ちゃん並ぶのは後にして、こっちで酌をしろ。」
酔っ払いはユキの手首を掴もうとする。
「止めてくんなまし。」
ユキはその手を払う。
「おい、俺達はCランク冒険者パーティーの銀狼の剣だ。大人しくこっちに来て酌をしろ!」
酔っ払いはユキの腕を掴み引っ張る。
ユキは周りを見るが、誰も止めようとしない事を確認し溜息一つ。
「はぁ。」
ユキは掴まれた腕を回し、手首と肘関節を極めて酔っ払いを倒す。
「何ランクの冒険者か知りんせんが、汚い手で触らないでくんなまし。」
周りの冒険者はその様を見て、クスクスと笑っている。
「このあまぁ!」
冒険者はナイフを出して、ユキの腹に近付けた。
「大人しく言うこと聞かねえと、刺すぞ。」
ドスの効いた声で脅す。
「武器を出したら、殺されても文句は言えんせんよ。」
ユキは自然体で静かに言う。
酔っ払いは周りの嘲笑に怒り心頭。
「うるせぇ、黙って言う事を聞け!」
ユキはエリを見た。
(やっても良い?)って言う確認。
エリは頷く。
(どうぞ)って言う了承。
ユキの腰には俺から貰った炎の魔剣を
差している。
いつ抜いたのか誰にも見えなかった。
ユキの右手は炎の魔剣を握り上に伸びている。
逆袈裟で斬り上げていた。
酔っ払い冒険者のナイフを握っていた右手が手首の先から床に落ちる。
「うあああああああ。」
酔っ払いは左手で、斬られた右手首を押さえて悲鳴をあげる。
ユキと手首を押さえて蹲る酔っ払いの周りにいた冒険者達は後退り、空間が出来る。
酔っ払いの仲間達は異変を察知し、武器を抜いて、ユキに駆け寄る。




