093 【復讐の開幕】殲滅の旅団を蹂躙せよ!獣人国最大のクランを葬る、旅人たちの冷徹な粛清劇
■粛清の幕開け、暴力の理不尽を焼き払う
「どけ!」
俺は全身の気を限界まで練り上げ、纏わせた。ドルダの肩を掴む手など必要ない。ただ体当たりをくれてやるだけで、Bランク冒険者であるはずのドルダの体が、紙切れのように宙を舞い吹き飛ぶ。
「なっ……!?」
狼獣人ロウガの顔から、ヘラヘラとした余裕が消え失せた。その驚愕が顔に張り付いている一瞬の隙、俺は地を蹴った。
『ドラム、加速』
『承知した! 雑魚を粉砕せよ!』
俺の拳が、音速を超えてロウガの顎を粉砕する。
ゴッ、という重苦しい音と共に、狼獣人の巨躯が弾丸のように後方へぶっ飛んだ。軽く2メートルは超える距離を転がり、無様に地面を削りながら停止する。
「てめええええ!」
「何しやがる、この野郎ッ!」
魔物の解体に精を出していたロウガのパーティーメンバー四人が、武器を抜き放ち、一斉に襲い掛かってくる。怒号が響く中、俺は背後に気配を感じた。
「大人しくするにゃ」
ペロの声と同時に、影から無数の漆黒の触手が迸る。
『闇の触手』は生き物のように獣人たちの武器を絡め取り、逃げる間もなく四肢を強引に縛り上げた。
「うお、なんだこれは!?」
「くそっ、体が動かねぇ!」
重力に逆らうように宙吊りにされ、地面に叩きつけられる獣人たち。その顔面は恐怖で歪んでいる。ペロは優雅に尻尾を揺らしながら、影から一歩踏み出した。
「殲滅の旅団? 大したことないにゃ」
その横で、ダルアがポンタに向かって駆け寄る。
「ダルを奴隷にするんだってぇ? ほら、言葉に責任持ちなよ!」
「うあぁぁぁぁっ! 痛い、痛いよぉっ!」
ダルアの強烈な蹴りがポンタの腹部に突き刺さる。転がりながら命乞いをする商人の姿は、先ほどまでの傲慢さが嘘のように消え失せ、ただの哀れな肉塊と化していた。
「ペロ、ポンタも拘束して。こいつだけ生かしとくのは胸クソ悪いからね」
「分かったにゃ!」
ペロの闇がポンタをも飲み込み、獣人たちと同じく一箇所に縛り上げていく。
俺は倒れ伏したロウガの腹部に、ゆっくりと歩み寄り、冷酷な眼差しでその鳩尾を容赦なく踏み抜いた。
「ぐっ……げぇっ……!」
「俺の仲間をどうするって? もう一度言ってみろ。聞き取れなかったからさ」
ロウガは血反吐を吐きながら、憎悪に満ちた眼で俺を睨みつける。
「貴様ら……獣人国で何をしたか分かっているのか! 俺は『殲滅の旅団』の幹部だぞ! 町に戻ったら、ただじゃ置かない……全滅させてやる!」
「へぇ、随分と威勢がいいな。その『殲滅の旅団』ってのが、そこまで怖い組織なのか? 知らないから詳しく教えてくれよ」
この場を切り抜けるだけじゃない。情報を引き出し、次の駒を動かす。俺は冷めた笑みを浮かべ、あえて挑発的に続けた。
「聞いて驚くな……。俺たちは獣人国最大のクランだ。構成員は百人超え。獣人国の上層部ともパイプがあり、些細な悪事など揉み消せる。それに、報復の徹底ぶりは異常だ。逆らう奴は根絶やしにされる。まるで毒だ……」
語り出せば、ロウガは途端に饒舌になった。己の所属する組織の強大さを語ることで、俺たちを威圧しようという算段だろう。だが、それは逆効果だった。
「なるほど。リーダーはBランクの虎獣人、タイガ。ハルカの仇か……。獣人国十二神将の一人、『白虎』ね」
「そうだよ! タイガ様は強者だ! 兎のディアに、エルフのフィーダ、人間のシャイラ……。お前たちが束になってかかっても勝てない!」
情報は揃った。タイガの周囲には、十二神将のディアをはじめとした強力なメンバーが固めている。つまり、ここで見逃せば、俺たちの情報がタイガに伝わり、組織的な報復が始まる。
「そうか。……なら、ここで逃がすという選択肢は消えたな」
俺の言葉に、ロウガは鼻で笑った。
「そうやってビビったか? お前ら、大人しく俺を解放すれば……」
「いや、違う。皆殺しで証拠隠滅しないと、面倒が増えるだけだからな」
「え……?」
ロウガの顔が凍りつく。それはジョークではないと、俺の眼を見て悟ったからだ。
ペロ、ダルア、ユキ、クーコ。俺の背後に控える仲間たちの殺気が、一気に頂点まで高まる。
「待て、待て! 殺す必要なんてないだろ! 今回のことは……俺たちのことは誰にも言わない! 見逃してくれ!」
必死の命乞い。俺は笑った。強姦し、奴隷として売り飛ばそうとした連中の言葉など、泥水以下の価値しかない。
「おいおい、俺の仲間をあんな目に遭わせようとした奴らの言葉を信じろと? ……寝言は寝て言え」
背後で、ドルダが愕然とした表情で俺たちの肩を掴んだ。
「おい、何をしている! 幾ら何でもやり過ぎだ! 旅人が冒険者を、それも『殲滅の旅団』を皆殺しにするなんて、獣人国全体を敵に回すことになるぞ! それは自殺行為だ!」
ドルダの言うことはもっともだ。
普通なら、恐れをなして逃げ出す場面だろう。
だが、俺たちの敵は、そんな常識の範疇にはいない。
「獣人国を敵に回す?」
俺は立ち上がり、辺りを見回した。ユキが白い吐息と共に妖艶に笑い、クーコが拳をバキバキと鳴らす。バズが冷徹な殺意を霧のように立ち昇らせ、ライヤが静かに獲物をロックオンする。
「違うな。獣人国側が、俺たちという『災害』を敵に回す……ということだ」
俺は地面に転がるロウガたちの喉元に、ゆっくりと足を近づけた。
「死の準備はできたか? 殲滅の旅団の皆様方」
俺の冷徹な宣告に、荒野の風が止まった。ドルダの悲鳴と、獣人たちの絶望的な叫びが、これから始まる虐殺の序曲として響き渡った。




