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復讐の異世界転生者 ~魔法適性ゼロの『魔抜け』、前世の知識と『気功』を極めて魔法至上主義を粉砕する~  作者: ボルトコボルト


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090 【獣人国への序曲】迷宮キャンプと深まる絆、食卓で語られる冒険者の狂気と復讐の足音

 ■迷宮の夜、暖かな食卓と冷ややかなる真実

 獣人国へと続く森は、陽が落ちるにつれてその表情を一変させた。木々の影は長く伸び、得体の知れない魔物たちの咆哮が遠くで響く。だが、俺たちにとってその脅威は「狩りの対象」でしかなかった。


「おらぁっ、次々と湧いてきやがって!」


 俺の横を駆け抜けるダルアの足技が、襲い来る大猪の頭蓋を粉砕する。その後方では、ペロが影の中からスッと現れては、倒れた魔物の素材を鮮やかに剥ぎ取り、再び影へと消えていく。


「大漁だにゃ。こいつは良い毛皮にゃ~!」


 ペロの影転移は、素材回収においてこれ以上ない効率を誇る。俺たちは足を止めることなく、森を切り拓くように進んでいった。


「そろそろ日も暮れるね。この辺りで野営にしようか?」

 俺がそう告げると、ダルアはパッと顔を輝かせた。


「賛成っしょ! ダル、お腹ペコペコだよー。美味しいもの食べたい!」


「アタシもお腹空いたにゃ。今夜の夕飯は何かにゃ?」


 ペロの影が揺れ、遠方にいたエリやハルカたちの影へと繋がる。


「ペロ、皆に野営するって伝えてきてくれ」


「分かったにゃ!」


 影の中へ溶け込んだペロが、遥か後方にいるライヤの背に跨がるエリの影からひょっこりと顔を出した。その報せを聞いて、エリたちがこちらへ速度を上げる。

 ハルカは既に待ちきれないといった様子で、キュルキュルと鳴る腹を押さえていた。


「野営……良いねぇ。僕、お腹ペコペコだよ。何でもいいから早く食べたいよ!」


 ドラゴンのドラムを停止させ、俺たちは一列に並ぶ。

 辺りはすっかり闇に包まれていた。かつてなら、焚き火を囲み、魔物の警戒に神経をすり減らす夜だっただろう。だが、今の俺たちには『あれ』がある。


「この辺りで良いな。……行くぞ」

 俺は魔力を練り上げ、大地に手をかざす。


迷宮ダンジョン創造クリエイト!」


 轟音と共に地面が隆起し、巨大な木のうろが出現した。それは外からはただの古木にしか見えないが、内部は高度な魔術構造によって守られた要塞そのもの。地下深くに広がる、俺たちだけの隠れ家だ。


 俺は迷宮の構造を設計する。侵入者を瞬殺する防衛機構を組み込んだ入り口。その先には、ドラガ、ドラム、バズ、クーコ、そしてライヤという最強の布陣が守る大部屋を配置。奥には男部屋、女子部屋、そして必要不可欠なダイニングキッチンと風呂場。計五つの部屋を作り上げた。


「これなら、誰にも邪魔されずゆっくり休めるのじゃ」

 エリが満足げに頷く。


 ハルカは迷うことなくキッチンへと直行し、エプロンを引っ掴む。

「今夜は私の特製料理だよ! 皆、期待しててね!」


「ダルも手伝うよー! 今日はガッツリ系でいくっしょ!」

 ダルアがハルカの後を追い、包丁の音と楽しげな笑い声がキッチンから漏れ聞こえてくる。


 一方、エリとペロは風呂場へと向かった。

「妾は一日の疲れを癒すとしようかの。ペロ、背中を流してやるのじゃ」

「やったにゃ! お願いするにゃ!」


 残されたダイニングには、俺とユキだけが取り残された。ふと、ユキの姿を見る。彼女は雪女だ。風呂に入ればどうなるのか……。


「わちき……お風呂には入るでありんすよ」

 ユキは俺の視線を感じ取ったのか、少しだけ頬を染めて答えた。


「ただ、わちきが入ると水風呂になってしまいんす。だから……皆が上がったあと、一番最後に入ることにしているでありんす」


 ああ、なるほど。彼女なりの気遣いか。俺は自分の失礼な視線を悔やみ、慌てて弁解する。


「ご、ごめん。そんなつもりで見てたわけじゃないんだ。雪女の性質上、温かいお風呂は大変かなと思って」


「……分かっておるでありんす。ショータの優しい心根は、わちきも知っているでありんすから」


 ユキはふわりと微笑むと、椅子に座って静かに待機を始めた。その姿のあまりの美しさに、俺は視線のやり場に困り、手元の水を煽るしかなかった。


 ■食事の席で語られる獣人国の「牙」


 食卓に料理が並ぶ。ハルカの作戦通り、テーブルの上には山盛りの肉料理と滋味あふれるスープが所狭しと並べられていた。温かい湯気と共に、食事の宴が始まる。だが、その和やかな空気の中でも、俺たちの意識は目的地である「獣人国」へと向いていた。


「……なぁ、ペロ。獣人国について何か知ってることあるか?」

 俺の問いに、ペロが肉を頬張りながら耳をぴくりと動かす。


「獣人国かニャ……。アタシも猫の王国から出たことが少ないから、詳しいことは分からないけど、凄まじい実力社会だって聞いたことがあるにゃ」


「そうじゃな。あそこは獣人が大多数を占める国。人間は非常に少ないのじゃ」

 エリが付け足すように言う。その表情は少しだけ厳しい。


「僕と同じハーピーも住んでいるし、いろんな亜人がいるよ。でも……もぐもぐ……やっぱり、一番の特徴は『実力至上主義』かな」

 ハルカは肉を飲み込む暇も惜しげに言葉を続ける。


「強い者が正義。弱い者は搾取される。冒険者ギルドが実質的に国を動かしているようなもので、ランクが高い奴らが幅を利かせているのじゃ」


「冒険者か……。一番厄介な相手だな」

 俺が呟くと、ダルアが不機嫌そうにフォークを置いた。


「今回の標的も、そのクソ冒険者たちだもんね。ハルカを罠に嵌めた奴ら……マジで許せないっしょ!」


「そうじゃな。高ランクの冒険者が、自分より弱い者を見下し、踏みにじることを何とも思っていない……そんな風潮が根付いている国なのじゃ」

 エリの言葉には、憤りが混ざっていた。


 かつてハルカを弄んだ連中。あいつらは、まさにその「獣人国」の強者としての特権を笠に着て生きているのだ。


「……牙を剥くなら、相応の覚悟が必要だ」


「我、敵ヲ認識セバ、即座ニ消去スル。」

 バズが静かに、しかし絶対的な殺意を口にする。


 ライヤもまた、獣人国の方向を見据え、鋭い眼光を放つ。

「敵、排除。断罪。」


 獣人国。そこには、俺たちの復讐を待ち受ける「強者」たちの傲慢な砦がある。だが、彼らはまだ知らない。自分たちが「弱い者」として弄んだハーピーが、今や最強の仲間たちと共に、その砦を根底から覆そうとしていることを。


「皆、明日は早い。英気を養っておけ」


 俺はそう言って、最後の一口を飲み込んだ。復讐の狼煙は、もうすぐ上がる。獣人国の冒険者たちに、俺たちが「本当の恐怖」というものを教えてやる番だ。


 明日の夜明けと共に、俺たちの牙が、奴らの喉元に突き刺さる。

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