089 【獣人国への復讐行】ハルカの決意と雪女の特攻服!血塗られた過去を断つ、激動の旅路が開幕!
■復讐の獣人国と、和装の雪女
妖精国という巨大な楔を打ち抜き、俺たちの復讐は新たなフェーズへと突入した。次なる目的地は「獣人国」。かつてハーピーのハルカを罠に嵌め、自由を奪った冒険者たちが巣食う場所だ。小人の情報屋モナジーからの言葉が、俺たちの背中を強く押していた。
「次は獣人国に行くよ。ハルカの復讐を果たすためだ」
地図を広げ、俺が宣言すると、エルフのエリが不敵に笑いながら横に並んだ。
「ハルカの復讐じゃな。あの忌々しい冒険者どもを、根こそぎ狩るのじゃ。我の魔法で灰すら残さぬよう、教育してやるから安心せよ」
俺は隣のハルカを窺う。彼女は拳を固く握りしめ、獣人国がある方角を見つめていた。その瞳には、空腹の時とは違う、鋭い決意が宿っている。
「……私の、奪われた空を取り戻す。今度こそ、あいつらに私の痛みを知ってもらうんだ」
ハルカに否はない。奴らは、翼をもがれた彼女を嘲笑い、鎖に繋いだのだ。そんな連中を、野放しにするわけにはいかない。
ダークエルフのダルアが、ハルカの華奢な肩に優しく手を置いた。
「ハルカ、マジでぶちかまそうっしょ! ウチらがついてるし、負ける気しないし!」
その時、影からひょっこりと黒猫のペロが顔を出した。
「ハルカの復讐も大事だけど、その前にユキの服はそのままで良いのかにゃ? その真っ白な格好、目立ちすぎるにゃー」
「あ……」
ペロの指摘通り、雪女のユキは、召喚された時のままの白い透き通るような白装束の和服を纏っていた。確かに神秘的だが、旅路においてはあまりに異質だ。
「わちきの服でありんすか? ……あちきには、これしかありんせんので」
ユキが首を傾げ、困ったように眉を下げる。彼女にとって、それは魂の一部のようなものなのだろう。
「確かに目立つかもね。でも、そもそも雪女って服を替えられるの?」
「服を替えることなど、考えたこともありんせん……」
すると、エリがふっと邪悪な笑みを浮かべ、アイテムバッグからガサゴソと何やら布の塊を取り出した。
「ふふん、妾のコレクションを見せてやるのじゃ。こういう時のために、面白そうな服を溜め込んでおるのじゃよ」
エリが放り投げた服を広げた瞬間、俺たちは言葉を失った。
……白地に黒い刺繍。硬派な、あまりに硬派な『特攻服』だった。なぜエルフがこんな暴走族のレディースのような服を持っているのか。その謎は、あえて追及しないのが賢明というものだ。女子のワードローブには、触れてはいけない領域がある。
「……これ、着るでありんすか?」
ユキが戸惑いながらも、俺の視線を感じて服を受け取る。彼女は俺たちに背を向けると、慣れない手つきで白装束を脱ぎ始めた。白い背中が露わになる。透き通るような肌は、冬の朝露のように儚い。小ぶりの胸と、華奢な肩のライン。
「あ……」
不意に見えてしまった全裸の姿に、俺は思わず凝視してしまった。彼女は下着すら着けていなかったのだ。
ペロが影からニヤニヤと覗いている。
「見たにゃ~! ショータ、顔が真っ赤だにゃ!」
「見ちゃったよ! いきなり脱ぎ始めるなんて聞いてないし、下着も付けてないなんて……!」
俺は慌てて後ろを向き、エリに助けを求めた。
「エリ! 頼む、下着も貸してやってくれ!」
「仕方ないのじゃ……全く、初々しいのぅ」
エリが苦笑しながら下着を差し出す。その横で、ハルカが服を脱ぐ真似をしながら俺に迫ってきた。
「ラッキーだね。私の裸も見る? 全然いいよ?」
「ダルも脱ぐよー! ショータ、ダルも見てほしいっしょ!」
「君達! 変な雰囲気にするんじゃない、止めなさい!」
俺がハルカとダルアの肩を押さえて止めていると、背後から「……お待たせしました」という声が聞こえた。振り返った瞬間、俺は息を呑んだ。
白い特攻服を羽織り、黒いブーツに白い革の指無し手袋を嵌めたユキ。雪のような肌と、硬派な装束の対比。それは、かつての儚い雪女とは全く別の、妖艶かつ危険な魅力を放っていた。
「可愛い子は何を着ても似合うね。……似合ってるよ、ユキ」
「そ、そんなことないでありんすぇ……」
ユキは頬を桜色に染め、俯いて恥ずかしがっている。破壊的な可愛さだった。
■風と影に紛れて
「さて、と。ユキは町ではこの姿で同行してもらう。問題は他の皆の移動だな」
俺は旅路のメンバーを見回した。
「バズ、お前は風になって、周囲の人間に認識されないように同行できるか?」
「可能デス。我ハ存在ヲ希薄ニシ、気配ヲ消ス」
魔神バズは黒い霧となって霧散し、エリの影に潜り込んだ。
「あとは町に近づいたら、ライヤは子犬サイズ、ドラムは小鳥サイズになればいいな。クーコも子犬サイズになれるかい?」
「我了承」
鵺のライヤは、ただ静かに頷き、その威容を子犬ほどまで縮小させた。
「承知した。」
ドラゴンのドラムも、羽を畳んで可愛らしい小鳥の姿へと変化する。
「大丈夫や。ウチもこれくらい朝飯前やで」
空狐のクーコも、ふわりと尻尾を振って、可愛らしい子犬の姿に。
「あとは……ユキ、これを持っていてくれ」
俺は『猫の穴』で手に入れた炎の魔剣をユキに渡した。
「雪女に炎の魔剣って、大丈夫でありんすか……?」
「お前の氷と、その魔剣の熱が混ざれば、誰も予測できない一撃になる。相性は抜群だ」
ユキは魔剣を握りしめ、小さく頷いた。
「準備はいいな。……獣人国まで、一気に飛ぶぞ」
ドラムとライヤが馬のサイズまで大きくなると、俺とダルアはドラムの背に跨る。ペロは影に入り、ユキは特攻服の襟を正して俺の背後に寄り添う。エリとハルカはライヤの背へ。クーコはライヤの頭の上で満足げに丸まった。
獣人国へ向かう空は、どこまでも澄み渡っていた。
だが、その先には復讐という名の嵐が待ち受けている。
「ショータ、見て! あの雲の向こうが獣人国の境界線だよ!」
ハルカが叫ぶ。彼女の目が、かつて翼を折られた屈辱を思い出し、ギラリと光った。獣人国。そこは力こそが全ての、野蛮にして強力な冒険者たちが集う場所。
「皆、覚悟はいいか?」
「我……準備完了。」
「ウチもいつでもええで!」
俺たちは空を切り裂き、獣人国の中心部へと加速した。ハルカを苦しめた冒険者たち、そして俺たちを実験材料にした黒幕への手がかり。そのすべてを、この手で暴き出してやる。
獣人国の門を潜れば、そこからは容赦のない狩りが始まる。
「ざまぁ」の舞台は整った。
俺たちの復讐劇、第2幕の開演だ。
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