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復讐の異世界転生者 ~魔法適性ゼロの『魔抜け』、前世の知識と『気功』を極めて魔法至上主義を粉砕する~  作者: ボルトコボルト


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083 【絶対零度の吹雪】妖精国を越えて、北の凍土で待ち受ける「凍てつく死神」の正体

 ■戦略的転換と慈悲の選択

 妖精たちの気絶を確認し、森に静寂が戻った。リーダー格の妖精から得た情報は、俺たちの冒険の指針を決定づけるものだった。北の都市には氷の精霊、そして妖精国西部の都市には炎の狐の精霊。


「エリ、次はどちらから攻略するのが得策だと思う?」


 俺の問いに、『疾風』の異名を持つエルフ、エリは迷わず即答した。彼女の瞳には、常に戦術的思考が宿っている。


「北に行ってから、西へ回るのが正解じゃな。最初に西へ向かえば妖精国の中心部を突っ切る必要があり、間違いなく面倒事に巻き込まれる。妖精国の外周を北回りで半周し、敵の勢力圏の端から削っていくのが、我らのような少数精鋭には適したルートじゃろう」


「なるほど、道理だな。そのルートで行こう」


 進路は決まった。しかし、問題は足元に転がる妖精たちだ。リーダーの男と、蝶の翅を持つ女妖精たち。このまま森に放置すれば、彼らは近隣の魔物たちの餌食になるだろう。俺たちが求めているのは無益な殺生ではない。


「妖精たちをこのままここに放置するわけにもいかないしな。連れて行くか」


 俺の言葉に、黒猫のケット・シーであり、闇魔法のスペシャリストでもあるペロが鋭い眼差しを向けた。


「そうだにゃ。このままじゃ確実に魔物の腹の中だにゃ」


 ペロが闇の触手を自在に操り、気絶した妖精たちを一纏めに拘束する。まるで熟練の職人のような手際だ。


「ドラム、俺たちと妖精を乗せられるか?」


 小鳥サイズだったドラゴン、ドラムが地面を力強く踏みしめると、瞬く間に象サイズへと巨大化した。その圧倒的な威容に、森の木々が風で揺れる。


「これぐらいの大きさで良いか?」


「ああ、頼む。助かるよ」


 俺とダルア、そしてペロがドラムの背に飛び乗る。エリは魔神パズズ――バズの背に跨がり、ハルカは子犬サイズから馬サイズに変化したヌエのライヤへと軽やかに騎乗した。


出発しゅっぱーつ!」


 ダルアが右拳を空へ突き上げる。その掛け声とともに、俺たちは冷気の漂い始めた北の荒野へと飛び出した。


 ■闇猫の潜入と、迫る凍てつく牙

 道中、ペロが機転を利かせた。

「近くに妖精の町があるにゃ。こいつらはそこに置いてくるにゃ」


 ペロは闇に身を隠し、気配を完全に遮断する。隠密と偵察において、彼女の右に出る者はいない。『闇猫』の二つ名は伊達ではない。数分後、何食わぬ顔で戻ってきた彼女は、重要な情報をもたらした。


「町の人間にこっそり情報を聞いてきたにゃ。氷の精霊はこの先の北の凍った都市に鎮座しているみたいだにゃ。間違いないよ」


「流石だ、ペロ。助かった」


「えへへ、照れるにゃ~」


 礼を言い、俺たちはさらに加速する。しかし、北へ近づくにつれ、空気は悲鳴を上げるほどに冷え込んでいった。ドラム、バズ、ライヤといった強力な精霊や魔獣たちは平然としているが、俺たちの周囲を取り巻く大気は、明らかに異常だ。


 ハルカは柔らかな羽毛を逆立てて寒さを凌ぎ、風魔法で雪を繊細に調整して肌に触れないようにしている。エリもまた、バズの纏わせた温かな風のヴェールの中に包まれていた。だが、俺とダルアは違う。ダルアが背中から抱きついてきて、小さく震える。


「寒いよー……」


 確かに、これはただの寒さではない。魔力を含んだ凍気が、身体の芯まで食い込もうとしている。俺は意識を集中し、体内を巡る「気」を全身へと循環させた。熱量を内部で回し、外部の冷気を中和する。


「ダル、気を全身に循環させてみな」


「うん……やってみる」


 ダルアが目を閉じ、集中する。数秒後、彼女の顔に赤みが戻った。


「あ、暖かくなってきたよ! これなら平気!」


 しかし、自然の暴力はそんな俺たちの努力をあざ笑うかのように急変した。空が暗転し、突如として激しい吹雪が視界を遮る。ホワイトアウト。数メートル先すら見えない、完全な雪の壁だ。


「バズ! 視界を確保だ!」


 バズが周囲の空気を振動させ、俺たちの周りだけを雪から守る空間を作り出す。だが、その結界の外から、何かがこちらをじっと見ているような、濃厚な殺気を感じた。


「来るぞ!」


 俺の警告と同時に、雪嵐が左右に引き裂かれる。

 ホワイトアウトの向こう側から、ゆらりと影が現れた。


 黒髪、和服。白装束を纏った女性。地面から数センチ宙に浮き、流れるように滑る動作で、音もなくこちらへ近づいてくる。その姿は、この世のものとは思えないほど美しく、そして――この上なく冷酷だった。


 彼女の周囲には、凍てつく死の静寂が満ちている。

 間違いなく、妖精国を恐怖に陥れている『氷の精霊』だ。吹雪が止むことはない。むしろ、彼女の出現によって、嵐はさらにその咆哮を強めた。


 俺たちは武器を構える。ここからが、本当の戦いだ。

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