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復讐の異世界転生者 ~魔法適性ゼロの『魔抜け』、前世の知識と『気功』を極めて魔法至上主義を粉砕する~  作者: ボルトコボルト


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065 【迷宮の主、覚醒】伝説の座に座せし魔抜けの王と、王都奪還へ向けた決戦の狼煙

 ■最深部の静寂と聖なる遺物

 迷宮『猫の穴』、地下100階。魔族マロンという最強の脅威を討ち果たしたことで、張り詰めていた空気が音を立てて崩れ去った。


 「主様……本当に、信じられないのじゃ……」

 エリが震える足取りで俺に駆け寄る。その瞳には、畏怖と安堵が入り混じった光が宿っていた。


「あの強大な魔力を誇った魔族を、一滴の血も流さずに葬り去るなんて。……あなたは本当に何者なのじゃ?」


 「怖かったよぉ……!」

 ハルカが涙目で俺の背中に飛びつき、ギュッと抱きしめる。その温もりが、戦いが終わったことを実感させる。ダルアもまた、安堵の表情でこちらへ歩み寄り、ドラムが空から舞い降りて、俺の肩をポンと叩いた。


 その時、ペロが部屋の隅にある台座を指差した。

「……やったぁ! 宝箱にゃ!」


 そこには、マロンの討伐報酬と思しき豪華な宝箱が鎮座していた。俺たちは即座に駆け寄る。蓋を開けると、そこには黄金に輝く液体が満たされた小瓶が入っていた。


 『神酒ソーマ』。

 鑑定のスキルが告げるその名は、伝説の霊薬そのものだった。


「……これは」

 生命力回復、魔力回復、状態異常解除、そして欠損再生。飲めば文字通り「何でも治る」奇跡の酒だ。ただ、死体から飲ませることはできないため、蘇生までは叶わないのが唯一の弱点か。


 俺は鑑定を終え、それを慎重にアイテムバッグへと仕舞い込んだ。エリとハルカの視線が、アイテムバッグに釘付けになっている。酒好きの彼女たちには、喉から手が出るほど魅力的な液体なのだろう。だが、今は飲み会をしている場合じゃない。


 俺たちは迷宮の先へと続く階段を降りた。そこにあったのは、これまでのような重厚な石造りの階層ではなかった。壁も天井も、床に至るまで全てが白亜に染まった、殺風景な小部屋。家具の一つもなく、ただ中央の台座に、メロンほどの大きさをした透明な玉が浮かんでいるだけだった。


 「……迷宮核ダンジョンコアか」

 思っていたよりも小さい。俺は迷宮の心臓部に触れた。瞬間、脳内に無数の知識と、世界を俯瞰するような感覚が奔流となって流れ込んできた。


 <マスターを登録しました>


 「えっ……!」

 頭の中に、迷宮の機能、構造、そして操作方法がインストールされていく。


 「主様! どうしたのじゃ!?」

 エリの声で、俺は我に返った。


「……ああ。どうやら、俺がこの『猫の穴』の迷宮管理者ダンジョンマスターになったみたいだ」


 「迷宮管理者……!?」

 エリの口から驚愕の声が漏れる。それは伝説上の存在だ。


 ■迷宮の支配者、新たなる力

 俺は左手に嵌めていた、愛用の黒いグローブを外した。


「……変形」

 言葉と共に、迷宮核ダンジョンコアは液体のように溶け出し、俺の左手を包み込んだ。


 馴染みの黒い指なしグローブへと姿を変えるが、拳の部分が、以前のシルバー(アダマンタイト)から、重厚な黒茶色へと変色している。


 「迷宮核をグローブにするなんて……主様、相変わらず斜め上を行くのじゃ」


「迷宮核は形状を自在に変えられる。質量保存の法則……いや、この世界にはDPダンジョンポイントという概念があるらしい。これを使えば大きさも重さも、質量さえも自由自在だ」


 「DP……?」


「魔法がMP、気功がHPなら、これは迷宮の活動エネルギーだ。迷宮の主である俺の権能そのものさ」


 俺は拳を握りしめる。迷宮の管理者となった今、俺は魔物たちの配置や階層の構造すらも、自分の意思一つで書き換えることができる。


 サイクロプスとリッチによるスタンピード。その惨状を頭の中に思い浮かべる。


 「……時間が惜しい。シャルさんやライガさんの言葉が頭をよぎる。猫の王国を見捨てるわけにはいかない」

 俺はパーティの面々を見渡した。


 「国がなくなるのは寂しいにゃ。ショータ、助けたいにゃ」

 ペロが俺の目を見て、まっすぐに言った。その瞳に迷いはない。


 「……分かった。助けよう」


 「でもショータ、あんたが管理者なら、命令一つでサイクロプスやリッチを止めればいいんじゃないの?」

 ダルアが首を傾げる。


 「それができないんだ。奴らに大量の魔物を放出した際、魔物の制御を切り離した。単純な『王国を襲撃しろ』という命令だけを与えてね。今さら管理者権限で止めようとしても、奴らの暴走は止まらない。直接行って、叩き潰すしかないんだよ」


 「結局、力押しってことね!」

 ハルカが楽しそうに武器を構える。


 俺はグローブの拳を合わせた。

「ああ。管理者ダンジョンマスターとしての初仕事が、王都の救出劇だ。……行くぞ、皆! 猫の王国を蹂躙する愚か者たちに、俺たちの力を思い知らせてやる!」


 俺たちの背後に、帰還のゲートが開く。迷宮の奥底で、俺たちは単なる冒険者から、運命を変える支配者へとその身を変えた。

 王都の空に、今、逆襲の狼煙が上がる。

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