063 【竜の弾丸】迷宮最速走破!激震の二時間、そして深淵で待ち受ける魔族の恐怖
■龍の背、深淵への弾丸
魔族マロンが迷宮『猫の穴』へと逃げ込んだ。その情報を聞いた瞬間、俺たちの心に迷いはなかった。復讐の火種をこれ以上放置するわけにはいかない。
俺のパーティは、今や6名の大所帯だ。
俺、ショータ(人間・気功使い)。
『闇猫』の系譜を継ぐケット・シー、ペロ。
冷徹なる魔導の天才、エルフのエリ。
風を纏うハーピー、ハルカ。
そして、かつての封印から解き放たれしドラゴン、ドラム。
最後に、ダークエルフの転生者、ダルア。
最速で最下層へ到達する。そのために俺が選んだ手段は、ドラムの背に乗ることだった。ペロは俺の影の中へ潜り込み、俺とエリ、ハルカ、そしてダルアがドラムの強靭な背に乗る。
「……皆、振り落とされるなよ。絶対に」
俺が合図を送ると、ドラムの身体が膨張し、広大な迷宮の通路を埋め尽くすほどの巨体へと変貌を遂げた。
「行くぞ!」
ドラムが地面を蹴る。次の瞬間、俺たちの視界は猛烈な勢いで後方へ流れた。
ドラムの突進は、もはや生物の動きではない。巨大な鋼鉄の砲弾が迷宮という狭い管の中を撃ち抜いていくようなものだ。直角の曲がり角さえ、壁を前足で掴み、強烈なGをかけながらドリフトのように駆け抜ける。
「ひぃぃぃっ! 曲がる、曲がるよぉーっ!」
ダルアが悲鳴を上げ、ハルカが必死に翼でバランスを取る。
あまりの乱暴な飛行に、最後尾に乗っていたダルアの胃が限界を迎えたらしい。後方に散る『何か』が見えたが、今は見て見ぬふりをするしかなかった。
エリが慌てて「精神安定の魔法」を全員に展開する。これで乗り物酔い対策は万全だが、それでもこの『曲芸飛行』は狂気の沙汰だ。
俺はペロに頼み、影から出した「闇の触手」を全員の体に巻きつけ、強引に固定した。これでもう振り落とされることはない。
■ボウリングのストライク、命を狩る竜
迷宮のボス部屋。そこは本来、慎重に戦略を練って挑む場所だ。だが、ドラムにとってはただの『ボウリングのレーン』でしかなかった。5階層、ゴブリンの群れ。ドラムは一切減速することなく、その巨体を突撃させた。
――ドォォン!
悲鳴すら上げさせず、ゴブリンたちは壁のシミとなって消えた。ストライク。
10階層、コボルト。これも体当たりで粉砕。ダブル。
15階層、スケルトン。容赦ない体当たりでターキー。
ドラムの体当たりは、もはや暴力的なまでの破壊力だった。20階層のヘルハウンドには、敢えてブレスを放つ。高熱の炎が通路を埋め尽くし、敵を炭に変えた。
25階から45階に至るまで、オーク、サテュロス、マミー、ガーゴイル、リビングアーマー。ドラムの体当たり、ブレス、そして時折放つ爪撃。それら全てが『即死』を意味した。
50階から60階のオーガ、ウエアウルフ、ミノタウロスに至っては、ドラムのブレス一閃で灰になる。
そして65階、トロル。再生能力を持つトロルに対し、ドラムは下した。「咀嚼」という物理的消去を。丸呑みにされたトロルは、その再生の暇すら与えられず闇へと消えた。
70階のゴーゴン、75階のアラクネ、80階のスキュラも同様に、ドラムの胃袋へと消えていく。
「おいドラム、そろそろお腹いっぱいか?」
俺が尋ねると、ドラムは悠然と答えた。
「ふん、この程度の雑魚、あと100匹は食えるぞ」
ドラゴンというのは、どこまで燃費の悪い胃袋をしているのか。
85階のデュラハーンには、流石に食べるのを拒否し、ブレスで焼き払う。
90階のボス、サイクロプス。これもブレスでは死なない硬度を持つ。ドラムは体当たりで地面に押さえつけ、逃げ場を奪う。俺はその隙を見逃さない。サイクロプスの巨体に掌を当て、『生命力吸収』を発動。その巨体から一気に生命力を抜き取り、枯れ木のように干からびさせた。
迷宮突入から、わずか2時間。俺たちは95階のボス部屋の前に立っていた。全速力で駆け抜けたとはいえ、この速度は異常だ。全員が興奮と疲労で息を弾ませている。
95階のボスは、アンデットの王『リッチ』。
「不用意に飛び込むな!」
俺の指示に皆が頷く。エリが結界の盾を展開し、リッチの放つ魔法を完璧に防ぐ。その隙を突き、俺は『気』を極限まで練り込み、足音も気配も完全に消して死角へと回り込んだ。
リッチが詠唱を終える一瞬の隙。俺の手がリッチの頭蓋骨に触れる。
「……終わりだ」
『生命力吸収』。
リッチの魂は悲鳴を上げる間もなく、俺の体内で塵と化した。
■100階、深淵の扉
そして、俺たちはついに100階――最深部への扉の前に立っていた。
「エリ……前回は入口まで転移させられた。今回、もしボス部屋の中で同じことが起きたら……」
俺の不安に、エリは鋭い眼光で答えた。
「その心配は無用じゃ。今回は『魔法阻害』の術式をボス部屋全体に展開しながら突入する。魔力の転移などさせはせぬ」
「頼んだぞ」
ハルカが緊張からか、唇を舐めた。「ねぇ、次こそはドラゴンっぽい敵が出てきてほしいな。食べたい……」
そんな余裕を見せるハルカに苦笑しつつ、俺は最後尾のドラムを振り返った。
「ドラム、魔力探知を頼む」
ドラムが巨大な角をピクリと動かし、探知を全開にする。次の瞬間、俺たち全員の背筋が凍りついた。
「……ッ!!」
エリが驚愕し、血の気を失ったように青ざめる。
「な、なんじゃこれは……!? この濃密な魔力……! ドラゴンであるドラム以上の魔力じゃ……!」
ドラムの瞳が恐怖に収縮する。
「あ……ああ……。こいつだ。儂を封印し、迷宮の奥底に繋ぎ止めた張本人は……ッ!」
ハルカが翼を震わせ、後ずさりする。
「嘘でしょ……このプレッシャー。近づくだけで、息ができない……」
扉の向こう側から漏れ出る、禍々しくも静かな威圧感。魔族マロン。奴は、ただの魔族ではなかった。俺たちがこれまで対峙してきた何者とも比較にならない、深淵そのものがそこにいた。
扉が、ゆっくりと音を立てて開こうとしている。俺たちの、本当の戦いが今、始まろうとしていた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマークをしていただいた方、
評価ポイントを登録していただいた方、
ありがとうございました!
まだ『ブックマークの登録』、
『評価の登録』をしていない方、
気が向いたら登録していただくと
励みになります。
評価の登録をしていただける方は
下段ポイント評価を選択後、
ポイントを選んで
「評価する」ボタンを
押してください。
宜しくお願い致します。




