041 【迷宮開拓】鉄板の上の革命と、75階を覆い尽くす蜘蛛の巣の殲滅戦
迷宮『猫の穴』地下71階。
俺たちはゴーゴンとラミアを葬り去り、その死骸をアイテムバッグに詰め込んだ後、その場で野営を張ることにした。
夕食の準備をハルカに頼むと、彼女は目を輝かせて俺に詰め寄る。
「主様、今夜のメニューはどうする? 僕、なんでも作れるよ!」
俺はニヤリと笑い、とっておきのレシピを提示した。
「……お好み焼き、にしないか?」
「オコノミヤキ……? 聞き慣れない料理だね」
紅ショウガや鰹節、青のりといった日本のお供はないが、現地調達した食材で再現は可能だ。大猪のバラ肉、キャベツもどき、ステュムパリデスの卵、ガラスープ、長芋、ソース、そしてマヨネーズ。これだけあれば十分すぎるほど美味いものができる。
ハルカが慣れた手つきでキャベツを刻み、長芋をすりおろす。生地にガラスープと卵を混ぜ合わせ、鉄板が熱せられたコンロの上で焼く。
ジューッ! という食欲をそそる音が響き渡り、大猪の肉から溶け出した脂が生地を香ばしく揚げていく。最後にたっぷりとソースとマヨネーズをかければ完成だ。
「……何これ、最高に美味しい!」
「こんな料理、冒険者の常識が吹き飛ぶにゃ!」
皆、夢中になって鉄板に向かった。おかわり自由の焼きたてお好み焼き。ハルカが次々と生地を焼くたびに、それが瞬く間に皿から消えていく。
「いやぁ、食べ過ぎた。これ、屋台で売ったら行列ができるね」
「まったくだにゃ。迷宮でこんな贅沢ができるなんて信じられない」
満腹感に包まれながら、俺とハルカは明日の朝食の相談を始めた。
「明日はハンバーガーにしよう。大猪とミノタウロスの肉を混ぜてパティを作る」
「ハンバーガー! それも楽しみだね。見張りの間に仕込みを済ませておくよ」
その夜、交代で見張りを立てつつ、俺はコツコツと『牙弾』を製作した。エリはゴーゴンとラミアの素材から『石化防止の魔道具』を、トロルの素材からは『上級回復薬』を錬成している。
俺たちが休息している間も、パーティの戦力は着実に底上げされていく。この安定感こそ、深層攻略の要だ。
◇◇
翌朝、ハンバーガーの朝食も大好評のうちに終え、いよいよ攻略再開だ。
エリから受け取った『石化防止の魔道具』を全員が身につける。これで71階から続くゴーゴンやラミアの魔眼にも怯える必要はない。
「よし、行こう。素材の質を落とさないよう、極力傷つけずに倒すぞ」
俺とペロを先頭に、71階から75階へ侵攻する。
かつて多くの冒険者を石像に変えてきたゴーゴンたちだが、今の俺たちにはただの「歩く錬金素材」でしかない。エリとハルカの連携で足を止め、俺とペロが急所を外して一撃で仕留める。
素材の回収も完璧。ペロの『影収納』のおかげで、アイテムバッグを圧迫することなく、次から次へと深層の宝を収集していく。
◇◇
そして、75階のボス部屋の前。気配探知を放つと、部屋の中に異常な数の生命反応が渦巻いていた。
「……アラクネが一匹。そして、キラースパイダーが……数百匹はいるな」
部屋に入った瞬間、そこはまさに地獄絵図だった。天井や壁を埋め尽くす黒褐色の毛並みを持つ蜘蛛の群れ。その中心で、異様な存在感を放つ『アラクネ』が鎮座している。
上半身は冷酷な美女だが、下半身は巨大な蜘蛛。鋭い鎌状の鋏角を鳴らし、八つの眼が俺たちを捉える。その周囲を取り囲むキラースパイダーたちは、毛ガニほどの大きさで、鋭い爪をカチカチと打ち鳴らしていた。
「蜘蛛の皮や爪は素材として優秀。糸も取れるから全部回収するのじゃ!」
「それに、キラースパイダーは甲殻類みたいで美味しいんだよね!」
相変わらずの食い意地だな、と苦笑しつつ、俺は一歩前に出る。
「全員、下がってろ。ここは俺一人で終わらせる」
部屋に入ると同時に、気の力を一気に解放する。
――『生命力吸収』全方位放出。
部屋全体を覆う不可視の霧のような魔力が、数百匹のキラースパイダーを飲み込む。
キィィィィィィィッ!
悲鳴すら上げることなく、小さな蜘蛛たちは枯れ葉のように次々とその場に崩れ落ちた。一瞬で、床を埋め尽くしていたスパイダーの群れが全滅する。
「なっ……!?」
アラクネが驚愕に目を見開いたその隙に、ペロが影移動で彼女の背後へ急襲。
「逃がさないにゃ!」
闇の触手がアラクネの八本の足を地面に縫い付ける。動けなくなったアラクネの頭上へ、俺は音もなく飛び込んだ。
「チェックメイトだ」
彼女の額に掌を当て、全力の『生命力吸収』を叩き込む。
「グッ……アァァァァァッ!」
抵抗する間もなかった。その肉体から急速に活力が奪われ、アラクネの美しい肢体は力を失い、崩れ落ちた。
数百匹のキラースパイダーとアラクネ。その全滅に要した時間は、わずか数十秒。
「……終わったぞ。全部回収してくれ」
エリが呆気にとられながらも、慌てて回収作業を始める。
「相変わらずの蹂躙劇じゃ……。素材も傷一つない完璧な状態。……ショータ、貴方は一体、どこまで強くなるつもりなのじゃ?」
俺は肩をすくめて次の扉へ向かう。
「迷宮の果てまで、だ。さあ、76階へ行こうか」
俺たちの快進撃は、まだ止まらない。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマークをしていただいた方、
評価ポイントを登録していただいた方、
ありがとうございました!
まだ『ブックマークの登録』、
『評価の登録』をしていない方、
気が向いたら登録していただくと
励みになります。
評価の登録をしていただける方は
下段ポイント評価を選択後、
ポイントを選んで
「評価する」ボタンを
押してください。
宜しくお願い致します。




