004 『捕食者への覚醒』~生命を吸い、弾丸を放つ。気功をハックした俺は、森の支配者になる~
先ほど放った気功砲の反動で、全身の力が抜けていく。
立っているのもやっとだ。周囲の草花から「気」を集めようと再び両手を掲げた。
だが、今回は何かが違う。
周囲に漂うエネルギーが微弱で、吸い上げようとすると抵抗がある。
俺は意識を強制的に押し込み、周囲の自然から強引に「生命力」をねじ伏せて奪い取った。
「っ……!」
集まった気が体内に駆け巡る。疲労は瞬時に消え去った。
だが、視界の端でギョッとする光景が目に入る。
さっきまで瑞々しかった足元の草花が、まるで何十年も経過したかのように、茶色く変色し、脆く崩れ去っていた。
「……生命力吸収か」
背筋に冷たいものが走る。ただの気功ではない。この力は、生きとし生けるものの根源を奪う、禁忌に近い術かもしれない。
……だが、使える。この理不尽な世界を生き抜くための、最凶のカードだ。
(さて、エネルギー問題は解決した。次は『攻撃の最適化』だ)
気功砲は強力だが、燃費が悪すぎる。もっと少ないリソースで、高いDPS(時間あたりダメージ)を出せる攻撃方法が必要だ。
前世の記憶を脳内で検索する。……指弾。指の力で小さな硬貨を銃弾に変える、某格闘漫画の技術を思い出す。
「これならいける」
足元に転がっていたドングリを拾い上げる。
人差し指と親指にだけ、集中的に気を練り込む。ドングリの表面を膜のように気が覆う。
俺はそれを、弾くように放った。
「――ッ!」
ドングリは目に見えない速度で空を切り、数十メートル先の太い木に「ズォンッ」という鈍い音を立ててめり込んだ。
突き刺さった先からは、木屑がパラパラと落ちている。
「……すごいな。消費エネルギーは皆無に等しい」
指先は全く疲れていない。俺はニヤリと笑い、ポケットにドングリを詰め込んだ。
これこそが、俺の新しい「銃」だ。
警戒しながら森を進む。
気配探知の感度が上がってきた。左後方、茂みの向こうに3つの「殺意」を感じる。
ゴブリンだ。
(さっきの奴らか? いや、別の群れだな。……いい的だ)
俺は音もなく木々の影を縫い、距離を詰める。
奴らは無防備に、棍棒や錆びたナイフを手に徘徊している。
俺は呼吸を整え、ポケットからドングリを一枚取り出した。
「まずは一番デカい奴からだ」
指に気を集中させる。
精神を研ぎ澄まし、奴の眉間を捉える。
――発射。
「ッ!」
パァン! と乾いた音とともに、ドングリがゴブリンの額を貫通した。
奴は悲鳴を上げる間もなく、泥人形のように崩れ落ちる。
「ギィッ!? ガァッ!?」
残る2匹がパニックに陥り、周囲をキョロキョロと見回す。
だが、奴らの視界に俺は映らない。
二の矢、三の矢。
俺の指先から放たれるドングリが、次々と奴らの急所を正確に射抜く。
絶命の気配。頭の中に無機質な通知が響く。
『レベルアップしました』
「よし……」
死骸に歩み寄る。かつては恐怖の対象だったゴブリンも、今やただの「素材」だ。
錆びたナイフで胸部を切り裂き、小さな魔石を取り出す。
血を腰巻で拭い取り、淡々とポケットへ。
ふと、自分の拳を見る。
木を叩いてみたらどうなるだろう。近くにあった直径20センチほどの木に向かって、右手に気を込めて拳を叩きつけた。
メキメキメキッ!!
木は悲鳴のような音を上げて、呆気なくへし折れた。
……今まで、どんなに殴っても傷一つ付かなかった俺の拳が。
「無双……いや、これは『支配』か」
俺は自分の拳を見つめ、高揚感を隠せなかった。
魔法が使えない? だったら魔法なんて不要な次元まで強くなればいい。
足の裏に気を流し込む。
地面を蹴ると、身体が羽のように軽くなった。
気配探知と身体強化を同時に発動しながら、俺は川を目指す。
魔物を狩り、魔石を集め、俺という存在のスペックを極限まで更新し続ける。
「待ってろよ、孤児院のクズ共。お前等の特権階級なんて、俺の拳ですべて粉砕してやる」
俺の異世界での成り上がりは、まだ始まったばかりだ。




