030 『救国の英雄と、爛れた腐敗』~猫の王国の歴史に隠された真実。魔王と勇者が織りなす世界の理を学ぶ。~
迷宮の深淵で耳にした衝撃の真実。
ペロの父の死が単なる私怨ではなく、国を揺るがす「救国の英雄」の末裔たちによる汚職であったという事実に、俺たちは言葉を失った。
ニャルマル商会に向かう道すがら、俺は溜息をついた。
「……またシャルさんに頼るのか。貸しばかりが増えていくな」
これでは、いつか商会に身ぐるみ剥がされるまで協力させられそうだ。ドカンと借りを返す方法を考えないと、割に合わない。
ふと、ペロの父の名、『闇猫』について気になったことを尋ねてみる。
「ペロ、さっきから『闇猫』とか『土猫』とか、二つ名ばかり出てくるが……猫の王国ではそんなに有名なものなのか?」
ペロは呆れたように俺を見た。
「えっ! ショータ、まさか『救国の七猫』を知らないのかにゃ?」
「……初耳だ。なんだそれは?」
ペロは少し呆れつつも、誇らしげに語り始めた。
それは遠い昔、魔王の脅威から猫の王国を救った、7人の大魔法使いの英雄たちの伝説だった。彼らの末裔は、その二つ名を世襲しているという。
救国の七猫とその末裔
光猫: 国王。白毛のペルシャ。
土猫: 騎士隊長。茶毛のアビシニアン。
水猫: ギルド長。青毛のシャルトリュー。
炎猫: 『極炎の宴』リーダー。赤毛のソマリ。
闇猫: ペロの父。黒毛のボンベイ。
風猫: 宰相。銀毛のコラット。
雷猫: 行方知れず。シャム猫。
「……なるほど。ペロの父さんはそんな偉大な英雄の末裔だったのか」
「そうにゃ。自慢の父さんだったにゃ」
ペロの瞳に、寂しさと誇りが混じる。
「いずれはアタシが『闇猫』の名を継ぎたいにゃ。ショータとレベ上げして、父さんに恥じない力をつけるつもりだにゃ」
「ああ、一緒に強くなろう」
会話の途中で、ふとこの世界の本質的な「脅威」に思い至る。
「そういえば、この世界には魔王がいるんだよな。今でも健在なのか?」
質問に答えたのは、エルフのエリだった。
「魔王は今も健在じゃ。北方の魔族の国を治め、人間の国と終わりのない戦争を続けておる。それを防いでいるのが、異世界からの『転移者』である勇者たちじゃよ」
「……勇者?」
「転移者は『ギフト』という特別な力を授かってやってくる。転生者であるショータとは、少し仕組みが違うようじゃな」
俺は胸中で深く納得した。
(なるほどな。俺は特別な『勇者』じゃない。ただの転生者だ)
王道ラノベの主人公のような「勇者」の枠組みからは外れているらしい。これは好都合だ。
魔王だの勇者だの、大層な争いに巻き込まれるのは復讐の邪魔でしかない。影から粛々と、俺たちを陥れた連中を排除していく。それこそが、俺たち四人に相応しい復讐劇だ。
「まずはシャルさんから、今の『極炎の宴』の動向を探り出そう。奴らの尻尾を掴むためにな」
俺たちはニャルマル商会の門を叩いた。
英雄の末裔という権力者たちに、底辺の『魔抜け』が挑む。
その結末がどうなろうと、俺はもう止まらない。
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