029 『暴かれた真実と、復讐の誓い』~王家が仕組んだ虐殺の宴。俺たちは国を敵に回してでも、彼女の涙を拭う。~
探索者が、震える声で語り始めた事実はあまりに衝撃的だった。
「……Cランクパーティ『極炎の宴』のメンバーから直接聞いた話だ。『闇猫』は……国王にとって不都合な秘密を知ったらしい。その口封じのために、王国騎士隊長『土猫』と冒険者ギルド長『水猫』が、『極炎の宴』のリーダー『炎猫』に殺害を依頼したんだ」
「国王の……命令……?」
ペロの瞳から光が消える。
「そうだ。村を襲ったのはゴブリンの群れだが、それは人為的に誘導されたものだ。逃げ場を失った村を焼き払い、生存者が出たとしても、討伐の名目で駆けつけた王国騎士隊が抹殺する手筈だったと……」
「父さんと母さんと、村のみんなを……王様が……!?」
俺は怒りのあまり、抑え込んでいた『気』を放出してしまった。小部屋全体が圧迫感に包まれ、探索者の男は呼吸すらままならず、ガクガクと震え出す。
「主様、やりすぎじゃ。これでは何も聞き出せん」
エリの冷静な指摘で、俺は威圧を止めた。男は大きく息を吸い込み、ヒューヒューと喉を鳴らした。
「そ、その……『極炎の宴』にいる探索者は、俺の兄なんです……。どうか、もし復讐するにしても、兄だけは見逃してくれないか……」
「……おい。ペロは両親を奪われてるんだぞ。その命乞いを聞く義理があるのか?」
俺が冷たく突き放すと、男は顔面蒼白になった。
ペロはゆっくりと顔を上げ、低い声で言った。
「……約束はできないけど、考慮はするにゃ」
「……ここで『考慮しない』と言えば、俺たちの情報をすぐさま『極炎の宴』に流すだろう。そうなれば、此奴らをここで殺すしかなくなるのじゃ」
エリの言葉は残酷な正論だった。俺は男たちを見据える。
「……良し。今回のことは特別に見逃してやる。だが、この迷宮での出来事は他言無用だ。誰にも言うな。例え親兄弟にもな」
冒険者たちは、命拾いしたことに涙を流しながら部屋から逃げ出した。
彼らがいなくなると、俺は静かにエリに問いかけた。
「エリ、まずは裏を取りたい。何か手立てはあるか?」
「情報屋じゃな。この王都で一番の凄腕なら、金さえ積めば真実を暴けるはずじゃ」
「さすがだな。『疾風』の異名は伊達じゃない」
「……その二つ名で呼ぶのはやめてくれと言ったじゃろ。エリと呼べと言っておる」
「分かった、分かったよ。じゃあ俺のことも『ショータ』で頼む」
「それは断固拒否するのじゃ」
なぜそこだけ頑固なのか。俺は苦笑しつつ、ペロに向き直った。
「ペロ。この件は裏を取ってから動く。当然、全員で全力でお前の力になる。ちょっと待ってくれ」
「……うん。ありがとうにゃ」
ペロは俺の胸に飛び込み、激しく泣き崩れた。俺は彼女の背中に手を回し、そっと抱きしめる。
もしこの探索者の話が事実なら、相手は国そのものだ。だが、それでも構わない。俺の『気』が許す限り、この国の支配層だろうが何だろうが、踏み潰してやる。
俺の肩越しに、エリとハルカが何とも言えないジト目でその光景を見ていたが、今は無視することにした。今は、この泣いている少女の復讐が最優先だ。
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