027 『迷宮の暗闇に咲く、傲慢な火花』~無知な猫たちが牙を剥く。主を侮った報いは、静かな痛みと共に。~
10/23 07:00 誤字修正しました。
迷宮『猫の穴』。湿った空気が漂う通路を、俺たちは静かに進んでいた。
先頭を行く俺は気配探知で周囲を警戒し、横にはBランク冒険者であるエルフのエリが並ぶ。罠の感知にかけては彼女の右に出る者はいない。
背後には影移動で神出鬼没のペロ、そして後衛には風魔法使いのハルカが控えていた。
「……後ろから、さっきの『闇の調べ』の連中がついてきている」
俺の報告に、パーティの空気が一変した。
「……待ち伏せして、始末してやるのじゃ」
エリが冷ややかな殺気を放つ。ペロもその言葉に同意するように目を細め、ハルカは嫌悪感を隠そうともしない。
「ううん。迷宮の入り口で見られた以上、ここで殺すと真っ先に俺たちが疑われる。……脅す程度に留めておくよ」
「主様は優しいのじゃ……」
「僕も……あんな奴ら、近づかれるだけで吐き気がするよ」
俺たちは足跡を辿らせるまま、迷宮内の小部屋へと誘い込んだ。
獲物が罠にかかるのを待つように立ち止まると、予想通り6人の冒険者がぞろぞろと部屋に雪崩れ込んでくる。
キジトラの剣士、マンチカンの斧使い、ロシアンブルーの魔法使い、ラグドールの回復師、スフィンクスの弓使い、そしてベンガルの探索者。
……全員、猫の獣人か。なるほど、この迷宮にふさわしいメンツだ。
剣士が俺の顔を認めると、せせら笑った。
「おっ、魔抜けが自分から場所を選んだか? 良いねぇ。女たちに用があるんだ。冒険者を舐めたツケを払ってもらおうか」
「詫びをいれて今晩付き合うなら、命までは取らねぇぞ」
斧使いが下卑た笑いを浮かべ、斧の刃を俺たちに向ける。
俺はため息をつき、指を弾いた。
『指弾』――俺の『気』が放つ不可視の弾丸が、斧使いの右手を正確に弾く。
「つぅ!? な、貴様……!」
斧が床に転がり、斧使いが右手を抱えて悶絶する。
隣の剣士が怒りに顔を歪め、剣に手をかけようとした刹那。
『――ッ』
再びの『指弾』。剣士の右手からも、柄を握る力があっさりと消え去った。
「くっ……何だ、急に右手が動かなくな……!」
「お前たちに、剣や斧を振るう資格はない。黙って帰りな」
俺の言葉に、彼らは恐怖より先に怒りを爆発させたようだ。
異変を察知した魔法使いが、杖をこちらに突きつける。
「舐めるな魔抜けぇええ! この火の熱さ、地獄で味わえ! 『火弾』!」
放たれた灼熱の火球が、俺の直撃コースをなぞる。
同時にスフィンクスの弓使いが、番えた矢の先を俺の喉元へ狙い定めた。
「魔抜けがぁああ! これを喰らえ!」
迷宮の暗闇に、魔法の光と殺意が交錯する。
彼らは知らない。自分たちが、死神の爪の中に飛び込んできたことに。
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