025 『共有された憎しみ、芽生えた絆』~主従という名の下に誓う、裏切り者たちへの復讐劇。~
門から入口まで馬車で移動するなんて、森の住人であるエリとハルカにとっては理解不能な世界だったようだ。
「どんな宿じゃ……今まで聞いたこともないのじゃ……」
二人は豪華すぎる施設に完全に圧倒されていた。
夕食のテーブルで、二人は頑なに「奴隷である自分たちが同席するなど」と固辞したが、俺が「仲間だ」と説得すると、最終的に「主従の関係としてなら」という折衷案で落ち着いた。形式がどうあれ、こうしてテーブルを囲んで温かい食事を共にできることが、何よりも嬉しい。
入浴を終え、リビングで寛ぐ頃には、少しだけ二人の表情にもリラックスした空気が漂っていた。俺はここで、彼女たちに自分の過去を隠さず話すことにした。
「……俺は、この世界に転生した『異世界人』だ。村では魔法が使えない『魔抜け』として虐げられ、あまつさえ殺されかけた」
二人は息を呑んだ。
「魔抜け……? ですが主様は、失われた四肢を再生させるほどの力を持っているのじゃ?」
エリが不思議そうに問う。
「俺の力は魔法じゃない。魔法至上主義のこの国では、理解されない類のものだ。だからこそ、この歪んだ社会を……そして俺を殺そうとした奴らに、復讐したいんだ」
俺の決意を聞き、三人は顔を見合わせた。
エリはニヤリと不敵に笑う。
「……神の使いではなかろうとも、主様のなされることこそが正義。不敬な輩には、私たちが鉄槌を下しましょう」
「僕も、主様の敵は許さない。……僕たちは、誰よりも主様の復讐に協力するよ」
ハルカの言葉には、迷いがなかった。
「アタシも勿論。ショータの復讐は、アタシの復讐でもあるにゃ」
その場で、名前についての小さな議論が起きた。
「主様」と呼ぶことに固執する二人に、折衷案を出す。
「外では『ショータ』。二人っきりの時や、こうして屋敷にいる時は好きに呼んでくれ」
彼女たちは嬉しそうに頷いた。
そして、話題は彼女たちの過去へと移る。
エリとハルカが奴隷に堕ちた理由。それは単なる運の悪さではなかった。
「……私はかつて、Bランク冒険者『疾風』と呼ばれていた。だが、同じパーティーの同性冒険者に嫉妬され……嵌められたのじゃ」
「僕も……『風刃』としてBランク昇格間近だった。でも、仲間だと思っていた奴らに裏切られて……」
彼女たちの語る内容は、あまりに惨いものだった。
嫉妬、保身、裏切り。冒険者という名の光の裏側にある、どす黒い悪意。
「……分かった。お前たちが受けた屈辱、俺が必ず晴らしてやる」
俺はグラスを傾け、彼女たちと誓い合った。
かつて村で、そしてパーティーで、どん底へ突き落とされた俺たち。
迷宮でレベリングを積み、力をつけたその先には、僕たちを捨てた者たちへの「復讐」が待っている。
「まずは、迷宮で徹底的に強くなるぞ。準備はいいか?」
「御意のままに」
「任せてよ!」
「もちろんにゃ!」
この夜から、俺たちの本当の物語が動き出した。
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