024 『失われた翼と足の再生』~ゴブリンの村を糧に、壊れた相棒たちは再び空と大地を取り戻す。~
王都の喧騒を離れ、俺たちは森へと入った。
ペロは俺の影に溶け込み、姿を消す。ハルカは両翼を失った背中を見せながら、両手両足を欠損したエリを背負って歩いていた。
彼女たちの無残な姿を、俺は『気』の力で変えるつもりだ。
「ハルカ、エリ。これからゴブリンの集落を壊滅させる。その過程で出る生命力を吸い上げ、お前たちの失われた部位を再生する」
「……よく分からぬが、主様の仰る通りにするのじゃ」
エリが初めて口を開いた。予想外の古風な――いわゆる『のじゃ』口調。鑑定によれば彼女は200歳を超えている。この老成した雰囲気も納得だ。
一方、ハルカは不安げに俺を見つめている。
「……僕の翼も、本当に治るの?」
「ああ。約束する」
気配検知を広げると、3キロ先に約100匹のゴブリンの群れを捉えた。
俺たちは迷わず集落へと踏み込む。
ゴブリンの斥候がこちらに気づき、叫び声を上げた。だが、俺はハルカの背中のエリに手を触れ、歩みを止めない。
『生命力吸収』。
集落から湧き出すゴブリンたちが、俺に触れることさえ叶わず、次々と枯れ木のように倒れていく。吸収した『気』を、エリの欠損した手足へと流し込む。
「……!」
ハルカが目を見開く。エリの足先が、細胞レベルで再構築され、肉と骨が形成されていく。
「主様の……力……」
エリは再生したばかりの足で大地を踏みしめ、俺を陶酔にも似た崇拝の眼差しで見つめた。
俺はさらに進む。次々と倒れるゴブリンたちの生命力を、ハルカの翼へと転用していく。
「ハルカ、背中の服を脱いでもいい。もうすぐ翼が戻るぞ」
ハルカが震える声で答える。
「……僕の翼も……治るの……?」
集落の中枢へ踏み込む。ゴブリンたちは俺に吸い込まれるように倒れ、その度にハルカの背中から羽毛が芽吹き、翼の骨格が形成されていく。
ついに、一際大きな建屋から巨体の『ゴブリンジェネラル』が姿を現した。
「オマエラ……ナニモノダ……!」
生命力を吸い取られ、フラフラと歩くジェネラル。俺は迷わず、懐から使用済みの魔石を取り出し、指先に込める。
『魔弾』――放たれた魔石は、ジェネラルの頭部を正確に貫き、粉砕した。
静寂が訪れる。
ハルカの背中には、かつての栄光を取り戻した純白の翼が完全に再生していた。
「……完了だ」
俺の言葉に、ハルカは翼を大きく羽ばたかせ、涙を浮かべてその場に跪いた。
「……僕も、主様に身も心も捧げます!」
隣では、エリが完全再生した両手で弓を拾い上げ、優雅に構える。
「主様の御心に従いますじゃ。主に向かってくる敵は、このエリが1匹残らず仕留めて見せましょう」
ペロが影から這い出し、魔石の山を掲げてニヤリと笑う。
これで、俺のパーティーは揃った。
迷宮『猫の穴』の深淵へ挑む準備は、万端だ。
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