023 『再生の契約と、新たな旅路』~捨てられた者たちの再起。壊れた翼と手足を癒やし、俺という「主」の元で深淵へ。~
俺は奴隷商に命じ、車椅子に乗ったエルフの女性を再び応接室へと連れてこさせた。
部屋には俺とペロ、そしてシャルと奴隷商だけ。機密は守れる。
「……これから見ることは、他言無用で頼む」
俺はエルフの顔に触れ、皮膚の奥深くへ『気』を流し込む。
かつて火傷と刀傷で無残に引き裂かれた肌が、まるで時間を巻き戻すかのように滑らかな元の姿へと再生していく。
シャルと奴隷商は息を呑み、沈黙した。
ペロだけは、驚きを隠しきれずに声を上げた。
「ショータ! ……上級の回復魔法でも難しい『欠損再生』を、詠唱も魔法陣もなしに!? 信じられないにゃ!」
「……スキルについては秘密だ」
俺は耳元で小声でペロを嗜める。
「エルフの顔を全部直さないのは、美しすぎて再び貴族の目に留まるのを防ぐためだ。……わかるな?」
「あ……。ごめん、配慮が足りなかったにゃ」
次に、エルフの左足首。欠損していた部位に『気』を注ぎ込み、細胞を再構築していく。
ペロがぼそりと「欠損再生にゃ……」と呟くが、俺は半分まで再生したところで手を止めた。
これ以上は、この場でのエネルギー消費が大きすぎる。
エルフの瞳が、驚愕と、それ以上に深い「希望」の光で揺れた。
「……この場所で、今できるのはここまでだ」
俺は奴隷商に向き直り、簡潔に告げた。
「そのエルフと、最後に出したハーピーを買い取る」
「承知いたしました。……エルフの名は『エリ』。ハーピーの名は『ハルカ』と申します」
奴隷契約の魔法が完了し、彼女たちは俺の所有物となった。だが、俺が求めたのは従順な奴隷ではない。この理不尽な世界で共に戦う「相棒」だ。
俺は彼女たちに相応しい装備と、エリには精霊の腕輪を与えた。
そして、シャルからの助言に従い、全員で『パーティー契約』の魔法を結ぶ。
「……魔物を倒した経験値が、全員に入る魔法にゃ。凄く信頼し合っているからこそ成立する魔法にゃよ」
ペロが顔を赤くして照れ隠しをする横で、俺は不思議な感覚を覚えた。
契約を終えた瞬間、俺の意識の中に、ペロ、エリ、そしてハルカの気配が、まるで自分の身体の一部のように溶け込んできたからだ。
「……良し。全員、俺のパーティーだ」
俺の言葉に、エリが初めて感情を露わにした。その瞳には、かつて俺が崖から落ちた時に抱いていた絶望とは別の、燃えるような復讐の炎が宿っている。
ハルカはまだ怯えているが、俺の『気』がエリを癒したのを見て、少しだけその表情に安らぎが戻っていた。
「……まずは迷宮の入り口だ。お前たちの力、見せてくれ」
俺たちはニャルマル商会を後にした。
『魔抜け』と呼ばれた少年、猫の戦士、元Bランクエルフ、そして翼を折られたハーピー。
いびつで、しかし圧倒的なポテンシャルを秘めたパーティが、今、迷宮の門をくぐる。
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