016 『獲物はすべて、金と食糧に』~効率化された狩猟と、空の暴君を撃ち落とす『魔弾』の冴え~
俺とペロは、猫の王国の王都『キャルベル』を目指して森を進んでいた。
本来なら街道を歩いて3日ほどの距離だが、俺たちは迷わず森の中を選んだ。
理由はシンプルだ。隠密行動のため、そして何より、森こそが俺たちの最高のレベリング会場だからだ。
脚に『気』を流し込む。ジョギング程度のペースだが、常人には追いつけない速度で森を駆け抜ける。
ペロもさすが村一番の俊足。俺のペースに全く乱れず、軽やかに影を縫うように追従してくる。
「ショータ、右! スライム!」
「了解」
ペロの合図と同時に、俺は足も止めずに指先からドングリを弾く。
スライムの核を正確に射抜いた弾丸は、貫通して木に突き刺さった。俺が通り過ぎる刹那、ペロが影移動で核を回収し、アイテムバッグへ投げ込む。
無言の連携。それはもはや言葉を介する必要のない、洗練された「流れ作業」だった。
「……ショータ、こんなに大量に狩って、王都で売るのかにゃ?」
「ああ。これだけの素材をドブに捨てるのは、エンジニアとして許せないからな」
「エンジニア? よく分からんけど、ショータは相変わらず異常にゃ……。今までは食べる分しか狩れなかったから、売るなんて発想、思いつかなかったにゃ」
ペロは少し寂しげに、でも嬉しそうに笑う。これまで彼女がいかに飢えと隣り合わせの生活を送っていたかが分かる。
これからは違う。俺の隣にいれば、空腹に耐える必要なんてない。
「王都に着いたら、まず鑑定防止の魔道具を探そう。それから、卵と鳥肉だ。兎と猪も悪くないが、たまには別のメニューも食いたいだろ?」
「食べたいにゃー!」
そんな会話を交わしながら進んでいると、気配検知が空中の反応を捉えた。
俺は立ち止まり、大木の上を指差す。
「……見つけたぞ。あれだ」
ペロが左右に跳ねながら上空を観察し、目を丸くした。
「……ステュムパリデスだにゃ!? あの嘴と羽は凶器にゃ。しかも空を飛ばれると厄介にゃ……」
ステュムパリデス。朱鷺に似た姿で、青銅色の嘴と翼を持つ鳥の魔物だ。
確かに飛行能力を持つ魔物は、近接戦闘主体の俺たちには分が悪い。だが、俺には『魔弾』がある。
「ペロ、お前は撃ち落とした後の回収と、卵の確保に専念してくれ。俺が落とす」
「出来るのかにゃ!?」
俺は集中を高めた。
巣に止まっている一羽の眉間を狙う。
――指弾。
乾いた音が響き、一羽が墜落する。
即座に、もう一羽がどこからともなく飛来し、俺に向かって急降下してきた。
凄まじい勢いだ。だが、その殺気は手に取るように分かる。
俺は左手を広げて『生命力吸収』を発動。
空中で勢いを削がれた奴を、右手で放った加減済みの指弾で優しく撃ち落とした。
肉を傷つけない、完璧な狩りだ。
「……信じられないにゃ。あんなに簡単に……!」
ペロが呆然とする中、俺は冷徹に言い放つ。
「嘴と翼は換金率が高い。さあ、回収だ」
ペロが影に沈み、あっという間に二羽の亡骸と卵を回収して戻ってきた。
素材をアイテムバッグに放り込む。解体も、鑑定も、梱包もすべて俺のバッグの中で完結する。
今夜の夕食はステュムパリデスの炭火焼きに決定だ。
美味いものを食い、経験値を積み、金も貯まる。
(いいリズムだ。この調子で王都まで行けば、俺はただの旅人じゃ済まなくなるな)
俺は笑みを浮かべ、さらに森の奥深くへと足を踏み入れた。




