015 『共有された魂と、魔石の弾丸』~俺の過去は猫の相棒に溶け、気功と魔力が混ざり合う『魔弾』が生まれる。~
ペロの村――『キャルータ』。
かつては平和な猫たちの故郷であった場所は、今や見る影もなく荒れ果てていた。王国に見捨てられ、ゴブリンの群れによって滅ぼされたその爪痕は、ペロの心に深い傷として刻まれていた。
俺は、ペロにすべてを話した。
転生者であること。かつて日本という遠い国でサラリーマンという生き方をしていたこと。そして、この世界の理不尽な「魔法至上主義」を憎んでいること。
最初こそ躊躇した。だが、ペロが自分の辛い過去を晒してくれた以上、俺も嘘はつきたくなかった。
ペロは俺の話を聞き終えると、深い瞳で俺を見つめ、静かに頷いた。
「……ショータは、別の世界から来たのにゃ。それなのに、誰よりもこの世界の闇を見てるのにゃ……。」
『魔抜け』という烙印も、転生者の秘密も、ペロはすべて受け入れてくれた。
俺たちの魂は、言葉を介さずとも強く結びついた気がした。
「ショータは、強くなるために迷宮を目指すにゃ。」
「ああ。俺はこの力で、あいつらを見返すんだ。」
「猫の王国にも迷宮はあるにゃ。……そこに行ってみるにゃ?」
迷宮都市へ向かうはずだった道筋を、俺たちは変更した。ペロの故郷である猫の王国へ。そこでなら、より深くこの世界の裏側に触れられるかもしれない。
「行こう。お前の復讐も、俺の成り上がりも、全部そこで果たす。」
解体を終え、食事を済ませると、俺たちは出発の準備を始めた。
アイテムバッグの収納リストを確認し、大猪の肉や素材、魔石を整理していく。その時、違和感に気づいた。
『スライムの魔石:823個』
『スライムの魔石:147個(使用済)』
「……使用済? なんでこんなに減ってるんだ?」
使用した覚えはない。鑑定ゴーグルに魔石をセットしたこともない。
俺は思考を巡らせる。……そうか。
このアイテムバッグ自体が、常に魔力を消費して機能しているのか。
(つまり、このバッグは魔法石を燃料にして動く、一種の『魔道具』というわけだ)
使用済みの魔石をバッグから取り出してみる。
それは指先でつまめる程度の、パチンコ玉のようなサイズ。表面の輝きは失われているが、形状はしっかりしている。
ふと、指先でそれを弄びながら、俺は前世の記憶を反芻した。
(……これ、重さと硬さが指弾にちょうどいいな)
悪戯心がわいた。俺は近くの古木を標的に定め、親指と人差し指に『気』を練り込む。
ドングリとは比較にならない密度。魔石という高純度の鉱物。
「――ッ!」
指先から放たれた魔石は、空気を切り裂く鋭い風音を響かせ、大木へと突き刺さった。
ドォォォォンッ!!
鈍い爆発音と共に、直径50センチはある大木が根本から粉砕された。
破片が周囲に舞い散る。
「にゃっ!? 何事!?」
ペロが飛び上がってこちらを向いた。
「ごめん、ちょっと試射をしていただけだ。……いや、これは凄いな」
ドングリの指弾とは威力が違う。魔力が枯渇しているとはいえ、魔石の強度が加わることで、これは『銃弾』と同等の破壊力を秘めている。
音が気になるから隠密行動には向かないが、正面突破や対人戦では圧倒的な武器になる。
「何をするにゃ……そんな威力が出るなんて、びっくりしたにゃ!」
「ああ。……命名しよう。これは『魔弾』だ」
俺はニヤリと笑う。
これで、魔法が使えないという俺の欠点は、一つ解消された。
気功と指弾、そして魔石の破壊力。
魔法至上主義の連中が、俺の『弾丸』を見た時、どんな顔をするだろうか。
俺の復讐計画は、また一つ、着実に死神の鎌へと進化を遂げた。




