014 見捨てられた村に行った
俺は自然薯もどきの芋を掘り出しアイテムバッグに収納すると大猪を解体する為、ナイフを出す。
「ちょっと待つにゃ。血抜きして解体するのに水が必要にゃ。ここで解体したら折角の肉の味が落ちるにゃ。」
「そうだね。川に行くか?」
俺は解体を中止して、大猪をアイテムバッグに収納した。
「アタシの家に行こうにゃ。」
「いいの?」
ペロのプライベートは、敢えて聞かなかったが、子供のケット・シーが一人で狩りをしているのは何か事情があると思ってた。
夕方狩りの獲物を山分けして、
「帰るにゃ。また明日にゃ。」
と言ってペロが帰る時も
「じゃあね、また明日!」
って笑って見送った。
ペロから話し始めるまで、家の事は聞かないつもりでいた。
「うん。いいにゃ。ショータは仲間だから知っていて欲しいにゃ。」
俺はペロに連れられて、ペロの村に行った。
そこは、荒れ果てた村だった。
村の残骸と言うべきか。
かつて村だった跡。
ほとんどの家が半壊または全壊している。
ペロの家だけはところどころ不器用に補修した跡がある、何とか辛うじて住めるレベル。
村の近くに川がある。
川の傍で二人で大猪を解体しながら、ペロは訥々《とつとつ》と話し始めた。
「数年前にゴブリンの群れが村を襲ったにゃ。数百の群れ。
アタシの父さんは村の門番をしてた、
昔冒険者をしていて村の中では実力者だったにゃ。
父さん達が先頭に立って村の皆で戦ったにゃ。
塀を利用して籠城し、最初は何とか侵入を防いでいたけど、多勢に無勢だったので、王国に助けを求める事になったにゃ。
村で1番足が速い、影移動の魔法を使えるアタシが助けを求める事になったにゃ。
ここは猫の王国にゃ。
王都に行ったアタシは必死に助けを求めたにゃ。冒険者ギルド、兵士。
誰も来てくれなかったにゃ。
やっと来た兵士達は村を見捨てて、村を包囲して、出て来たゴブリン達を討伐し少しずつ数を減らす作戦を選んだにゃ。
兵士達が急いで村に突入してたら、母さんや村の人達が、助かったかも知れないのにゃ。
村は見捨てられたのにゃ。
討伐完了後、村に入った時は父さんも母さんも死んでて、村の人達も全員死んでいたにゃ。」
「それで一人で住んでたんだね。
辛かったね。」
ペロが泣きながら抱きついて来たので、優しく頭を撫でた。
ペロが泣き止むまで頭を撫でていた。
ペロが泣き止み落ち着いたので、聞いてみた。
「ペロはどうしたい?
猫の王国に復讐するかい?
その時は俺も手伝うよ。」
「いや、助けを求めた時に直ぐに動こうとしなかった王国騎士隊の隊長と全く取り合わなかった冒険者ギルドのギルド長は憎いけど、国民全員に恨みはないにゃ。
隊長もギルド長も今となってはどうでもいいにゃ。
でも・・・。
一発くらいは殴りたいかにゃ。」
「そうか、一発殴ろう。」
「あはは。」
ペロがちょっと笑った。
俺も自分の話しをした。
魔抜けだった為、村で苛められてた事。崖から突き落とされた事。
村で苛めてた奴等に復讐と打倒魔法偏重社会。
ペロは泣きながら俺の話しを聞いてくれた。




