1:中ボス試験ってなあに? その2
2016/11/21 8:45 細かい所を修正。
2016/11/20 23:46 色の表記を修正、末尾に、一文追加。
2016/11/20 13:13 超暫定になってしまいましたが、結構進んでいます。ぶっちゃけ、相当端折りました。なにとぞ、よろしくお願いいたします。
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
VRーSTATI◎Nの看板の上に設置されている、街頭モニタ。
見覚えのある巻き毛美人が、地図のようなモノが描かれた台の上に、何かを並べている。
その表情は、苦渋に満ちていた。
手に持つ小さな駒のようなモノを、カタタタタタタタタタタタタタッ。
何かを決めあぐねているようだ。
俯き、もう片方の手に持っていた、超高精細のペンで、頭を掻く。そして、台……作戦テーブル? に突っ伏した。
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
彼女の座る赤いスツールが、ピュプゥーン? と何かを、確認するような音色をたてた。
抱えていた頭を跳ね上げ、肩まである巻き毛を舞い上がらせる。
こめかみで光る、ヘッドセットの通信ランプは、彼女が、裸眼でAR表示を目視確認していることを示している。
彼女は、街頭モニタの設置されているVRーSTATI◎N入り口前の、交差点を見下ろした。
◇◇◇
「白焚…さんは、何やってんだ?」
巨大な映像と目が合った少年は、率直な感想を、吐露した。
「ほんと、何してるのかしらぁ?」
「んー? ―――っていうか、もう始まってるんじゃないのっ!?」
巨大画面の左上に表示されている時刻は『09:06』。
「えっ? うそ? まじでー?」
ベリベリベリ。紙の包みを破り開ける少年。
その背中には、プチプチに包まれた四角い箱。
手には湯気を立てる、紙の包み。
肘に下げたトートバッグには、大きなリボンがあしらわれている。
「えーっ!? パク。―――熱っつっ……はぐほぐ……、ひゃぁ、急はなひぃとぉねー」
既に開いた紙の包みをめくり、堅くない春巻きのようなモノに、囓り付いている、モデルと見まがうほどの美人。
その肩には小旅行にちょうどよいくらいの、ボストンバッグ。
バッグには名札が付いており、『β高/VRE研』と記入されている。
「だから、こんなの買ってる時間無いわよって、……ま、いっか、あたしも食べよっ」
ベリベリベリ。紙の包みを開ける少女。
その背中には、幾何学模様の風呂敷に包まれた、丸くて大きなモノ。
手にする紙の包みには、『BreakfastBurrito.』と描かれている。 俗に言う、小麦粉生地で、スクランブルエッグにベーコン、ソーセージやチーズなどの具材を、巻いて焼いたものだ。
彼ら『VRE研』なる者たちが居るのは、駅ビル2階へ繋がるスロープ状の横断通路の辺り。
大きめの交差点に覆い被さるように、広い三叉路状の陸橋が、駅ビルや、ジオ・レール乗り場や、道路向こうの高台を繋いでいる。
連結しているビル2階から下に入っている、VRーSTATI◎N。
2階の外壁、前面に設置されている、街頭モニタは、陸橋から見ると、ちょうど、高さが同じくらいになる。
やや、大きめな、白焚女史に見下ろされながら、朝食に余念がない面々。
その背後、去っていく、『BreakfastBurrito.』の文字。
タンジェリンオレンジの、”自動機械”。
約1メートル四方の箱から、手足が生え、看板を持ち、開いたハッチ部分から、平らな(◎_◎)が見えている。
『全3種類! どれでも1コ、950SPDダヨ!』
看板の文字が切り替わる。日本円で、一個、約100円。
掌サイズの、朝食の値段としては、とてもリーズナブルだ。
”自動機械”のカラーリングから、この近辺に常駐しているタイプの販売形態だとわかる。”自動屋台”の、アジュール・ブルーは、臨時販売で、同じところに現れる可能性が、低い事を表している。
「これ、……はふはふ……結構イケ……もぐもぐ……はふね」
「そうね、……熱っちっ……トリム降りはら、……はぐ……目の前に顔が有っへ、……はぐほぐ……ひっふりひはへほ」
「……はふはふ……そーへふへー……はふもぐ……ごくり。もっとぉ買っておけばぁよかったかもぉ」
一個平らげた、モデル体型から、腹の虫が、ぐぅーーーーーーっ。
やだもー、お腹なったぁー。と恥じらいながらも、朝食の手は緩まない。
ベリベリベリ。
二つ手にしていた、もうひとつの紙包みを開封する、モデル体型。
「あーっ! シルシだーーーーーっ!」
少年が紙ゴミを、丸めていると、頭上から、とても気安い感じで呼び捨てされる。
「ピピチュイピピチュイ♪」
左右背後を見渡した後、向き直り、見上げた巨大スクリーンの中。
ギニャー!? アレ、シルシなんか、小っこくね?
と前髪ぱっつんの、カワイイ娘が、白焚女史の前に、割り込んで映っている。
頭上の抹茶色も、カメラ兼マイクポジションに近いため、ピピピピとうるさい。
街頭モニタに映る、リアルタイム映像の中、NPC達の視線は、自動的に、各NPCの複製主観として並列処理される。
つまり、囓り娘と抹茶色は、街頭モニタから、シルシ達をちゃんと、見ていると言うことだ。
そして、割り込んできた被写体が、近すぎたためか、画面が自動的にズームアウトされ、―――。
「すーきーやーきー君ー!」
再び、登場した白焚は、高い位置にある作戦テーブルの上から、情けない声を出した。
「せーんーせーいー、とー、いっもーうーと、さぁーんーもー」
NPCでも無い白焚女史が、画面の中から、直接、陸橋の上の面々に目線を向けて話をしている。
AR表示の画素をカメラのように扱うことも出来るため、白焚の主観にも、街頭モニタのフレームがAR表示されている事は十分考えられる。
現に、前に、”自動屋台”が暴走した時、女史はAR表示を裸眼視している。
管理者サイドの使う”ヘッドセット”に付いている、”モード表示”の為の小さな画素パネル。その一部が高速で明滅しているのは裸眼視するための仕掛けなのかもしれない。
「へーるーぷみー!」
そう言う声で鳴く、架空の生き物のような、不自然さで、泣き言を言ってくる、女史はとても、不気味だった。
「なにあれ? 怖いんだけど!」
「そっね゛ーちょっと゛ー、お疲れちゃんかしら゛ー?」
鋤灼気色悪い!
クネクネと頬に手を当てる少年の、膝を横から蹴る、風呂敷背負い魔神。
「うぉうはぁー、されはひははぁー? ……もぐもぐ」
心配げに、それでも朝食の手はゆるめない、子供声でモデル体型の大食漢魔神。
「……当初は、NPC米沢首に全20体の、仮想敵を相手に、勝負していただこうと思っていたのですがー」
「なんか、仮想敵役のNPCが、後から後から、涌いてきてですねぇー、―――」
「音声入力、赤点號:撮影範囲:全フィールド」「権限行使:白焚畄外:バトル&キルカメラ追従:バードビュー」
映像は、高度を上げ白焚の前にいるコウベ・小鳥・プロトたん・壊れたダミー人形・刀風耀次・破壊されてないダミー人形などを映し出していく。
カメラ高度は上昇し続け、撮影対象はどんどん小さくなっていく。
街頭モニタに映し出されている、刀風よりも大きな、ダミー人形が、鋤灼驗の、実物大よりも小さくなった頃、ソレが画面端から、フレームイン。
赤色のキャラクター。特区に置ける”魔術的意味合い”の赤ではなく、その身に纏う炎に因る”物質の発光”だ。
中世の甲冑を着込んだ、首の長い爬虫類のような、二足歩行。かまげた首との、バランスをとるかのように、長い尻尾を水平に伸ばしている。頭頂部の両サイド、小さく2本ずつ背後へ突き出た小さなツノが、鱗の一部と融合している。
体に取り付けられている装甲プレートは、よく見れば分厚い鱗にネジ止めされている。歩く動作を見るに、見かけ程、行動を阻害してないっぽい。
続く2体目の、真っ青なキャラクター。刀風達と比べると、かなり大きい。対比的には、ついさっき見た、猫耳娘の出した戦闘糧食位の大きさに見える。
自動車サイズの、厳つい逆算角形。
頭部の真っ青な水牛風のツノは、片方が折れている。
肥大した腕を、支えるべく隆起した上半身。巨大なアームガードは、背中のダイヤル式バックパックへ連結されている。
「あー、何でコイツ等!? こんなトコに居るんだ!?」
少年は、最後に登場した、一連のキャラクタを知っているようだ。
「これ!? 大丈夫か―――!? ……駄目っぽいな!」
どうしたのか、少年は、上半身を背後にそらし、本日の引率講師を、盗み見て、顔色をうかがい、『駄目』という結論を出した。
はぁふぅん!? はふはふぅん!?
朝食を口に詰め込み、ボストンバッグを抱える、見目麗しい女性。一応、本日の部活動の引率講師の、眼の色が変わっていく。何かを予感しているようだ。
「チッ! 姉さん、目ざといっ!」
少年の左隣では、よそ行きで、お出かけ中の、実に微笑ましい風体の小柄な少女が、舌打ちし、呪詛を吐いている。
ザッッ―――!
爬虫類の尻尾が下がる。その先に、何故か囓り付いている、3体目のキャラクター。
うにゃにゃ。
鱗の隙間から、僅かに吹き出している炎で、チリチリと髪の毛を燻されている彼女が、画面内へ入場するや否や―――。
「うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
抱えてたバッグを放り出し、脱兎の如きスピードを見せる……引率講師。なだらかなスロープを、全力疾走で駆け下りていった。
「ーーォゥガァ▲▲ニャァン、きたぁーっ!」
遠ざかっていく嬌声。
そう、何故か混ざってる、プロトたんは別としても、ダミーの仮想敵とやら以外。『赤』と『青』と『なんか白っぽいスカート』のキャラクタ共。肉弾戦を主な攻撃スタイルとする、彼らの主戦場はVR空間では無いはずだ。
バッグを拾った少年は、巨大な街頭モニタを仰ぎ見る。
牛のような体躯の、青色のキャラクター。
予備動作なしに、猛烈なダッシュ状態へ移行。
そのまま、ガードを固めていた、ダミー人形を弾き飛ばしながら、フィールドを突っ切っていく。
長大な魔法杖を袈裟懸けに構えた、刀風へ、迫る。刀風がいかに長身マッチョでも、あの、蒼牛相手では、一溜まりもない。
牛が大振りの鳥の丸焼きだとしたら、刀風など手羽先程度のサイズでしかない。
白焚が、ちょっとっ! 止まれ、止まりなさいっ! と、青い駒をガチガチと作戦テーブルへぶち当てているが、蒼い片ツノは、タックル動作を止めない。
「なにあれ? ちょっとおかしくない!?」
禍璃が、風呂敷を抱えたまま、走り出した。
「ああっ、種も仕掛けも有るっにしてもっ、……はぁはぁ……実像化したまま、ノイズの一つも散りゃし無ーっ!」
そう、白焚女史は、VR空間だろうが、スターバラッド内の惑星ラスクだろうが、詳細かまわず、現実と同じ姿で現れている。別に不思議じゃない。不思議なのは、スターバラッド内のゲーム装備でしか無いものを、刀風が装備している事。そして、―――
驗も両肩に女性陣のバッグを抱え直してから、全力疾走でスロープを駆け下りていく。
禍璃へ死にものぐるいで追いついた、面白長袖の少年は、大きなリボンの付いた、トートバッグを差し出す。
「そっち、寄越せ、笹木が持ってても、意味無ぇーっ!」
早くも息の上がる少年に対し、小柄な少女は、身長に似合わない持久力を見せる。
驗のほぼ全力疾走に、併走しながら、風呂敷包みを、彼の肩に掛け、トートバッグを受け取る。背後を回り、環恩の、ボストンバッグを、探る。
「先ぃ……行っくわっ!」
たたったたっ、ずどどどっ! たんっ!
手にツートンカラーの魔女帽子を持って、ロケット花火のようにすっ飛んでいく。セーラー襟とかワンピの裾とかをひるがえし、降りる階段へ飛び込んでいった。
ドドドドガガガガガガガッン!
刀風が、対敵と激突したのか、とたんに沸き上がった歓声。取り残された少年は、はぁひぃと喘ぎながら、街頭モニタを振り返った。
さっき少年達が立っていた辺り、街頭モニタ前に人が集まりだしている。
モニタに映っていたのは、刀風の両肩にミュールの底を食い込ませている特別講師。ミス環恩その人だった。
当然、脚立にされている、細身マッチョのイケメン高校生は、だらしない表情を見せている。
だらしなさでは定評のある、面白長袖が自分を棚に上げて、必死に訴える。
「ばか、お前、……はぁはぁ……ソレっ……はぁひぃ……ニヤケてられる相手じゃ無ぇー……だろっ!?」
荷物を抱えた少年が、ヨロヨロと駅ビルに入っていく、その背後。
巨大なモニタの中、2人がかりで止めた、敵らしい巨体の突進。
さしずめ、ロバと猫だけの、ブレーメンの音楽隊と言ったところか。
鶏はともかく、犬は、即戦力にはならないかもしれない。
なぜなら、鶏が飛び込んだ下り階段を踏み外し、頭から転がり落ちていったからだ。
◇
ガツッ―――ギッィン!
逞しい体つきの少年に、踏み乗る美女。舞う、ひらっひらの、オーガンジースカート。
手にしているのは、『鈍器のように太く、曲がりクネった根菜のような一対の曲がり剣』。
ギッ・ギッ・ギッ!
物騒な根菜剣が押しとどめたのは、『4つのボルトで締められた巨大なアームガード。グリップにバイクのブレーキのようなトリガが取り付けられており、鎖状のケーブルが、派手な軍服の袖を通ってバックパックへ連結されている』。
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪ ガチリ!
ずっと、鳴り響いていた”時を刻む音楽”。
青い背中の、大きなダイヤルが、ズドン♪ のタイミングで、ガチリと、回転した。高まる内圧を表すと思われる、背中の目盛りは、現在4/10。
グオオン。
微かな作動音は、さらに増え続けている、観客の喧騒に掻き消された。




