↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
15:『中ボス求む。索敵な職場です。』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/153

1:中ボス試験ってなあに? その3

2016/11/29 0:28 文体を少し修正。

2016/11/28 8:45 間が開いてしまいました。申し訳ありませんでした。宜しくお願いします。

 ここは、”VRーSTATI◎N特区本店”、駅ビル地下2階の自販機コーナー件、レトロ筐体コーナーのフロアだ。

 地下2階には、駅構内へ続く大通路や、大繁盛している常設の弁当テーマパークのある駅ビル本館(中央)への連絡通路がある。

 地下2階へ降りる大半の客が、そちらへ流れていく。

 VRーSTATI◎Nに用が有る客も居るには居るが、併設(へいせつ)された『特区相談窓口』へ用がある場合が殆どだ。

 決して、フロア中央にポツンと置かれた、対戦ゲーム機に用があるわけではない。


 その寄りつく人のない筐体用に置かれた椅子。座る美少女。

 彼女は、目の前をヨロヨロと通り過ぎていく、長袖シャツにすがりつく。


「ちょっと、……鋤灼(スキヤキ)はん、……待(ま)っとくれや!」


「うっわひっ!? 歌色(カイロ)さん!? ……なんで、こんなトコ、居るんスか? 何とか試験(・・・・・)もう始まってますよ!?」


「あてえが、……聞きたい……どすえ? ……なんで、……品質テスト(キャリア中型試験)される製品(NPC)の……設計製作者本人が、……通られへんのっ!?」


「通れないんスか?」

 振り向いた少年、……の生え際から、タラリと血が垂れた。


「ぎゃっ! ……血ぃー出て……ますやんか!?」

 初めて会った日と同じように、少年の頭を抱えて、怪我を心配する美少女。


「だ、大丈夫すよ。さっき階段で転んだだけです」

 頭打ったんどすか!? スグ病院行かなっ!

 立ち上がるとき、手すりの尖ったとこで引っかいただけで。

 ほんとどすな? ウソついたらあきまへんえ?

 執拗に頭を抱えて、食い入るように、まさぐり点検する美少女歌色(カイロ)。

 執拗に頭を抱えられ、点検されていた少年は、ぐぐぐぐと無骨で大きな風呂敷包みを体の間に割り込ませ、ようやく美少女から逃れた。

 シルシ少年は、VRE研の他の面々と比べると、やや非力(ひりき)だ。成人女性とはいえ、やや体格差のある細身の相手(カイロ)と、もみ合っただけで、肩で息をしている。


「じゃあ、……コレ貼っ……ときますえ」

 サマーコートの内ポケットから、絆創膏(ばんそうこう)を取り出し、斜めにペタリ。

 少年の右眼の上辺りを、ピンク色のウサちゃんが飛び跳ねているが、絆創膏の柄は少年(ほんにん)からは見えない。


 絆創膏のパッケージゴミを丸めながら、少女は通路へ近寄る。

 ぴんぽぉーん、ぴんぽぉおーん♪

 壁に開いている人ひとり通れるくらいの通路入り口。

 壁から、ぱしゃりと、板状のシャッターが飛び出た。


 歌色(カイロ)は、一歩下がる。

 飛び出ていたシャッターが、即座にパコンと壁に収納された。

 美少女は少年を振り返り、

「さっきから……この有様で、……謎の自動ゲートが……通せんぼし……はりますのやっ!」

 手にしたゴミを、横にブン投げた。

 自販機横のゴミ入れ(ターゲット)を見もせずに投げられた、紙玉の弾丸は、空気抵抗を受けながらも、ふわふわと飛んでいく。

 白焚(シラタキ)女史も、空き缶入れを見ずに正確に投げ込んでいたので、VR関連の技術者独自の、技能なのかもしれない。

 ぽそっ、ころころ。

 いや、外れた。単に、VR技術者達の、モノグサな気質(スタイル)のようだ。


 ゴミを拾いに、小走りで駆けていく歌色(カイロ)。

 半泣きになりながらも、健気にも説明は続く。

 刀風(カタナカゼ)に、余剰リソース”海老VER”入りのPBCを持って先行してもらったこと。

 そして、歌色(カイロ)が止める暇もなく、笹木姉妹は、2人とも、全速力で駆け抜けて行ってしまったことを、少年は聞かされる。


 彼は、大荷物を抱えたまま、ジリジリと通路へ近寄る素振りを見せた。


「? 鋤灼(スキヤキ)はん? ……なんで、そっちへ……行きますのん?」

 おかしいなー? という顔をする、美少女VR設計師(たこやきだいすけ)の頬(ほほ)を冷たい汗が流れる。


 バタタタタッ!

 大慌てで、通路をブロックしようと駆け戻る、項邊(コウベ)歌色(カイロ):パワーブーツ装着型。


「……音声入力」「……先行入力設定(ゴーアヘッド):壁走りモード(フリーランニング)」

 宣言通りに、自販機の並ぶ3、4メートル先から、壁を蹴あがり、そのまま壁を疾走する美少女。

 その重力を無視した直進方向には、通路が落とし穴のように開いている。フロア床面から1メートル上の辺りへ、数歩で到達した。

 パワーブーツ (TM)の慣性制動によって、接地面(床→壁)を基点に、押さえられた、真っ白な、サマーコートが、CGのような複雑な流れを作りだす。


 通路へ駆け込む少年の、前へ突き出された、カモシカのような脚(キック)。

 少年は、得意のダッキングを披露する。体力及び、運動的な素養の感じられない驗(シルシ)少年だが、冗談混じりにでも、日々繰り返し、続けてきた動作は、歌色(カイロ)のハイカットスニーカー及び、太股の辺りまでを、正確に避(よ)けた。


 壁走りからのキックを回避した少年は、上体を起こし謎のゲートを通り抜け―――ようとして、5対(つい)に増えた(・・・)シャッターに、全身を打ち付けた。


「どっぷびっ!?」

 30センチ間隔で、縦に並んだシャッターに、跳ね返された少年。

 背中には、量子サーバー1基。背中から床に倒れる訳には行かない。

 体をひねるが、壁に手すりがある訳じゃない。

 壁に垂直に立つ歌色(カイロ)が、手を伸ばす。

 少年は肩から床に激突。だが、すんでの所で掴んだ手に引っ張られ、量子サーバーは守られた。

 ホッと息を吐く少年の上に、慣性を使い切った歌色(カイロ)が、フギャリと落ちた。


   ◇


 少年は簡易AR眼鏡を掛けた。

「わっ! 真っ赤だ!」


「え? なんか……注意書き……出てますのん?」

 量子サーバーにぶつけた肘(ひじ)をさすりながらも、金ぴか頭の手は、面白シャツを放さない。

 その手に、自分の手を乗せ、やんわりと解(ほど)く、全体的に面白い格好の少年。

「掴んでなくても、置いて行ったりしませんよ。どうせ、俺も、何でか通れなかったし」


「ソレはソウどすな。 ……ウソ言うたら、……あきまへんえ?」

 円筒形のバッグを開けて、開発者用のVRHMDを取り出す。

 頭に装着(パシャコン)し、「ビューリンク・システム、スタート。使用者チェックOK。索敵(スカウティング)モードで起動します」

 大人っぽい合成音声(マシンボイス)。

 ピ・ポ・ポ・ポ―――鋤灼(スキヤキ)はん? ―――・ポ・ポ・ポ・ポ・ポッ♪

 基本的に、HMDが起動するまでは、バイザー裏側(モニタ)に何も映らない。

 動作確認の為に小さく表示される、各種計器表示(インジケーター)が、増えていくくらいだ。

 ヴワン♪

 一瞬の瞬きの後、カラーバー表示。次に外部カメラ映像が映し出された。

 フルダイブの為の脳波顕微鏡(レンズ)や、カメラとモニタで挟まれた、バイザー部分を透過した主観(・・・・・・)が、歌色(カイロ)の視界に見えていることだろう。


 目の前にいたはずの少年が、居なくなり、取り乱す、金ピカ頭。

「ほらーっ! ……やっぱり、……行ってしもう―――!」


「こっちです、こっち」

 環恩(ワオン)のボストンバッグと、自分の風呂敷包みを筐体の横に置き、データウォッチを操作している、面白シャツ&眼鏡(スキヤキシルシ)。

 椅子に座って、ゲーム画面を見ている姿は、この状況にもかかわらず、今すぐ、ゲームでもプレイし始めそうに見える。


 チャリーン♪


 1プレイ:500宇宙ドルの決済音。

 少年は、この切迫した状況で、レバーに手を掛ける。

 いや、各種切迫してはいるが、少年の生活にはまるで無関係ではあるので、問題は無いのだ。無いのだが、豪胆(ごうたん)ではあるかもしれない。

 因みに、決済後のデータウォッチ表示によれば、日本円で”60円弱”。

 旬の過ぎたアーケードゲームの料金としては、普通といえる。


「こんな時に、……ゲームしてはるっ! あんたはん……むちゃく……ちゃやーっ!」

 グリンと振り向いた、金ピカ頭が、肩を振るわせた。

 シルシ少年からは、バイザー部分に、歌色(カイロ)の顔が映し出されて見えている事だろう。

 半笑いのような呆れ顔が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。