1:中ボス試験ってなあに? その4
2016/11/29 0:00 細かい所修正。
2016/11/28 8:48 よろしくお願いいたします。
「とりあえず、ソレ全部解消しないと、通れないんじゃないスか? ……たぶん」
少年が、顔を横に突きだし、すぐにゲームプレイに戻った。
索敵モードというのは、その名称や彼女の使用タイミングから察するに、仮想空間上の映像を、視認できるモードであると思われる。
HMDに装備されている”外部カメラ”からの映像に、非暗号通信や、接続先からの、”AR表示”を重ねている。
つまるところ、フルダイブじゃない、視聴覚的な仮想空間HMDとしての使用方法だ。
「な、なんやのん? この、真っ赤な表示!?」
通路の入り口。
人ひとりが通れるくらいの幅の、何もない空間。
ソコには、通路入り口を、埋め尽くすほどの、エラーダイアログ。
半透明のAR表示が、折り重なりすぎて、通路の向こうが、全く見えないほどだ。
「ソレのせいで、ゲートが閉じるみたいスね?」
ゴールデンヘッドは、入り口まで行って、指先で、赤表示の一つを突いた。
ビゴン♪
『汎用言語解析ツール用プラグイン:軸索検出ライブラリの持ち込みは禁止させていただいております。』
「な」
ビゴン♪
『量子ビットエラー検出可能な分子エディタの持ち込みは禁止させていただいております。』
「ん」
ビゴン♪
『3体以上の重複した”別名保存”の持ち込みは禁止させていただいております。』
「や」
ビゴン♪
『AR物体を拡張ビット稼働可能な、デバイスの持ち込みは禁止させていただいております。』
「て?」
ズッテッテレッテッ、ズッテッデッデーッ♪
カカカ、
少年は、慣れた手つきで、碌に画面も見ずに、プレイモードを選択。
ペチペチペチ!
『フリープレイモード:マッチング検索有り』
ズッテッデレッデデッ、ズッダダンダン♪
コカカカカッ……ピキュリンッ!
COUNTED ON DIALER!
少年は、全身真っ青の片ツノを選ぶ。
青い片ツノは、フロアの壁に映る大画面のなかでも、雄叫びを上げている。
「設計ツール……の類が、……全部、……あかんやないのっ!」
カード大の圧縮紙を次々と、空っぽのバッグへ投げ込んでいく、歌色。
ぽい。ばさばさっ。どざざざざざーっ!
「これじゃ、試作……やのうて、コトリとコウベの、……健康チェックくらいしか、……出来へんやないの!」
「じゃー、何たら、……”キャリア中型試験”とかいうヤツってのは、NPC自体を改変したりは、出来ないって事じゃないでスかね?」
「なっ!? ―――っていうか、それは……そうかもどすな……でも、そうしたら先生は? ……あてえより、ぎょーさん……それこそ、お店……開けるくらいに……開発ツールとか……持ってはる……はずやけど」
「あっ、だから、俺まで通れなかったのか! ソレたぶん、この中に入ってるスよ。先生、慌ててすっ飛んでったから、装備一式忘れてった」
少年は、VR専門家のバッグを足で、指し示す。
不作法にも感じられるが、彼は今、対戦格闘ゲーム『TOGGLE<鬼>OGRE’S』をプレイ中で、手が放せないのだ。
ギャリン、パン。
筐体の画面の中、青い▽が、牙をむき出しにして咆哮した。顔面に入れられる膂力によって、折れたツノが盛り上がった。付け根だけが残っていた、その塊が床に落ちる。
ゴトリ!
ゴカン、タン。ココン!
おし、入ったー!
相手キャラクターは、上空へ突き上げられ、画面上から消えた。
何か、難易度の高い必殺技を決めたようで、満足げに、手を離しブラブラさせる少年。
ゲーム画面は、漆黒のエフェクトで埋め尽くされていく。青牛は背中を此方に向けて、大技のモーションへ移行した。
ゲーム画面は、大技による自動処理が、しばらく入るようだ。
ボゥォオゥワァッ!
POWERFUL HORN GREW!
片ツノの反対側に開いた穴から、焔を纏った小さな角が生えた。
「音声入力、フロア壁面:接続先検索」
少年が、呪文を唱えると、通路のない方の壁面に、いくつかの映像チャンネルが、次々と流れていく。
その中の一つ、組み体操をやっているチャンネルがあり、少年はその映像チャンネルを指先で選択し、全面表示させた。
2つのピラミッド。
片や、青色の巨漢。
片や、少年の上に女性が2人も乗っていて、今にも倒れそうだ。
スタイルのよい女性を肩車した少年は、顔を真っ赤にし、何かに耐えている。
太股に挟まれて苦しい、というのとは違うようだ。
肩車された女性の肩に、小柄な少女が、靴を脱いで立っている。
その手には、自分の身長と同じくらいの、細身の大剣。
(ゴッッ、ガッッ、ギギィィィン!)
交わる剣戟。散る火花。
打ち付けられる巨漢の拳。
最上段の大剣。
次に、最下段の、魔法杖。
最後に、中段の、ツノに取っ手を付けたような双剣。
上段下段中段の、3連撃のコンビネーション。
バランスを取る玩具の様に、前後左右にふらついてはいるが、何とか、凄まじい攻撃を、凌ぎきった。
「なるほど、何で、組み体操やってんのかと思ったら、高さを同じにして、打点を合わせてたのか!」
「え!? 何で先生等が、……戦うてますの?」
壁に映し出された、街頭モニタと同じらしき映像を見て、歌色がゲーム機筐体まで寄って来た。
「解りませんけど、不測の事態だって、慌ててましたよ、白焚……さんが」
少年はレバーに手を掛ける。
「音は……出ないん……どすか!?」
金ぴか頭は、壁の中の、3人に釘付けのまま、面白メガネの肩に手をおいて、訊ねた。
フロアにはゲームミュージックらしきBGMが流れ、開いたばかりの映像からの音声は無い。
ガチンガチンガチン!
その時、ゲーム機から大音量が響く。
少年はレバー操作に集中している。
一心不乱に、グリグリと回している。
「もう! ゲーム……してる場合じゃ、……あらしまへ……ん―――!?」
ガチンガチンガチィン! ゴリッ!
ゲーム画面の中の、蒼鬼が背負うダイヤルが解放される度に、小さかった方の新しい、蒼ツノが太く、長大になっていく。
ギャリギャリッ!
少年は、レバーを回すことを、まだ止めない。
今度はゲーム画面に釘付けの金ぴか頭。
肩を揺すってみるが、少年は動じない。
面白眼鏡のゲーマーは、膝の上に下ろしていた右手を、再び、ボタンに添える。
ゲーム画面と、壁の映像を、歌色は、何度も見比べる。
ウォォォォォオオオオォォォォォォォォッッ!
立体音響で、荒々しく哮り狂う、ゲーム音声。
筐体の画面上下に貼られている、キャラ別コマンド表。
双角が生え揃っている、青いキャラクタの下には、こんな記載がされている。
『エクステンデッド・アーツを決めろっ!!』
『ツノで相手を、』
レバー入力:←ため後、↓を半円状に経由して、→。
ボタン入力:強パンチボタン。
『突き刺し、』
レバー入力:←後、→→
ボタン入力:中キックボタン。
『突き上げ、』
レバー入力:↓、↑。
『地面に激突する瞬間をねらって、頭を振り下ろす!』
レバー入力:1回転。 ※追加入力可
ボタン入力:弱・中・強パンチのうちどれか2つ同時押し、または弱・中・強キックのうちどれか2つ同時押し。
※コマンドは1P側の場合です。
ギャリリッ―――、バンッ!
驗少年が、レバーを、ひたすら回し続けること10回目。
青い牛、いや、折れていたツノに換わって、拗くれた禍禍しい大ツノが生えた蒼鬼。今や、双角の蒼鬼と化したプレイヤーキャラクタは、上体を振りかぶった。
新しいツノのサイズは、すでに片側の倍以上ある。
BOOSTED ON DIALER!
ドゴッガアァァァァァァァァァアアアアアンン!
蒼鬼と比べると、あまり強そうには見えない、落ちてきたイケメンキャラ。蒼鬼はジャストタイミングで、ツノを地面に突き刺した。
大爆発エフェクトに合わせ、ゴリゴリ削られる、イケメンキャラの体力―――が、1ドット残った。
「見ててください。この蒼鬼、この技出したが最後、地面から抜けなくなって、自滅します」
確かに、画面の中の蒼鬼から、命からがら抜け出したイケメンキャラが、一方的に華麗な技を当てるが、蒼鬼は微動だにしない。
コココン、ペチポチペチ。
驗少年が、移動と攻撃を命令するも、蒼鬼は地面に突き刺さったままだ。気絶状態が、解ける気配は無い。
やがて、蒼鬼の体力ゲージがゼロになり、地面に突き刺さっていた、大ツノが折れた。
美少女は、業を煮やし、少年の頭を掴んで、宣った。
「卑怯や……おへんかっ! ……蒼鬼さん、……何にも出来へん……やないの!!」と。




