1:中ボス試験ってなあに? その5
2016/12/05 23:23 つい2,3日前に投稿したばかりのような気が(怖。遅くなってすみません。もう少しで、ドカーンとお話が―――
『本日発行可能な”キャリア中型免許”:残り___03ライセンス』
赤い縦長表示の最上段に書かれた白文字。
パネルの中央から最下部に渡って、点在する小さなキャラクタアイコン。
(ゴッガァン!)
青い巨漢に蹂躙され、地面へ叩き付けられる、実物大の衝突実験用のダミー人形。
四肢が砕け散り、光の粒子へと変わる。
背後で、白焚女史がなにやら叫んでいる。
映像の隅に、試験開始からの経過時間などと一緒に、赤いパネルが表示された。
立体的なドットアイコンで表された、ランキングらしきもの。
その上位3名を線引きしている白い線は、小刻みに上下している。
キャラクタアイコンの隣に、名称と撃破数らしき星マーク。
―――ッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
ダミー人形撃破によって、最上位に浮上した青い逆算角形。
『LV2:狛▼丑 ★…』
凶悪なまでの攻撃力に反して、駆け出しのLV。
続く名称の末尾に、大きめな星一つと、小さな星3つ。
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
現在第2位、ツインテールアイコン、ミニスカドレス。
『LV4:刀風曜次 ‥』
小さな星2つ。
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
第3位に、マネキンみたいなアイコン。
『LVー:TESTBOT7 ・』
衝突実験用の人形そっくりの、おそらくはテスト用の汎用NPC。
小さな星1つ。
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
ボーダーラインを下回り、第4位。
見慣れた、ピンク色のネコミミキャラクタ。
『LV31:笹木環恩』
星は無し。
チッチッチッチッチッチッチッ、ズドン♪
さらに、数体のマネキンを挟んで、第9位に、
『LV14:笹木禍璃』
ランキング最後尾には、
『LV0:オウガ▲▲ニャン』
『LV0:ラージ◆ケルタ』
「なんか、時計の……音みたいなんが、……微かに聞こえ……て来ましたえ」
金色に輝くVRHMDを抱えて悩んでいる、面白い人みたいになっている項邊歌色。
操作している左耳の辺り。リング状のパーツの中央。
『接続先:自動検出』と書かれている、未来的なイメージの文字。
そのボタンをしつこくクリックしている。
ガチガチガチガチッ!
「―――あのう、それ、大事な商売道具じゃないんスか?」
「そうどすえ? ……それが、どうか……しはりました?」
「表面もボッコボコだし、もう少し、丁寧に扱った方がいいんじゃ? 仮にも精密機器だし……」
「何言うてはりますの。……これ、極限環境……仕様の……フルレジスト規格……品でっせ? ……使ってやらな、……スペックがもった……いないやないの……ふぅ」
長台詞に、若干、息を切らす、丸くて金ピカな頭。少年主観では、バイザー部分に、美少女の顔が張り付いてはいるだろうが、不気味面白さに拍車をかけているだけと思われ。
「あー、うちの兄貴も、そんなこと言ってたっけなー……」
頭を掻く。
「えっ!? あの、……ろくでなしで意地悪……の鋤灼Pがっ!?」
たじろぐ、首から上だけ、”耐熱/耐爆/耐衝撃/空調機能完備”。
「ええ、まあ、ろくでなしなのは、認めますが、……まあいっか、―――で、兄貴は、ジェットパックが耐熱対爆仕様だからって、蹴り飛ばして運んだりしてて、―――」
「してて?」
「―――ある日、通学飛行中に爆発しました」
「あははははははははははははっ! ……え? あれ? 本当に? そらぁ、……悪いこと話させて、―――」
「―――パラシュートが出て助かったものの、着地したのが、電波塔の天辺で、一晩中降りられなくて……」
「なんや、無事やっ……たんかいな。……そらそうどすな」
「……で、結局、やることないから、当時所属してた研究室の”見込み3年の仕事”を一人で、一晩で、一遍に終わらせたら、今の役職に就いたって言う―――」
「なんや? ……意地悪Pの……サクセスストー……リーやないの!」
まじめに聞いて損したわー。
再び、ガチガチガチッ! っと景気よく大音を立てる金ピカ頭。
やがて彼女は、黄金の頭から手を離す。
「あ、……聞こえましたえ」
歌色のVRHMDを指さして、簡易AR面白眼鏡を持ち上げる驗少年。壁の映像を振り返った彼の、AR対応眼鏡のスピーカーからも、音声が流れている。
「ほんとだ。聞こえる」
簡易AR眼鏡は、一度メイン設定した、”音声接続先”を解除できない。接続が切れるまで放置するか、現在の接続を経由している、歌色のVRHMDの接続を解除するしか方法がない。500円ショップで売っている程度の、使い捨て前提の安物なので、利便性には乏しい。
『―――ザザザッ―――こらっ、アナタたちは、どこからの発令で、試験に乱入して来たのですか!? 所属と製造番号を答えなさい!』
「どうなってる!? 先生たちは?」
白焚女史が、フィールドを高い位置から見下ろしている。声を上げる女史にカメラが寄っている状態だ。
映像の中に環恩たちの姿は、映っていない。
「まさか、コイツに、……殺られとりゃせんやろな……」
手元の小さいゲーム画面の中で、倒れたままの蒼鬼を、歌色が指さす。
同時に、コンティニュー猶予のカウントダウンが終了し、ゲーム画面が暗転する。
腕に付いたデータウォッチへ指を走らせる驗。
その口元が不安げにひきつる。
「音声入力」「音声通信」「通話先:VRE研一同」
『刀風:NO_RESPONSE』
『笹木マ:NO_RESPONSE』
『笹木ワ:NO_RESPONSE』
『項邊:CALLING...』
「そっちは……どないどすか? ……連絡つきますか?」
腕に付いた、開発者用のゴツい腕時計型デバイス。個人用途の携帯型汎用デジタルツールとしては最高峰を誇る。その白いボディーに付いた盤面をコツコツと叩いている。
「そっちで駄目なら、俺の、こんな安物で通じる訳ないですよ」
通話先の検出が出来ずに、応答がないのは、”試験会場の仕様”であると思われる。通路に立ちふさがる、赤いエラー表示の中の一つが、通信に付随する項目を、追加でポップアップさせている。
「んんん~っ、……そしたらどない……しはりますか?」
「さっきコウベが、映像越しに直接、会話してきやがったっけな……」
少年は、まじめな顔で、椅子を壁に向けて座り直した。
「あーコホン。―――おーい、コウベェー!? 居るかぁー?」




