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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
14:ワルコフ爆誕!

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96/153

1:ワルコフ爆誕! その5

2016/11/11 4:06 長くなってしまいますが、ようやく、本筋に近づいてきたかも。宜しくお願いいたします。

「■(ワルコフゥ)ワルニャン? 聞イタ事ノナイ、固有名詞デスネ_」

 おい、入れ物(ワルコフ)のくせに、中身(ミミコフ)のこと知らねえみてえだぜ? ヒソヒソヒソ。

 だな、全く、この時間ねーときに、ややこしい! ヒソヒソヒソ。


「有ったぁ!」

 環恩(ワオン)が指先でつまみ出した、見覚えの有る、小さな猫耳アイコン。

『音声ライブラリ:プロファイルイメージデータ』

 今、ワルコフの文字チャット入力を、自動的に音声再生している音声ライブラリのおまけデータだ。猫耳キャラクタは、デザイン形状としてはポピュラーなものだし、環恩(ワオン)のトレードマーク『にゃんばる』も、よく似ている。


「姉さん、それ、似てるけど、ワルコフにあげた音声ライブラリ付属の、キャラ外観(プロファイルイメージ)データよ」


 禍璃(マガリ)が、環恩(ワオン)の相手をしている隙に、HMDお化けが、最初の問題を、ようやく口にした。

「……いや、待て。取りあえず、ワルコフ、オマエ、あれだけあった、”特選おやつ”全部喰ったのか?」


「■(ワルコフゥ)♪~~♪~~♪~~」

 凄まじく流暢(りゅうちょう)な、口笛が作業机の上から届く。

「アレだけ有ったのに、よくも全部、喰ったもんだぜ」

 ヤレヤレと手のひらを手のひらを天井へ向けるイケメン。

「あー、トボケなくていい。もー、怒ってる場合じゃない」


 口笛を吹きながら、この場から離れようとしていた宇宙服が、嬉々として戻ってくる。スキップで。

「やっぱり、一回くらい叩いといた方がよくねえか?」

 刀風(カタナカゼ)が、驗(シルシ)の工具箱から、データマテリアル対応の、玩具みたいなハンマーを引っ張り出す。

「■(ワルコフゥ)♪~♪~♪~♪~」

 高速で口笛を吹き、走るように逃げていく、宇宙服。


「例の”謎椎茸”、”特選おやつ”換算で100個分。すぐに出せりゃ、勘弁してやれん事もない」

 ピタリと止まり、わずかな自由度イッパイに、間接を捻(ひね)って、ギッギッギッと振り向く宇宙服。

 ワルコフから見れば、HMDお化けの頭(カメラえいぞう)の中に、驗(シルシ)の”初期ボディー”の頭が、浮かんで見えている事だろう。驗(シルシ)を驗(シルシ)としてキチンと認識しているようだ。

 驗(シルシ)は、宇宙服へ、『”キャリア中型”試験料金を調達して、今すぐに出発しないと、キャンセル料が発生する事』を説明しようと、赤い色の画面を表示した。

 その瞬間、宇宙服は、返答した。


「■(ワルコフゥ)”椎茸(シイタケ)”ガ無ケレバ、”海産物(カイサンブツ)”ヲ食ベレバ良イジャナイノ?_」

 そのかわいらしい口調と、元からカワイイ音声ライブラリの音声。何かの物まねでもしているのかもしれないが、誰も気にした様子は無い。


「は? ”海産物”? オイ、ふざけてる場合じゃねーぞ。椎茸はもう無(ね)えのか?」

「その小ささだと、……無いのかもしれないわよ。”余剰リソース”ってやつ」

 ワルコフは、何もせずとも時間経過と共に、”余剰リソース”を体内に溜め込む。そして、その量に比例して巨大化する。”特選おやつ”の大量摂取なんてしたら、元々の大きさ2メートルよりも、大きくなることはあっても、小さくなるはずが無い。


「やっぱり、オマエ、何か悪いもんでも(・・・・・・・・)、拾い食いした(・・・・・・)んじゃねーのか(・・・・・・・)?」

  ワルコフを心配し出すHMDお化けへ振り向き、対峙していた相手へ隙を見せた小柄な少女。

 その瞬間、凄まじいスピードで、ワルコフへ振りかぶる、逆上した特別講師。

 AR表示の宇宙服(ワルコフ)には、AR表示中のゲーム内アイテムアイコンを、威力は全くないが(いちおう)、ぶつけることが出来る。

 ひょろろろろっ! ぽこっ


『音声ライブラリ:プロファイルイメージデータ』がワルコフの頭にヒットする。

 エプロンドレスの猫耳キャラが現れ、顔面(バイザー)にスコンと飲み込まれた。


「ワルさぁん! ワルにゃんわぁ? どこに隠したんですかぁ!?」

 環恩(ワオン)は、共有金庫に再び両手を突っ込んだ。

 そして、手当たり次第に、指先にポイントした(くっついた)アイテムをワルコフめがけて投げつけた。

 小さいアイコンのまま、ワルコフへ向かって飛んでいく、共有金庫の中身。

 素手でも、アイコン化したAR・VR物体を選択し、投げたりすることは出来る。


『クイズ◯✕ガンマンのゲームデータ』

 あっ! 俺のゲームデータッ!

 刀風(カタナカゼ)が叫ぶ。

 接触する瞬間、キューブ状に変化し、即座にスコン!


『紐(ひも)』『パネル(小)』

 紐が絡んだ板っぺらに変化し、スココン!


 その他、『✕(ばつ)』マーク付きの、

『✕壊れたアイテム』

『✕壊れたアイテム』

『✕壊れたアイテム』

 スコッ! スコン! スコーン!

 直立不動のまま、側面に付いているスラスターを全開。横方向の動きだけで、すべてのアイテムを、確実に飲み込んでいく、宇宙服のバイザー(まるがお)。


「■(ワルコフゥ)ハハハハ、ミス環恩(ワオン)。私ハ、降リカカルアイテムハ、残サズ頂(イタダク)ク、種類ノ人間ナノデスヨ_」

 小さな宇宙飛行士は、”来いよ”と挑発する拳法家のごとく、揃えた指先をちょいちょいと動かしてみせる。


「おまえ、人間じゃねーだろ、返せ、俺のゲームデータ!」

 反射的にワルコフに飛びかかる、刀風(カタナカゼ)。


 ノイズ混じりに、刀風(カタナカゼ)の胴体を突き抜ける、宇宙服(ワルコフ)。

 背中の噴射ノズル(バーニアスラスター)に点火し、シュゴゴゴゴッーーーゴッシュボボッボッボッ……プッスン。


 燃料切れで、失速(ストール)し、落ちるワルコフ。

 その軌道は、まるで月面を飛んで歩く宇宙飛行士(コスモノーツ)のようで、―――。


「ちょっと、今すぐ出るわよ! 白焚(シラタキ)さんに、説明して、待って貰うにしても、遅刻したらソレも出来ないのよ!?」


「白焚(シラタキ)……さんに、待ってもらう?」

 ぐりん。首を傾けるHMD。

「んーーー? アイツ、そういう便宜(べんぎ)を図ってくれるタイプじゃねーよーな気が……」

 ぐりん。倒れたまま、同じく首を傾ける逆算角形(マッチョ)。


 煮え切らない男子どもの尻を、小柄な少女がキックする。

「取りあえず、しゃーねー。あれだ、手間と時間がかかるけど、小型銃とか全部売り払ってる間に、試験始めてて貰おうぜ」

「そうだな、全部かき集めりゃ、”特選おやつ”結構買えるだろうし、試験終了くらいまでなら待ってくれそうな気もしてきた」

 驗(シルシ)は、共有金庫を閉じる。


「ワルさぁん! 今すぐー、システムイベントログ(ログファイル)を提出(よこ)しなさぁい」

 美人顧問は、金庫が消え、宇宙服へ投げつける物がなくなったため、やや冷静に問いつめ出す。ミミコフへの執着は凄まじい物がある。ひょっとしたら、一介のVR技術者に甘んじているのには、この辺も影響しているのかもしれない。


 ウォロロン。ピーコンピーコン♪ 外から微(かす)かに聞こえてくるコミューターのバックする音。

 1/6(部屋付き)ルフトが、両目をチカチカさせて、驗(シルシ)の元へ歩いて来た。


「どうしたのルフトさん。え? お客さん?」

 HMDお化けだけの主観に、メッセージダイアログが表示される。


 トントントントン。階段を登ってくる足音。

 開いたままのドアから、顔を出したのは、項邊(コウベ)歌色(カイロ)さん推定20歳(はたち)。

 成人女子高生にして、VR設計師:たこ焼き大介でも有る。

 デニムのショートパンツに、薄手の白いサマーコート。柄シャツ&ループタイ代わりか、濃緑のネックストラップを下げている。背中には円筒状のバッグ(・・・・・・・)。

 本日は、準主役と言っても良い。それなりの装備(・・・・・・・)を持参してきているようだ。

 ゴチャゴチャしそうなコーディネートだが、美少女は何を着せても、着こなす(・・・・)というのは本当らしく、違和感は余りない。

 試作コード65”小鳥(コトリ)”&試作コード68”米沢首(ヨネザワコウベ)”の生みの親。宇宙服(ワルコフ)を宿敵(いけず)と呼び、美少女と呼んで差し支えない”コウベと瓜二つの外観(・・・・・・・・・・)”を持つ。


 その足下を、宇宙服(いけず)が、ゆーっくりと、月面歩行中(ムーンウォーク ナウ)。

 歌色(カイロ)は気にも止めずに、歩(ほ)を進め、スコーンと蹴り上げた。

 AR物体へ、影響を及ぼす(介入する)ためには、接続を確立し、S1(センシングワン)以上に対応した入力装置(Iデバイス)が必要になる。

 AR対応各種圧紙(ペーパー)で運んだり叩いたりも出来るが、動き(・・)を伝えることは出来ない。

 ましてや、素足で、蹴り倒したところで、さっきの刀風(カタナカゼ)のように、すり抜けられ、ノイズをまき散らされるだけだ、


 驗(シルシ)が両手に装着している、データグラブ。黒地に赤いラインが入っているデザイン。

 そして本日、美少女は、裸足ではなくハイソックスを装着していた。もちろん黒地に赤いラインが入っているデザインだ。


 ワルコフ(ボール)は、驗(シルシ)の部屋を斜めに飛び上がり、AR対応天井、”画素演算”対応強化ガラス窓、床面の着地判定などを、跳ね返った(ピンボール)。

 ”小鳥(試作コード65)”の立てる、面白効果音(SE)そっくりの、衝突音を轟かせる。


 ガチン!ボキュン!ドドン!ボキュン!ボキュン! ガチーン!

 歌色(カイロ)が、上手に、床と足の裏で挟み込んだ(トラップ)。


 ―――パッパパパッパパパパパァーーーーッ♪

 カヒューーーーゥイ!

 トラップされ、上下逆の宇宙服(ワルコフ)は、謎のファンファーレに続いて、開閉まで(・・・・)、立派な効果音(SE)付きだった。


「―――きとした正式名称(めいしょう?)があるコフーっ!」

 ズドドン!


 上下逆さまの状態で再誕(飛び出)した、猫耳メイド(ミミコフ)は、途中だった口上(こうじょう)を再開する。

 猫耳に、猫のように(・・・・・)飛びついた環恩(ワオン)は、獲物(ミミコフ)をすり抜け(・・・・)て、向こう側に立っていた歌色(カイロ)に激突した。

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