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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
14:ワルコフ爆誕!

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95/153

1:ワルコフ爆誕! その4

2016/11/11 3:58 すみません。また、長くなってしまいました。宜しくお願いいたします。

「一種のぉ呪術装置(・・・・)だとぉ、仮定してぇ見ますよぉ」


 呪術装置!?

 オカルトじみてきたわね。

 そういや、歌色(カイロ)ちゃんは、……現地(試験会場)集合だっけか?

 なるコフー、呪術装置(じゅじゅじっ…ガジッ)ッ痛ッ―――。

 驗(シルシ)、禍璃(マガリ)、刀風(カタナカゼ)、なぜかミミコフ(舌っ足らず)までが揃って環恩(ワオン)の前に集合している。


 驗(シルシ)の部屋の椅子に座った美女(ワオン)が、作業机の天板に指先を走らせた。


 ダラララララァーン♪

 部屋に内蔵されている、サラウンドスピーカーが、BGMを奏(かな)で始めた。

 ド派手なステージの中で、大きな箱の周りを、彷徨(うろつ)く、怪しい人物。

 部屋の壁に表示された映像は大がかりなマジックショーだ。


「オカルトじゃありませんよぉ。手品に使うー、種もぉ仕掛けもぉ満載のぉ、人が入れる大きな箱とかぁスカーフだとかぁトランプ(カード)の紙箱(ケース)とかだと思ってくださぁい」

 ミミコフは、環恩(ワオン)の前に半開きで置かれたままの、本日の議題(うちゅうふく)の腹の上に、座っている。半開きのままなのは、いくら力を入れて押しても、閉じられなかったからだ。


「とにかく、ワルコフが”特選おやつ”食べちゃったんだとしたら、”余剰リソースに類する物”、『謎椎茸(・・・)』をオヤツ換算で100個分、急いで調達しないと」

 小柄な少女が凛とした声で、状況を確認する(ブリーフィング)。


「見えない瞬間にー、コト(・・)がぁ起きるぅ。見てる間にはぁ、コト(・・)は起こらなぁい」

 実妹の事情説明(ブリーフィング)を、無視して、話を進めていくVR専門家。

「何言ってるの? 姉さん? いつにも増して、ワケ解んないんだけど」


「や、コレじゃね? 種と仕掛けを、見せないことが、手品(ちから)になる(・・・)」

 真っ黒いゴツゴツ頭(シルシ)が指さす先には、”半開きの宇宙服(ツタンカーメン)”と、壁に再生されている”手品師(マジシャン)が空っぽの箱の中から美女を取り出す”映像(シーン)。


「そしてぇ、種も仕掛けもー、気づいてしまったが最後ぉ、手品がぁ有する魔法はぁ2度とぉ成立しませぇん」

 ―――と言うわけで、ワルにゃんを没(ボツ)になんてぇ、させませんからねぇー!

 教え子たちに向かって、徒手空拳の構え。声のかわいらしさが邪魔をして、余計に、凄みを感じない。


 ……あれ?

 どう言うこと姉さん?

 笹ちゃん先生?

 生徒組が、にわかに、ざわめく。


 取り上げられ、生徒たちの背後の段ボール箱に突っ込まれている、魔女帽子。その戦力不足を補うつもりなのだろう。

 スカートのポケットから取り出した、VR開発者御用達(ごようたつ)の、基本武装。蛍光黄緑にブルーのロゴ入り。環恩(ワオン)愛用の、腕時計型の開発者用デバイス。

 おそらく予備にするため、いつも持ち歩いている物だ。慣れた手つきで開いた手首に巻き付けた。


 真っ黒頭(HMD)の少年と、ガタイの良い少年が、顔を見合わせる。

 その顔には、一昨日、同じ光景を見たぜ。ああ、俺も見た。と書いてある。


 ミミコフは現在、裸眼(らがん)での、目視確認(ビジュアルチェック)が可能だ。ワルコフのホログラフィー規格への介入(ハッキング)がまだ、生きているのだ。

 開いたままの宇宙服も、本物にしか見えない解像度で、床に影を落としている。


「うふふふふぅ―――音声入力」

 椅子から立ち上がった笹木特別講師は、その腕のデバイスに、オレンジと赤でデザインされた、”空間認識用アダプタ(ドングル)”を狂気の表情で差し込んだ。

 それはそうだろう、既に、現時点で、”高課金量子演算(ぜいたく)”をしすぎているのだ(・・・・・・・・)。


「管理者権限:行使―――」

 戦闘態勢へ移行した、VR専門家は、半開きの宇宙服と、その上に座っている猫耳(ミミコフ)を跨(また)ぐ。そして、今まさに、教え子たちへの敵対行動を、何か、音声入力(コマンド)しようとした時。


 卵、いや、卵の殻(元ワルコフ)とヒヨコ(現ミミコフ)を守ろうとしている、親鶏(おやどり)環恩(ワオン)の直下(ちょっか)。


「フニャァーーーー……ニャュ!?」

 不意に暗くなった天井を見上げ、何かを目撃し、尻尾の先までを逆毛立てるミミコフ(ヒヨコ)。


「何だぜっ!? 何が見えたんだぜ!?」

「必死か、イケメン……きょうは大人仕様だったからな」

 ボソリと呟(つぶや)く、真っ黒頭(HMD)の少年。

「何で、アンタが知ってるのよっ!?」

「何で、オマエが知ってんだぜっ!?」


「おい、ソレ、首から下がってる掛札(ヤツ)。漢字で『耳』になってんぞ」

 HMDお化けは、しゃがみ込んで、自分のコメカミの、金色のリング(脳波レンズ)を指さした。話題を逸らすのに必死だ。

 確かに、全長20センチ程度の動く、猫耳メイドさんは、首から掛札を下げている。 彫り込まれている名目は『営業中』ではなく、『耳コフ』。

 その『耳』の左に『WARWARA』『MIMIKOV』と二段組の小さな文字。その更に左に、デフォルメされた猫耳っ娘のシルエットが彫り込まれている。

 そのシルエットの末尾。妙に存在感がある、猫にしては太い尻尾も、とてもよく再現されている。


「姉さん? ホントに時間無いわよ?」

 驗(シルシ)の腕をヒネり、環恩(ワオン)の方へ向ける。

 痛って、何すんだよ。

『08:16:55UST+9』


「だってだって、ワルにゃん、せっかく出てきた(・・・・)のにー!」

 と、フワフワ広がるスカートを押さえ自分の足元を見る環恩(ワオン)。


 急に、室内灯の光にさらされ、まぶしかったのか、猫耳(ミミコフ)が、クシャミをした。

「ふにゃッコフ!」

 その弾(はず)みで、足を滑らした猫耳は、ゴロリと転がり落ち、宇宙服の丸いバイザーに―――驗(シルシ)が、恐怖を感じた、空虚な丸鏡に―――。


「当方には、『ワルワラ=ミミコフ』という、れっ―――スコン」

 何故か、再び口上(断末魔)を始めた猫耳は、圧縮空気が抜けるような音を立て、呑み込まれた。


「「「あっ!」」」

「ワルにゃぁん!?」

 環恩(ワオン)は、腰が抜けたかと思うほどの、脱力感と共に、宇宙服にすがりつく。

 生徒たちも、一応ミミコフを案じてか、宇宙服を囲んだ。

 驗(シルシ)が、データグローブでワルコフのフタ(・・)を持ち上げて中を見たが、空(から)っぽのままだ。


「―――ワルにゃーんっ!」

 ふえーーーん、ええーーーんと、子供の声で、大粒の涙を落としていた、うら若いスタイル抜群の美人はスックと立ち上がった。

「だから言ったのにー! 本来、野良NPCが継続して存在できる確率はぁ、とぉーっても低いんですからねぇー!」

 コウベちゃん達が珍しいのっ、ワルさんなんて問題外っ!

 キッと、生徒たちを睨みつけるが、猫耳メイド(ミミコフ)を虚ろな底なし鏡(まるがお)に、たたき落とした、くしゃみ(・・・・)の原因は、環恩(ワオン)ご本人である。

 それにキツい視線は、刀風(カタナカゼ)に対しては、逆効果(・・・)だったようだ。大柄な少年は、頬を赤らめ俯(うつむ)いた。


 ポコン♪ポコン♪ポコン♪

「何よ?」「な何だぜ!?」

 辺りを見回す、凸凹コンビ(マガリカゼ)。


「共有金庫に何か入ったぞ?」

 驗(シルシ)が、両手を広げて、共有金庫を拡大すると、『NEW!』の文字が出現している。

 半透明の格子状のグリッドの中に、驗(シルシ)が確認したときから増えているアイテムが数個。


『クイズ◯✕ガンマンのゲームデータ』

 コレ、ワルコフの野郎に呑(の)まれたヤツだぜ!


『紐(ひも)』『パネル(小)』

 コレは俺が、モノケロス戦の準備で使ったヤツだろ。


『音声ライブラリ:プロファイルイメージデータ』

 コレは、『禁則事項リストボックス』に入れたヤツよね? なんで共有金庫に入ってんのかしら?


「■(ワルコフゥ)ハテ? 何故(ナゼ)デショウ?」

「何故でしょうって、オマエが知らなきゃ、誰が知ってるってんだ!? 宇宙服(ワルコフ)―――」

 バーニアを噴射し、立ち上がった、全長25センチの宇宙服は、全身で◯(まる)を2つ作り『8』の字を描いた。コレは正式な敬意を表す物にはあまり見えない。HMDお化け(シルシ)を見上げている、この宇宙服は、よくふざけるのだ。


「「「ワルコフッ!?」」」「ワルさぁん!?」


「オマエ、大丈夫なんか! その宇宙服(からだ)、割れてたぜ!?」

「すっごく、気持ち悪かったんだからねっ!?」

 側面に入った一直線の切断面で薄くスライスされたようになって、気密漏れ所ではない有様だったことなど、お構いなし。腰には、さっきまで見当たらなかった、環恩(ワオン)に貰った、”禁則事項BOX”も、いつの間にか戻っている。

 依然と変わらぬ姿の、船外作業用宇宙服(EMU)が床の上を彷徨(うろつ)く。側面に切れ目など無い。


「■(ワルコフゥ)面妖ナ。ココ14時間ノ記憶(ログ)ガ破損(クラッシュ)シテイマs_」

 音声は作業台の上から届く。環恩(ワオン)が付けた、オレンジ色のネックストラップの先、”瓶(VOIDチャージャー)”。ワルコフがハッキングし、サーモホンの原理で音声出力されている。部屋に内蔵されている(作り付けの)立体音響サラウンドシステムを介した方が、余程、安易だろうが、ワルコフのキャラ設定上、文字チャットを経由しないといけないらしい。


「ワルさぁん! ワルにゃんは、どごぉーーーー!? うわぁーーん!」

 環恩(ワオン)は、戦闘態勢を解(と)いて共有金庫を引っかき回している。中にミミコフが格納されていないかを確かめていると思われる。


「姉さん、ソンナトコ(・・・・・)に入ってる訳ないでしょう?」

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