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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
14:ワルコフ爆誕!

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94/153

1:ワルコフ爆誕! その3

2016/11/07 10:33 文体など修正。

2016/11/07 8:23 コレで要素:ワルコフが、名目上はクリアになったので、やっと、最後の重要な要素に取りかかれます。何卒宜しくお願いいたします。

 それは、褐色(かっしょく)の太いしっぽを器用に回転させ、ピタリと滞空。そのまま手ばたきで旋回、驗(シルシ)へ向き直った。


 「当方には」

 ドン!

 明るい紺色のワンピース。


 「『ワルワラ=ミミコフ』という」

 ドドン!

 ポケットの付いた真っ白なエプロン


 「れっきとした正式名称(めいしょう?)があるコフーっ!」

 ズドドン!

 ヘッドドレスを押しのけるように生えている褐色の猫耳。


 「正式な捕虜(ほ…りょ?)としての待遇(とく…ぐう?)を要求(よう…きゅう)するものであるコフーっ!」

 ドガァァァァン!

 血気盛(けっきさかん)んに、辿々(たどたど)しい日本語で宣言する全長約20センチの背後、何も無い空中にカラフルな爆煙(ばくえん)が立ち上る。


 回転しっぽを更に高速で回し、鋤灼(スキヤキ)驗(シルシ)の、目の前まで進み出た、自称『ワルワラ=ミミコフ』は、カラフルなピンク色のくせっ毛を振り回す。


 そして、遠くを見るときのポーズの両手版、両手で眉毛に手刀を当てるようなポーズ。腰を落とし、こつんとスエードのブーツの先を揃えて見せた。

 そう、数字の「8」にも見える、惑星ラスク宇宙軍式正式敬礼が炸裂したのだ。

 ちなみに、スターバラッドの世界に、宇宙軍は無い。無いのだが、設定上存在し、軍属であるNPCも数は少ないが存在している、とは環恩(ワオン)の談。

 相変わらず、「バカにしてんのか」と言いたくなるような、ポージングだが、本人は至(いた)って真剣な表情。


 さっきの、爆発光を見た凸凹2人組が、階段を駆け上がってきたが、時すでに遅し―――。


「なぁにこれ? どういうことなのぉ? かわいいかわいぃいぃ~」

 『ワルワラ=ミミコフ』を、ガシリと抱きしめたまま、廊下にペタンと座り込む魔女帽子装着型美女。


「ワルさんの中身、こんなにかわいかったんでちゅか~!?」

 ぎゅーっと全身で抱きしめるように掴んで放さない。

 そうなのだ、この美人(ワオン)さんは猫耳とかフィギュアとかが大好物なのだ。

 『猫耳+環恩(ワオン)=ポンコツ美女』という計算式が完成した。


「笹ちゃん先生、今日は、……何か、すっげえ、決まってね!? 可憐だぜ!」

「ちょっと、鋤灼(スキヤキ)、何それ、気持ち悪いんだけど……、あと、そこの刀風も気持ち悪いわよ」

 などと、ポンコツ美女にも、全く動じず、ズカズカと寄ってくる、刀風(カタナカゼ)と笹木禍璃(マガリ)。

 大柄は、細身のデニムに、パーカー。袖(そで)に日本刀の意匠が入っている。

 小柄は、セーラー襟の付いた膝丈のワンピース。裾(すそ)に、猫の図案が大量に刺繍(ししゅう)されている。


 鋤灼(スキヤキ)驗(シルシ)が、手に持ったままの、ワルコフの抜け殻。

 頭頂部を蝶番(ちょうつがい)にしてパカリと開いたままの、宇宙服。

 さっき、ポンコツ前の美人特別講師が、手にしていた、30センチ大の物のように、光の粒子になって消―――えない。

 時折、光の粒子が、煌(きら)めくが、一向に消える気配がない。


「消えねえー?」

 どうしたものかと悩み、一歩(いっぽ)、歩(ある)いて、禍璃(マガリ)の方へ突き出す。


「ちょっと、気持ち悪いって言っっってんでしょーがっ!」

 シシシシッ。ドドドドッ!

 腰の入ったローッキック連打で応戦する禍璃(マガリ)嬢。


「そも、そも、鋤灼(スキヤキ)も、何その、真っ黒い、HMD! キモッ!」

 禍璃(マガリ)の、ローッキックの打点が、上へ上がっていく。

 威力を増す、本気の蹴り。舞い上がる、白地に映える猫の刺繍(ししゅう)。チラチラと、ワンポイントの猫の図案が見え隠れする。すっぽ抜けて、廊下の奥へすっ飛んで行った来客用スリッパを、1/6ルフトがトタタタタと追っていく。


「痛って! それ…見せてんの―――痛ってーな! やめろ、ケーブルが絡まるだろっ!」

 追い払われた少年は、長身の旧友に助けを求めるが、刀風(カタナカゼ)少年は環恩(ワオン)の前に正座中。

 かわいい、かわいいー♪

「そっかな、どっちかっつうと、綺麗っつうか……」


 足癖のよろしくない、小柄な女子生徒から距離を取った真っ黒ゴツゴツ頭(スキヤキシルシ)。

 ワル殻(がら)を小脇に抱えたまま、自分の頭(HMD)から生えた、ケーブルをサバいて、捻(ねじ)れを、解(ほど)いていく。


「―――よし。仕方ねえな、共有金庫にしまっとくか」

 その驗(シルシ)声を聞いた、刀風(カタナカゼ)及び禍璃(マガリ)は、数日前に環恩(ワオン)から貰った簡易型のAR眼鏡を、取り出して顔に掛ける。

 どんなに、立て込んでいようが、AR主観(視界)を確保するのは、ゲーマー特区に生きる者の習性なのだろう。

 抜け殻宇宙服(元ワルコフ)と内容物(ミミコフ)は、裸眼視(らがんし)出来ているようだが、ワルコフがハッキング(介入)していない、驗(シルシ)や環恩(ワオン)主観の、AR表示は見ることは出来ない。

 驗(シルシ)や環恩(ワオン)が主接続となるため、簡易AR眼鏡が有れば、仮想空間を視認できる。この場合の”画素対応平面”は、簡易眼鏡のレンズ部分と言うことになる。


 共有金庫にワルコフの抜け殻をしまっておこうと、指先でポイントして掴む。アイコン化した、”抜け殻”を金庫に持って行くと、……エラー表示が出た。


 ボゴン♪

『ブロック占有40個:空きスペースがありません。』

 ピロン♪

『アイテムの整頓・売却を行いますか? <はい/いいえ>』


「なんだこの! ブロックサイズ、デカすぎだろっ!?」

 指先から、アイコンが垂(た)れ、棺(ひつぎ)のようにパカリと開いた宇宙服が、足下に復元された。


「よっと! どうした? 鋤灼(スキヤキ)ィ?」

 ようやく、笹木環恩(ワオン)”私服大鑑賞会(コレクション)”を大好評のうちに閉会した刀風(カタナカゼ)が、立ち上がり、奇声を発した。


「なんだそりゃ!? ワルコフ割れてんじゃんっ! 気色悪(わり)ぃー!」

 今更ながら、長身の少年も、事態の異常さに気づいた。

 仮にもワルコフとパーティーメンバーである生徒達は、揃いもそろって、宇宙服(ワルコフ)の安否に興味は無いようだ。


「それがっさー、”特選おやつ”大量に食い散らかしやがったから、とっ捕まえたんだけどさー」


 かわいい、かわいい♪ ギニャーっ!

 座り込む担任講師を、一瞥(いちべつ)し、会話に戻る生徒たち。


「それで?」

 眉間にシワが寄っている禍璃(マガリ)が話の続きを促す。

 腕組みして、仁王立ちであるが、裾(すそ)の猫刺繍(ねこししゅう)が乱暴さを緩和(かんわ)している。


「で、捕まえたら、妙に小(ち)っせえんだよ。おやつと一緒に、何か悪いもんまで喰ったみてえでよ、下痢いや、脱皮? を2回して、アレ(・・)が飛び出た。で、今ココ。俺にはさっぱりわかんねえから、これ以上は説明できん」

 ”物議(ぬけがら)”と、ミミコフを順番に指さした。


「姉さんが買ってくる、猫耳フィギュアが入ってる、パッケージみたい」

 ”玩具”の入っていたパッケージのようなソレ(・・)をじっと見る3人。

 普通パッケージは動かないし、ゴミとして捨てるまでは存在し続けるものだ。

 ぞんざいな作りとはいえ宇宙服の、関節や、気密性やなんかの、重要な一切合切を、側面の綺麗な切断面(・・・)で、二分(にぶん)されているのだ。

 顔を見合わせる3人。この、ゴミ(・・)どうするよ? と言わんばかりである。


 チッ♪

 驗(シルシ)のデータウォッチが、『08:00:00UTC+9』を告げる。

 いけねっ! もう、マジで何とかしねーと、100万宇宙ドルだ!

 なにそれ、どういうことよ。

 なんだぜ? 今日は、コウベ等の何かの試験(テスト)じゃなかったのかよ。

 少年は、環恩(ワオン)に見せた赤色の平面を、再び表示させる―――。


「ワルちゃん、いえ、ワルにゃん~!」「ギニャニャ!」

 約1/8スケール差を考えず、囓(かじ)りつかんばかりに、頬(ほお)ずり攻撃中。


「―――姉さんを、落ち着かせて、専門家の知恵を、借りないとダメねーっ」

 ため息混じりに、1/6ルフトが拾ってきた来客用スリッパを、ありがとうと言って履き直す小柄な少女。セーラー猫柄ワンピが異常に、背丈に似合っている。


 ぎゅーっ! ギィニャアァァァァァァァァ!

 謎の存在。自己申告によれば『ワルワラ=ミミコフ』。

 状況から考えれば、ワルコフが変化したもの。

 違ったとしても、ワルコフに由来するのは確かだろう。


「なんか、可哀想だぜ?」

 環恩(ワオン)の魔女帽子(フルダイブ・デバイス)は、S4規格(センシングフォー)までのAR対応がなされている。驗(シルシ)のようにデータ・グラブが無くても、意識せずに自身のシルエット(・・・・・)をコントローラー化できる。どう言うことかというと、つまり彼女のアナログ入力のハグ(ぎゅーっ)には、AR側(ミミコフ)へのシステム的な安全弁(・・・)が効き難いってことだ。


「―――助けてやるか」

 真っ黒いゴツゴツ頭(VRHMD)を、少女へ向ける驗(シルシ)少年。


 禍璃(マガリ)は、環恩(ワオン)の頭から、魔女帽子をスポンと引っこ抜いた。

 強烈なハグから解き放たれた自称ミミコフは、環恩(ワオン)の腕をすり抜けたあと、ゆっくりと、滑空し始めた。

 そのまま少年たちの足下を尻尾フル回転で通り抜けようとしたが、面白長袖の少年に、苦もなくデータグローブの片手で掴(つか)まれた。


 背中を鷲掴(わしづか)みされた、内容物(ミミコフ)は、再び宣言する。


 「当方には、『ワルワラ=ミミコフ』という、れっきとした正式|名称(めいしょう?)があるコフーっ!」

 ズドドン!

 「正式な捕虜(ほ…りょ?)としての待遇(とく…ぐう?)を要求(よう…きゅう)するものであるコフーっ!」

 ドガァァァァン!

 何も無い背後にカラフルな爆煙(ばくえん)が立ち上る。


 驗(シルシ)は、ミミコフをひっつかんだまま、自分の部屋へ、取って返す(Uターン)。とにかく今は、

 『ポンコツ美女ー(マイナス)猫耳=VR専門家(ササキワオン)』という計算式を完成させなければならない。


「コフコフ言ってるし、オマエ、歴(れっき)とした、ワルコフなんだろなあ」

「でも、その割には、難しい漢字が苦手見てーだぜ?」

 驗(シルシ)に追従する刀風。

 どうも、ミミコフIME(日本語入力機能)は、ワルコフのと比べると、余り高性能とは言いがたいらしい。いや、ワルコフIME(日本語入力機能)も、記号の候補順が変更(予測学習)されなくて、難儀(なんぎ)してたが。


「とくぐう(・・・・)じゃなくて、たいぐう(・・・・)なー」

 驗(シルシ)は、間違った読み(・・)を、訂正してやる。

 こつんと、再び、スウェードのブーツの先を揃えて見せるミミコフ。

 少年の手の中で、感謝の意を表す、『惑星ラスク宇宙軍式正式敬礼』が、炸裂する。

 

「あらぁ? ワルにゃん! ワルにゃんが居ないっ!」

「姉さん、落ち着いて、そろそろ、出ないと試験キャンセルになっちゃうわよ」

 薄暗い廊下に座りこむ美人姉妹。立ち振る舞いが雑だが、禍璃(マガリ)も、十分、顔立ちは整ってる。


 キャンセル!? キャンセル料金!? と慌てて我に返った、笹木環恩(ワオン)特別講師の腕に光る、開発者用デバイスは、刻々と表示(とき)を進める。

 『24:28:36SBT』『08:03:32UTC+9』

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