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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
13:サインオーガ爆誕!

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89/153

6:コウベ 対 MΘNΘCERΘS その10

2016/10/27 0:18 73話目くらいから、まとめて、表記を読みやすく修正。

2016/10/17 0:20 プロトたんのマンガ台詞無し版を付けました。よろしくお願いします。

2016/10/13 23:36 若干の追加をしました。よろしくお願いいたします。

2016/10/13 16:15 長くなってしまったので、戦闘部分を多少端折りました。よろしくお願いします。

 ぎゅるりっ!

 ―――捻(ねじ)れた少女(コウベ)が、元に戻っていく。

 地面についていた膝(ひざ)が、苦もなく持ち上がり、構えた肘(ひじ)が、敵を正面に捉(とら)える。

 少女は掴(つか)んでいた手首を、開放(リリース)した。


 ヴォン!

 前腕と上腕。その間に発生した、爆発的な反発力(・・・)。

 曲がる関節(ひじ)を境に、電流の向きが逆(・)になる為に発生する、電気的な駆動力だ。

 拳(ナックルガード)は、今までの直線的な加速ではなく、肘(ひじ)関節の自由度に沿(そ)って、射出され、振り下ろされていく。

 腕に浮かぶ黒い点線。コスチューム表面を切り取る謎の配線(パターン)の、ほとんど全部が黒く焦(こ)げていた。

 そのせいか、オレンジ色の放電は整頓(せいとん)されず、所々、放電が切れかかっていて、全身に纏(まと)うオレンジ色は斑(まだら)になっている。


「表面の配線(パターン)はボロボロだけど、裏地のぉ、昇圧回路(しょうあつかいろ)、……画素による手製の(・・・・・・・・)雷撃発生回路(・・・・・・)はぁ、辛(かろ)うじて大丈夫ー、みたいですねぇー」


「あの、”切り取り線(てんせん)”ってさあ、……ヒソヒソ……”自動屋台《ディナーベンダー》”の……ヒソヒソ」

「そうね……”自動屋台《ディナーベンダー》”が飛ばしてきた(・・・・・・)”◎(マル)”に似てるわよね……ヒソヒソ」

「そう考えっと、……ヒソヒソ……ちょっと物騒(ぶっそう)だぜ……ヒソヒソ」

 ”自動屋台(ディナーベンダー)”に関する一連の事件は特区条例に基づいて、取り交わした契約条項により、”特区外秘(まるひ)”となっている。


 ―――上半身の回転によって、斜めに振り下ろされる拳。

 蹄(ひづめ)の先端にピンポイントで打撃を与え、青黒い雷撃の直撃を回避した。

 チィーーーーーッ、

 遅延信管は正常に作動し、弾かれた青黒い蹄(ひづめ)は、即座に距離を詰めてくる。


「この技(・・・)、さっきも使った―――」

 コウベは体が回転するまま、回し蹴り(・・・・)を放つ。

「―――のと違う(・・)!?」

 驗(シルシ)は近影カメラにもなってる”金属球”を、コウベの全身が映り込む位置で自動操縦(オート)に切り替える。

 白焚(シラタキ)の操作していた”金属球”も、遅れて、一角獣(モノケロス)を追従する。

 プロトたんの、両サイドに『米沢首(ヨネザワコウベ)』と、『MΘNΘCERΘS(モノケロス)』の全身映像が固定表示された。


 その映像の中で大写しになった、コウベの蹴りは、上体の回転に相殺(うちけ)され、腰を回す力が入れられ無かったようで、失速していた。

 振り抜けなかった脚を、そのまま、ヒョロヒョロと下ろす。何とか、得意の裏拳(バックフィスト)を放つが―――


 裏拳を、このまま振り抜くと速すぎて、一角獣(モノケロス)には当たらない(・・・・・)。それどころか、一角獣の”ダブル後ろ脚”を、カウンターで食らってしまいそうだ。

 コウベは、肩を回転と逆方向に入れ込み(・・・・・・・・)、真っ直ぐ伸びた腕を、その場に残す(・・・・・・)。

 それでもタイミングが早すぎて、命中しそうに無い。

 踏み降ろしたばかりのコウベの蹴り足へ、環状放電(リップルスパーク)が、大量に流れ込んでいく。


 バリバリバリリッ!

 ドゴッ!

 直線的に射出されたブーツの踵(かかと)。わずかな距離ながらも爆発的な速度を、余すところなく接地面に伝えようと、靴先(つまさき)に入る力《ちから》。

 コウベは、降ろしたばかりの、不発のキックを”電磁加速《リニア》”で直下へ射出。”回転(スピン)”を踵(かかと)で踏んで(・・・)押さえ込んだ。

 ーーッ、ピピッ♪

 ようやく作動するナックルガードに搭載された信管(爆破スイッチ)。


 シュドドドドドドドドドッ、ガアン!

 ガコーンッ♪


 爆音に混じる、クリティカルヒット効果音(SE)。

 プロトたんの、背後、コウベの迎撃技を、図解説明する、ガイドパネルが更新される。

 キックを正常に撃てなかった為、”裏拳の攻撃判定”を持続した結果(・・・・・・)、クリティカルヒットが叩き出された”と言うことらしい。


「捻(ひね)った体を戻す力で、連撃を叩き込もうとしたら、タイミング合わなかった? ……みたいだぜ」

「でも、そのお陰で、クリティカル出ちゃったってこと!?」

 刀風(カタナカゼ)の座る座席に、取り付いていた禍璃(マガリ)が、唖然(あぜん)としている。


「だから、……こんなん、……教えてへん……のやけど」

 そして、”コウベ設計師(たこ焼き大介)”は、設計に無い行動を再び愚痴(グチ)ってる。


 パリン。パリン。

 コウベの胸の、時計の針で言えば4時半と7時半の、赤い三角(ロックオンマーカー)が消えた。

 だが、一角獣を包み込む青黒い、”当たり判定(凶器)”は、尚(なお)もコウベに接近(せっきん)する。

 弾(はじ)かれた一角獣(モノケロス)は、後ろ脚を引っ込め背を向けた(・・・・・)。

 そして、後ろ足の内の一本を、横から繰り出してきた。その脚には青黒い濁流(だくりゅう)が、際限(さいげん)なく流れ込んでいる。

 ―――鹿ソバット(・・・・・)だ。


 3撃目までは、何とか防いだが、コウベが置かれた状況は最悪だった。

 流血で塞(ふさ)がれてしまった左眼側の、削られた視角。

 不発の蹴りで、崩れたバランス。

 裏拳を放ったばかりで、直ぐに撃てる次弾も無い。

 ”重力補正”による、自重コントロールを以(もっ)てしても、脚が伸びている状態では、次の行動に、数拍(すうはく)の、遅れが生じる。


 ピピチュイ♪ ピッピチ♪

 小鳥が、試作コード65が、直上を見上げ、何か言った。

 見つめ合う少年と小鳥。

 その丸い眼は、やや、吊り上がり、「ソコだ! 叩き込め!」と息巻いている様に見えなくも無い。


「コウベ! な何でもイイ! 有りったけ、ぶち込めっ!!」

 驗(シルシ)が、顔を上げ、公園中に響くほどの大音量で、叫んだ。

 驚く、VRE部一同&管理者。

 金属球を介し、驗(シルシ)の声は、米沢首《ヨネザワコウベ》に、届いたようだった。


 ゴウンン―――輝く頭上の真空管(ブラックボックス)。

 少女の身体のどこか、何かの機能に、大量の送電が開始された。


 裏拳から吐き出された”オレンジ色の爆炎”は、まだ放出していて、回転をわずかながらも継続させる(・・・・・)。

 背骨を軸にして回転する半身。

 蹄(ひづめ)を避けるため、上体を後方へ反らす半身。

 両半身は繋(つな)がっているため、自然とコウベの手足が開く形(・・・)になる。開いていた左手にナックルガードが再装填(リロード)された。


 突き出される凶器(ひづめ)から逃れようと、コウベは、更に上体を反らせるが、両者とも、今の攻撃ではヒットバックせず、中々、距離が開かない。

 これはコンボ扱いの後ろ足3連撃で―――、とプロトたんの解説が入る。


 右眼を凝らし、モノケロスの一点を見つめる、美少女の頬を、演出効果の汗が伝う。


 カカカカッ!

 真空管(ブラックボックス)が、光量を増し、少女の姿が掻き消える。

 今回の爆発じみた光は、”強すぎる光で出来た放射状の影”をも、飲み込んでしまった。

 チィーーーーーーーッ、信管の作動音だけが会場に届く。


「見えへん、……でっしゃろ! 続きー見せ……とくれやすー!」

 と、歌色(カイロ)は”映像空間(決戦場)”に瓶を投げる。

 観客達(ギャラリー)も、”超小型銃”や”特選おやつ”や”空き瓶”なんかを投げ始める。

 『決戦中に持ち込めるのは、パーティーメンバー間のチャット経由の”各種起動コマンド”程度に限られます。』

 『それ以外の、VRアイテムはすべてイベント主催側で回収し、設営費用に当てられます事をご了承ください。』

 という注意ダイアログくらいしか見えなくなる。


 消える瞬間のポーズは奇妙なもので、上半身を低くしたまま、地上でクロールの息継ぎをしているかのような。


 ピピッ♪

 シュドドドドドドドドドドッン!

 バリーーーーーーンッ!

 光に包まれている中、蹴る一角獣と、殴る少女が激突した瞬間。

 微(かす)かに見え隠れした、ソレ(・・)を目撃し、驗(シルシ)は、声を出す。

 次いで刀風(カタナカゼ)も、声をあげた。


 光の幻惑が薄れ、半歩押し戻された位置へ、姿を現した少女(コウベ)。

 左右入れ替わったが、光に眩(くら)む前と、だいたい同じポーズで立っていた。左拳、左膝(ひざ)を同時に(・・・)前に付きだしている。

 頭の上の真空管(ブラックボックス)は見事に粉砕され、土台の金属部分と壊れた内部構造を残しているだけだ。


『米沢首(ヨネザワコウベ)__/LV0』

『HP_1/50』

 少女の頭上の表示(HUD)に変化は無い。


 一角獣(モノケロス)は、コウベの前に座っている。

 しかも、女の子座りっぽく、ペタリ。


「―――何があったのよ!?」

「―――わからん……どすな!」

 ―――ガヤガヤガヤガヤ!?

 勝敗を決する一瞬が見られなかったために、右往左往する、女子部員2人と観客達(ギャラリー)。


 VR専門家(ササキワオン)と、運営サイドのシステム管理者(シラタキルウイ)は、デバッグツールを展開し、滝のように流れていく、ログやシステムメッセージと格闘している。


「おい鋤灼(スキヤキ)ィ、……こいつぁ(・・・・)!?」

「おう刀風(カタナカゼ)ェ、……間違いねえ(・・・・・)!!」

 そんな中、男子生徒2人には、なにやら、思う所があったらしい。

「「―――必殺技だっ!」」

 声を揃えて叫んだ!

 ―――へー、必殺技かーそりゃ凄いもんだなあ。ガヤガヤ。

 ―――お嬢ちゃん、やったじゃないのよさー。キャアアア。

 驗(シルシ)達の声を聞いて納得している観客達。

 現に、米沢首(ヨネザワコウベ)は運営サイドの管理下の中、レギュレーションに則(のっと)って、―――とうとう青い獣を追い詰めたのだ。問題も文句も無い。


 ただ、女子部員2名は、

「ちょっと、必殺技ってどう言うことよ!?」

「なにか、……見えたん……どすか!?」

 と驗(シルシ)達に詰め寄っていく。


『MΘNΘCERΘS__/LV52』

『HP_1/6400000』

 ビロロロ。

 獣の頭上の表示(HUD)が変化し、頭の上で星が円を描く。

 敵は絶賛気絶(ぴより)中だ。

 フラフラしている鹿頭、垂直に立つ巨大なツノ。


 沸き上がる歓声の中、米沢首(ヨネザワコウベ)は、右拳にナックルガードを再装填(リロード)する。

 怒号一発(ギャーッ)! 繰り出される光点無しの、正拳突き。


 ごつん。

 ドズズン!


 パリン。パリン。

 コウベの胸に残っていた、赤い三角(ロックオンマーカー)が、時計回りに、全て消えた。


 落ちたツノは、アイテム在中(入りの)のコンテナに変化し、米沢首(ヨネザワコウベ)は、真後ろへ倒れた。


『YOU SUCCEEDED IN DESTRUCTION OF THE BOSS MONSTER.』

 ピロン♪

『〝MΘNΘCERΘS:LV52〟 WAS DESTROYED.』

 ピロロン♪

 勝者を称えるファンファーレと共に、決戦終結のダイアログが大量に表示されていく。


 最近では、その実在さえ疑われて始めていた、超レアキャラ(PLOTーAN)が右手を掲(かか)げ、高らかに宣言する。


「勝者(ウィナー)、―――」

PLOT-AN、初登場の時の台詞無し版です。

挿絵(By みてみん)


http://www.pixiv.net/whitecube/user/5479338/illust/52084964

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