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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
13:サインオーガ爆誕!

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87/153

6:コウベ 対 MΘNΘCERΘS その8

2016/10/06 18:30 暫定気味ですが。よろしくお願いします。

 青い獣の肩が沈み込む。

 曲がる前足の放電が、複雑なパターンを描く。

 背後のツノを覆(おお)う螺旋(コイル)は、黒い放電を続ける。ツノから発せられる青い光が、青黒く塗り替えられた。

 獣の尻が沈み込み、背骨がバネのようにギギギとたわむ。

 膂力(りょりょく)を最大限に溜め込み隆起した後ろ足。

 重複した環状放電(リップルスパーク)が、ゆっくりとした動きで複雑に折り重なっていく。

 持ち上げられた首は狙いを付け、”ツノ”は水平になった。

 それは、正(まさ)に、矢をつがい、引き絞られる弓。


 ポポポポポッ。

 少女の胸元に咲く、執拗(五重)に掛けられた、立体的な赤い三角形(ロックオンマーカー)。


 ズドンンンンンンンンンン!

 青い雷が、大気を熱し、膨張させ、身の竦(すく)む爆音を轟(とどろ)かせた。


 ヴァリヴァリヴァリッ!

 荒れ狂う極太の大電流(・・・)が放たれ、眼前の少女(コウベ)へ向かって(誘導されて)行く。

 その先端、青黒い矢尻(やじり)と化した一角獣モノケロスは、空中を駆けた。

 なにもない空中へ、穿(うが)たれる、蹄(ひづめ)の跡。

 ドガドガドガガ! ヴァリヴァリヴァリリッ!


 ジグザグの軌道を描いて、到達する矢の先端。

 上体を反ら(スウェーバック)して、躱(かわ)す少女(標的)の、カモシカのような足に大量に流れ込む、オレンジ色の環状放電(リップルスパーク)。


 青黒い矢尻(モノケロス)も、カモシカの前足に環状放電を流し、蹄(ひづめ)を射出してきた。

 高速で接近する右前足。


 少女は、左踵(かかと)を”電磁加速(リニア)”で打ち出し、左半身を後ろへ反らすことでかわす。

 左肩を反らせる動きのまま、極至近距離の右ショートアッパーを放つ。

 チィーーーーーーーッ、炸薬は炸裂しない。遅延信管の作動を制御(コントロール)することは出来ないようだ。


 それでも、出かりの右前足をショートアッパーで迎撃できた。

 迎撃時に押(ノックバック)されることで、僅(わず)かに出来た距離(時間)を使い、コウベはコスチュームの体表面から、大量に放電をかき集める。


 ジジジッヴァリバリッ、ズドン!

 そして、即座に、右踵(かかと)を全力射出。

 飛び退くと同時に、振り上げていた右手を、裏拳気味に、打ち下ろし―――ピピッ♪


 シュドドドドドドドドドッ!

 オレンジ色の火煙(かえん)に包まれる一角獣。

 青黒く輝く、ツノを突き出し、その大電流で、火煙(かえん)を散らす。


 お互いに有効打は無いが、少女(コウベ)は、一角獣の進行方向から、軸をずらし、なおかつ、数メートルの距離を取る事に成功した。

 このまま下がり続ければ、背後の木々に挟まれ、身動きがとれなくなる所だ。


 胸元に、花のように張り付く、5つの赤い三角形(ロックオンマーカー)の内の、時計で言ったら、2時すぎのヤツが、パリンと割れる。


「ザザッ―――コウベ、”小鳥”が何か言っとるぞー」

「ザザザッ―――ピッピピピュイッピュイチッ♪」

 右側空中、すり寄ってくる、映像空間(シルシたち)に、眼を走らせる。


「なんだと!? ピッピチうるさ―――!」

 青黒い稲妻が速度を変えずに、軌道を変えて追撃してくる。

 コウベは、背後へ飛び退く動作の、最頂点で、まずバレエダンサーの動きで、上体だけ回転させた。

 捻(ねじ)られた、体軸(背骨)を、走り高跳びの選手のように、跨(また)ぐ芸当を見せた。蹴り足で、ジャンプして、その蹴った足で着地をしたのだ。


「ザザッ―――なんだっけ? あれ、あの、足だけで戦うの」

「ザッ―――カポエイラだろ。つか、今の動きはアレじゃね? ……えっと、アレだぜアレ。地面で踊るダンス」

「ザザッ―――ダンス? ブレイクダンス?」

 そうそれ。あーそうね、ソッチの方が近いかしらね。


 やや距離が詰まったが、獣に背を向け、縮こまる、着地姿勢は、爆発的な急加速(ロケットスタート)を、生み出した。


 ドッン!

 加速。

 スタート地点から、およそ5メートル。

 ”重力補正”スキルによる、自重改変。スムーズな重心移動が可能になる。


 決戦場の外周に沿って、加速していくコウベ。

 速度をもてあまし、直進しない矢が、確実に距離を詰(つ)めていく。


 ドッドン! ジ、ジジッ。

 加速。加速。

 スタート地点から、目測で65メートル。

 ”電磁加速”による、踵(かかと)の射出。異様なまでの推進力を得る。


 バリバリバリバリ!

 標的(ロックオンマーカー)を追う一角獣。

 距離は縮まり、不規則な雷状の軌道先端は、既に標的(コウベ)を追い越している。


 ドドンドドンドドン!

 加速。加速。加速。

 スタート地点から、推定200メートル。

 ”重力補正”スキルによる、歩幅に合わせた重心の射出。

 継ぎ目のない推進力は、加速状態(・・・・)を維持し続ける。


 トップスピードはどれくらいか。

 コウベの背後、乗用車2台分くらい、距離を空けた映像空間の中から

 マガリが、指輪型デバイスから測定アプリを取り出し、測定結果を告げた。


「ザザッ―――時速……230Kmだって」

「ザザザッ―――”一角獣(モノケロス)”の方は、……測定不能だぜ」

 海賊マッチョ外装(マガリ)に寄り添い、測定結果を覗き込む、魔女っ娘外装(カタナカゼ)。

「ザッ―――うひー。しかも、あいつら、曲がっても、あんまり速度が落ちねーから、もうなんか」

「「「ザザザッ―――眼で追えねー」」ないわー」


 驗(シルシ)たちが見ている映像空間は、現在、決戦場全体を、やや上空から見ている遠景(超ロングショット)だ。

 奴らの速度(デタラメ)に追従するには、これしか方法(カメラワーク)がないのかもしれない。


「ザザザッ―――おーい。ちょっと見づらいんだけど、さー」

「ザッ―――そうだわね、あの娘の表情も、ワイプで欲しいじゃなーい」

 広場から、そんな声が届く。


「ザザッ―――ふむ、……そうですねー。ちょっと見やすく(・・・・)しましょーか?」

 白焚(シラタキ)が、”自動機械”から飛び降りた。


    ◇


「音声入力、赤点號(レッド・ノード):モード変更:観測点(オブザーバーモード)、公式イベント即時開催、権限行使:白焚畄外《シラタキルウイ》、画面表示(HUD)タイプ、……PvB:世界大会決勝戦準拠」


 親指を”イェーイ♪”と突き出し、NPC米沢首(ヨネザワコウベ)に接続(リンク)している映像空間(パーティーチャット)へ、押し当てた(・・・・・)。

 ボゥワァン♪

 白焚(シラタキ)の背後、控えていた”自動機械《レッド・ノード》”が、謎のプログラム起動音(SE)と共に屹立(きつりつ)した。足を伸ばし、正面からややズレた位置に付いているカメラアイが稼働(かどう)する。

 周囲の測量(スキャン)を開始する。筐体(カウル)の危険な(明るい赤)色からすると、索敵(スカウティング)といった方が良いかもしれない。

 カメラアイの周囲を時計回りに回る光点が3周半した後、”自動機械《レッド・ノード》”の円筒状の天板がスライドして持ち上がった。


「3・2・1・キュー!」

 両手の指を立て、体重を掛け、”自動機械《レッド・ノード》”の天板を押した。

 白焚(シラタキ)の、両サイドの巻き毛が揺れる。黙ってれば、いや、黙ってても、”ちょっと横柄な印象のお嬢様”にしか見えない、美人OL(シラタキ)外装の、美人システム管理者(シラタキ)は、周囲を一変させる(・・・・・・・・)。


 ”自動機械《レッド・ノード》”直下から、発振された光の円が周囲に広がっていく。

 接続先(コウベ)から、離れた空中に浮かんでいた、2つの映像空間は、板状のホログラフィー映像を投影する金属球に変化した。

 屋根付きの休憩所は、各種の観測装置であふれかえる、大会設営本部に。

 光の粒子に包まれた観客たちは、気がつけば、整頓された応援席に座らされていて、ざわつき出す。

 その正面に浮かぶ、何とか状況を拾い上げようと奮戦していた映像空間(パーティーチャット)(ミラー)が、7色の爆発で、霧散した。


 カラフルな煙が晴れ、ソコに現れたのは、決戦場を立体的に表示するグリッドに囲まれたプロユースの巨大な映像空間。元々低くは無かった解像度も跳ね上がり、遅延演出も全くない。

 米沢首(ヨネザワコウベ)や、一角獣(モノケロス)のオンラインステータスを表示するウインドウや、刻々と変化する状況を解説するPLOT-AN(メインヒロイン)が立つステージまでが設置されている。


「こりゃ、一体!?」

「ひゃわぁぁ?」

「いいじゃねーか! やるもんだぜ、白焚(シラタキ)さんよ」

「そうね、見やすくて助かるわ」

 部員一同、揃ってペコリとお辞儀する。


「まあ、この面白いカードを、見逃す運営がいたら、バカってことですよ」

 ここからの映像、運営で預からせていただいてもよろしいでしょうか?

 今後、金銭など発生する利用に関しては、規定の料金をお支払いいたしますので。

 付きましては、と赤く分厚い厚紙をカーディガンの小さなポケットから取り出した。

「みんないいかしら?」と、確認を取る環恩(ワオン)。

 コウベちゃんのー姿もー含まれるけどー大丈夫かしらぁー?

「米沢首(ヨンベザワコウベ)のNPC契約は、正式に取り交わされておりますので、問題は無いのですが、……一応、歌色ちゃんが起きたら、再度確認することに致しましょう」

 などという、特区では見慣れた、やり取りが終わり、それぞれ、設置されているブースに付いてる名札の席に着席した。


「レディース アンド ジェントルマン!」

 PLOT-AN(メインヒロイン)は、すっかり様変わりした公園の中央、メインステージから、観客へ向けて、にこやかに(・・・・・)手を広げている(・・・・・・・)。

 あれ、プロトたんじゃね? あ、ホントだ。初めて見た。カワイー。そうでもなくね?

 など、レアな案内役の存在自体(・・・・)が物議を醸しだしている中、決戦場を、オレンジ色の雷光が駆け抜けていく。

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