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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
13:サインオーガ爆誕!

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84/153

6:コウベ 対 MΘNΘCERΘS その5

2016/10/01 18:15 中々進みません。よろしくお願いします。

 米沢首(ヨネザワコウベ)の斜め前方、環恩(ワオン)達と繋がっている方の、映像空間(パーティチャット)から、部員達の勝手な応援に続いて、残念会会場からの音声(お声)も届いております。


「ザザッ―――あら? コレは祝勝会(・・・)に、改めなければいけませんね」

「ザッ―――そうどすなあ、……でも、未(ま)だ未(ま)だ、勝負は、……解りませんどすえ?」

「ザザザッ―――そう言えばぁ、さっきー、”特選おやつ:パーティー用”頂いちゃったんでぇすよぉ、鋤灼(スキヤキ)君達にーあげてくれーって」

「ザザッ―――それは豪気ですねえ。結構、お高い筈ですが……」

「ザッ―――あそこの、着ぐるみさんが―――あら? 居ない!?」

「ザザッ―――着ぐるみ? ……それって、もしかして、”片目に眼帯をしたウサちゃん”ですか?」

「ザッ―――あらぁ? 何で知ってるんですかぁー? お知り合いー?」

「ザザッ―――ええまあ、ちょっと。……何してんのよ、あの、ブラコンッ」

 ブツブツ言って、額に手を当て項垂(うなだ)れる、白焚(シラタキ)女子。


「ザザザッ―――えー? 何かぁー?」

「ザッ―――いいえ、何でもありませんよー」

 環恩(ワオン)へ笑いかける、巻き毛美人は、小さいコップへ注(つ)いであった”特選おやつ(液体)”を一気に飲み干した。


 一息吐(ひといきつ)いてから、白焚(シラタキ)が、タンジェリンオレンジのカーディガンのポケットから名刺を取り出した。

 そして、写真の部分を指先で押して、小さな項邊歌色(コウベカイロ)美少女Ver(ポートレート)を名刺の上に、立体(ホログラフ)表示させる。


「ザザッ―――かわいーですねぇー❤」

 テーブルの上に置かれた名刺から生える人形(フィギュア)サイズの美少女を、酒の肴(さかな)にし出す意地悪(シラタキ)女史。

「ザッ―――……ヤ゛め……とグれ……やズぅー」

 取り乱す、”悪夢の処刑人(コウベカイロ)”。


「ザザッ―――私もぉー、貰ったんだったぁー❤」

 負けじと、テーブルの上に美少女を生やす、猫耳ヒューマノイド(ササキワオン)。


「先生(ゼンゼ)まデー、……モ゛う、イケ……ズやなア゛ッ」

 真っ赤になって右往左往する様は、とても20歳(はたち)には見えない。……細身の巨漢が骸骨デザインのフェイスガードを付けているキャラ外装(外観)なので、女性にも見えない。詰まる所、かなり、不気味―――いや、言うまい。



 映像空間(パーティーチャット)から届く喧噪(けんそう)が一段落(ひとだんらく)した時、

 地に落ちた青い鹿(モノケロス)は、横たわり、ぐったりしていた。

 両拳にオレンジ色の危険な明かりを灯した(雷を宿した)、少女が全速力で接近してくるので、否応なしに、生まれたての子鹿みたいに、立ち上がる。

 鹿は、最後の筋力を使って、迫り来る足音から、距離をとる。

 すでにMPは無い(ゼロ)。相手(少女)は、謎の力を得て、無尽蔵な爆発力で押してくる。彼女の最大攻撃力は現時点で、2HITさせて約10万。同じ攻撃を、あと一度喰らえば、今度こそ本当に、”青い鹿(モノケロス)”はアイテムになる。


 ジグザグな機動と、緩急の付いた大きな方向転換を駆使し、距離をとる鹿。


 コウベが、大きく旋回する鹿を追撃しようと、開けた空間(決戦場)の中央を横切っていく。彼女の進行方向には、ギヤついた円盤が落ちている。驗(シルシ)が初期フロアの床を突き抜けて(・・・・・)切断した、理論上最硬の分子構造(設定値)を持つはずの板。


 ヂヂヂッビビッ♪

 やや上空、5メートルほど上を、滑空していた小鳥が鳴く。


 コウベは、瞳に数回赤い光を宿し、歩幅を倍に(加   速)する。

 そのスピードのまま、床に落ちている円盤を飛び越え、踵(かかと)で縁(へり)を、踏み抜いた。

 円盤は縁(へり)を踏まれた勢いで、約2メートル、上空を舞い、急減速したコウベを追い越す。


 コウベの、”走法(フォーム)変化が、一切無い急加速(ダッシュ)”。

 ”急停止(ブレーキング)も、地面に縫いつけられたかのような”、不自然さ(・・・・)で行われている。

 この慣性を無視した(・・・・・・)挙動を見るに、修得したばかりの、”重力補正”スキルを早くも使いこなしているようで、加減速に無駄がない。


 少女は、膝(ひざ)を持ち上げ、正面に走り込んでくる青い弾丸を、見据える。

 クルクルと裏表を見せながら円盤が、目の前に落ちてくる。彼女は、円盤が平らになる瞬間を狙って、水平に蹴り飛ばした。


 ゴガンッ! ―――フゥォォン!


 回転の付いた円盤(ギア)が、わずかに軌道を曲げ、死角から鹿に迫る。

 鹿は、広い視界で幽(かす)かに捉(とら)えられた飛来物を、首を前に倒してギリギリで躱(かわ)した。

 当然、垂直に立った”ツノ”の根本へ円盤(ギア)は命中する。


 ガッガッガガガッ!

 鹿は、ノーダメージながらも、円盤(ギア)の回転に巻き込まれる。

 表面に浮き出ている、ボコボコした節に、円盤(ギア)の出っ張りが、高速でぶつかるのだ。トルクのある首の筋力でも、支えきれなくなり、長い首を横へ向ける。鹿は草食動物特有の、”広い視野”の中央で、そのオレンジ色の迸(ほとばし)りを捉(とら)えた。


 オレンジ色の弾丸の、そのしなやかな足に次々と流れ込んでいく、骨に沿った環状の放電(リップルスパーク)。

 その足の動きは、鹿が、鹿の敵(コウベ)の眼前で披露し続けてきたパターンと同じだった。

 今、鹿の足に、青白い電流は、通っていない。


 ボボッ!

 バリッバリリ!

 ド・ド・ドン!

 風を切る額。パッツン前髪は上に流れているため、オデコ全開だ。

 踵(かかと)を交互に射出する度に、頭の上の真空管(電球)が光を強くしている。


「ザザッ―――あれ(・・)、早くも、全身で”電磁加速(リニア)”を、使いこなしてますね」

 眼は離さずに、瓶を斜めにしてシャンパンを煽(あお)る、白焚(シラタキ)女子(ガール)。いや、その顔は、白焚女史(シスアド)の冷静さを取り戻している。


「ザッ―――雷(かみなり)のオレンジ色はぁ、”燃焼力(ねんしょうりょく)”、―――つまり炎属性がコウベちゃんの体(外装)に、直接増設処理(エンチャント)されてる証拠ですねぇ……ひっく!」

 ほんのりと、赤くなった頬、垂れる目尻。お目付役(マガリ)が側に居ないのを良いことに、酌が進んでいるようだ。


「ザザザッ―――えへへ、それなー……”試作コード68”の……体内電流の中に(・・・・・・・)、……直接、”属性助長スクリプト”を、……|流してあるからどすえ。……けど、……なんで、目に見えるほどの……効果がでとるん……でっしゃろ?」

 環恩(ワオン)に対する、ドヤ顔が、―――次第に傾いていく。


「ザザッ―――歌色(カイロ)ちゃん、いえ、たこ焼き大介(・・・・・・)さん、貴女(アナタ)、VR設計の才能(・・・・・・・)が、お有りになりますよ」

 名刺を裏返して熟読している白焚(シラタキ)から、そう言われた歌色(カイロ)は、やや、憤慨(ふんがい)した声を出した。

「ザッ―――あてぇは、……曲がりなりにも、……設計師どすえ……ブツブツ」


「ザッ―――おい、鋤灼(スキヤキ)ィ」

「ザザッ―――おう、刀風(カタナカゼ)ェ」

「ザッ―――ねえ、ひょっとして、ワルコフだけじゃなくて、コウベも、規格外に(・・・・)オーバースペック(・・・・・・・・)なんじゃないの!?」

「ザッ―――でも、バトルレンダとか言うチート(ズル)は、たぶん使ってねえぜ?」

「ザッ―――だよな。ついさっき、戦闘開始までは、いつものポンコツ(・・・・)だったしなー」


 カタカタッ。

「■種モ仕掛ケモ、ゴザイマセン_」

 引き出しの中で宇宙服は、棒を逆さまにしたり、裏返したりしている。


「ザザッ―――嘘付け! 絶対何か有るだろ!?」

 少年が引き出しに向かって、怒鳴る。


 ピピュイ、ビュヂヂッ♪

 小鳥が、コウベの左後ろに、高度を下げて、近寄る。


「ザザザッ―――あんなに近寄って、焼き鳥にならなきゃ良いけど……」

「ザザッ―――不吉な事、言うなよー」

「ザザッ―――でも、確かに、巻き込まれるぜ?」

 ヒソヒソヒソ。


「ザッ―――なぁにー? 君たちー、ひょっとしてぇー、内緒話ー?」

 特選おやつの瓶を両手に持って、生徒達に割り込んでくる、笹木環恩(ワオン)特別講師。兼、”猫耳アンドロイド”微酔(ほろよ)いVER(バージョン)。

 姉さんにしては、鋭い、と慌てて、メモ帳アプリを指先のデバイスに仕舞ったり、とか、

 笹ちゃん先生に、か隠し事なんて、でで出来る訳、ねねね無えぜ? とか、

 座席の引き出しを閉めて、ワルコフの奴は白焚(シラタキ)……さんには見せない方がいいかなって思ったんすけど、とか言ったりしてたら―――


「ザザッ―――あああっ! ……試作コード65!」

 項邊歌色(コウベカイロ)の悲痛な声に、驗(シルシ)以外が振り向く。

 映像の中の驗(シルシ)は、コウベに繋いだ映像空間を慌てて見た。


 生徒達の懸念通りに、小鳥が戦闘に巻き込まれていた。

 正確には、コウベの死角から近づいていった小鳥が、コウベから生じた乱気流に煽(あお)られ、あっさりと墜落した。


 悲痛な声が続く。

「ザザザッ―――……ワ(・)゛ヤ(・)に゛なって゛しもた゛ぁー!」

 落胆のあまり、再び、”悪夢の処刑人(外装の)”キャラ声が出てしまっている。


 地面から立(た)ち上(のぼ)る、光の粒子に溶けていく、小さな鳥。

 鮮やかなマッチャグリーンの小さめの羽根が、光の粒子から逃れて乱気流に吸い込まれた。

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