6:コウベ 対 MΘNΘCERΘS その4
2016/10/01 16:41 また間が開いてしまいました。申し訳ありません。細かい所は調整するかもしれません。よろしくお願いいたします。
※それと、表現や表記など、何か問題がありましたらば、メッセージを下さい。善処いたします。
「じゃあ、再開する?」
円盤の上に仁王立ち、尖ったギザ歯を剥き出しにする、上から目線の、対戦数ゼロ。
鹿と少女は、近い距離で、対峙した。
やや緊迫した空気にギャラリーは、おやつを囓るのを、止めて見守る。
「グルルルゥ、ゴガァァ!」
敵対する、獣の内面が、溢れ出―――
青い鹿は、どういう理由によるモノか解らないが―――
ペコリとお辞儀をした。
「これはどうも、ご丁寧に」
ペコリ。礼を返すSFピタピタコスチュームの少女。
角度最大の瞬間、一回、ボウッと光る真空管。
間抜けな光景に、虚を突かれ、数拍の間が空く。
「ザザッ―――公園の鹿……みたいど……すなぁー」
映像空間から、呑気な感想を述べる、項邊歌色。
米沢首の、外装提供者にして、VR設計師は、作業服の胸ポケットから、何個かおやつを取り出して、テーブルに置いて行く。
ノイズ(演出)混じりの感想を、合図代わりに、円盤から飛び退く少女。
ゴァゥッ! ジィー、ジッジッ、ジィーッ!
青い獣は毛皮表面の、体軸に沿った放電を再開した。
ギャーッ! パリ、パリパリ、バリ、ヴァリヴァリッ!
少女は、ツインテールを伝い、毛先へ向かう環状の放電を再開した。
足爪を突き立て、肩にしがみついている小鳥が、くしゃみをした。少女は鼻を擦った。
放電によって発生したオゾン臭を、映像から想起したのか、驗少年も、同じように鼻を擦った。
少女の右前方に浮かぶ映像空間の中、締まらない顔の、サイボーグが、声を掛ける。
「ザザッ―――おーい! 負けてもいいぞ! 全力でやってやれ!」
「アハハ、変な顔のシルシだ! ボサボサーッ!」
一触即発中にも関わらず、ナックルガードを映像空間に向け、ウケている少女。
その、後頭部へ、ソバットを繰り出す、青い鹿。又の名を一角獣モノケロス。
チチッ♪
小鳥の声を聞き、即座に、上体を斜めに倒す。舞い上がるお下げ。
あまりにも見事なタイミングでかわしたため、観客の一部が”ああっ”と悲痛な声を上げた。まるで、蹴り飛ばされて、上体が沈んだように見えたのだろう。
そのフォームは、教わった訳でも無いだろうに、驗少年が、時折見せるボクサー顔負けのダッキングと瓜二つだった。
空を切る鋭利な蹄。
ゾッ! 少女のお下げの末尾。30センチ程度が、真剣を思わせる切れ味に、寸断される。
上体を起こす、彼女の瞳に、青白い炎が宿る。蹄を打ち出した、体軸に沿って繰り返し流れる放電の光だ。
小鳥が、ヂ♪
コウベが、自分の瞳の中の青白い炎を、肩口に止まる”小鳥”へ向けた。
小鳥は羽ばたき、飛び立つ。そのまま旋回もせずに、ひたすら羽ばたいて、コウベから離れていく。
ピカカーーーンッ!
輝く頭上の真空管。
「ザッ―――あはは、かわいー」
左前方に浮いているで有ろう、環恩達と繋がっている映像空間から、感想が届く。
バリッ!
首の後ろからオレンジ色の稲妻が発せられるが、それは”切り取り線”を無視して、体表面を伝って、腕に流れていく。
骨に沿った環状放電は、細腕を一周している。髪の房に流れてた電流の種類と同じだ。
バリバリバリッ!
少女の腕にオレンジ色の放電が、幾重にも流れ込んでいく。
繁華街のネオンを思わせる電気的な挙動。それは獣が放った後ろ足を流れている殺意とそっくりだった。
ヴァリヴァリヴァリッ!
電磁加速によって射出された左腕のナックルガード。
まるで勝ちどきのように突き上げられた拳は、青い獣の鎧のような毛皮を貫いた。
ゴッン! チッ、ピピッ♪
ナックルガードの信管が、ほぼ瞬時に作動し、青い獣の胴体を爆破した。
シュドドドドドドドドドゥ!
天へ向かって吹き上がる爆炎は、全体的に炎の色を濃くしていて、見た目が派手だ。
沸き上がる歓声。
映像空間の中の、VRE研の3名と白焚、そして別枠の驗と宇宙服も、食い入るように、一点を見つめている。
爆炎が薄くなり、跳ね上げられた獣が露わになった。
まるで、噴出した原油を見上げる山師のように、全員が歓喜の表情で獣を仰ぐ。宇宙服の表情は見えないが、引き出しの隙間から、槍の先が飛び出しているところをみる限り、拳を掲げる驗少年と同じように喜んでいるのだろう。
小鳥はコウベの背後に滞空し、ヂヂヂッ♪
その白く縁取られた眼が捉えるえるのは、真空管。
真空管が輝き、コウベの首の後ろから、吹き出す火花。
パシューーーーッ!
肩や腕の切り取り線を焦がし、シュパパパパパッ! と一気に拳へ到達する。
拳が白くなるほど、強く握られる、ナックルガードのグリップ。
カチカチッ!
押さえ込まれた、再装填の動作がキャンセルされる。
ピッ♪
拳にオレンジ色のランプが点き、使用可能にな―――
チッ、ピピッ♪
ナックルガードの信管が、もう一度、遅延無しで作動した。
鹿の敵を突き上げた、打点の頂点。
毛皮を貫く、少女の拳に乗った重心、有効打撃判定。
その衝撃で、エビ反りになっている一角獣の背中。
橙色の虎縞が浮き出ている辺り。
頂点にコンマ数秒、制止した獣。
毛皮は放電が無く、毛先がバラバラの方向を向いてしまっていて、鎧のような防御効果は期待できない。
膂力を、元とした、鉄壁の耐久力も、伸びきった今の体勢では効果薄と思われ。
オレンジ色の爆炎に、再度、晒される獣。
シュドドドドドドドドドゥ!
ンギャオオオウゥオウゥオウゥッ!
無防備状態で、ゼロ距離爆撃を喰らったのだ。
そりゃあ、ンギャオオオウゥオウゥオウゥッ! と叫び悶絶するだろう。
んぎゃおおおうぉおうぅおうぅっ!
と、巻き起こった大歓声が収まると同時に、環恩が叫んだ。
舌っ足らずでかわいらしい、キャラ設定通りの、ライブラリ音声が轟く。意図的に、音声ライブラリ、を使ったのは、その方が、観客への通りが良いと思ったからだろう。
「ザザッ―――見てぇ! 攻撃がHIT! したわぁっ!」
『HP:■__________』
『MP:|______』
頭上に浮かぶ、とても長い横棒を、見る。何度迎撃しても、カスリ傷一つ負わせられなかった、鉄壁のHPが確実に減っていた。
驗の連続コンボが確立した時点から、初めての有効打撃だ。
驗の最後の攻撃が的中したときから、一角獣のHPバーは赤くなっていたが、コウベの有効打を受けるに至り、とうとう赤点滅しだした。
現在2。『115200 DAMEGE! 2HIT COMBO!』。
『MΘNΘCERΘS__/LV52』
『HP_909461/6400000』
カタカタカタカタカタカタッ、ズドン♪
戦闘システムがコンボ数を確定し、実際のダメージ数値を表示した。
驗がコツコツと積み上げた、”戦艦による砲撃”クラスの、100万ダメージオーバーの一撃と比べれば、相当に落ちる。ソレでも、スターバラッドでの戦闘経験ゼロが、叩き出して良い数値ではなかった。トップランカーの持つ、伝説級の武装にも引けを取らない事は、2HITで、10万ダメージを叩き出したことで、証明されている。
残り体力、2割を切った所からの、停滞を打ち破る、快挙。
少女は好敵手と化した、小型ボス最高峰へ、言い放つ。
「どうだっ! ……えっと何だっけ? えーっと、……そだっ、モロケトルッ!」
ザザザッ―――ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
環恩達と繋がっている、映像空間』から、大歓声と共に、欲のでた部員達の勝手なアドバイスとかが、飛び込んで来た。
「ザザザッ―――やるじゃないの! 間髪入れずに叩き込みなさいよ!」
「ザザッ―――すげえぜ! 慎重に行け! カウンター狙ってけ!」
「ザッ―――怪我とかすんなよー。あと”モノケロス”なー」
コウベは文字チャットを開いて無かったが、驗が写る、映像空間の下に勝手に字幕が表示された。
『■何ソノ、ブラックボックスユニット! 超イケテルジャナァーイ? イイカンジジャナーイッ?_』




