6:コウベ 対 MΘNΘCERΘS その2
2016/09/26 13:52 間が開いてしまい申し訳ありませんでした。暫定部分もありますが、設定変更はたぶんありません。よろしくお願いいたします。
「ワルよぉー。ありゃ、本当に、お前さんの”棒”の中身なんかよ?」
刀風は、映像空間の中の、宇宙服を、小声で問いただす。少し開いた引き出しの底から、上を見上げているワルコフ。
驗から接続された映像空間は、刀風たちの背後に固定されている。近寄って、上から覗き込みでもしなければ、環恩達からは、直接見えない。
刀風の現在の外装は、身長の低い魔女っ娘なので、椅子に乗って上から見ている。
全長10センチちょいの小さい宇宙服は、映像空間の中で、さらに小さくなり指先程度だ。もし白焚に見られても、不振なNPCだと、見抜かれることもないだろう。それでも、生徒達は、念入りに、コソコソしている。
特区での”管理者権限”は、万能と言って良い。ましてや、今日は危険な色の自動機械を従えている。用心に越したことはないのだ。
禍璃が、アタシにも見せなさいよと、刀風を力任せに後ろへ引っ張る。大男が女の子を力任せになぎ倒しているようにしかみえないので、絵的に、非常によろしくない事この上ない。
ワルコフは、机の引き出しや天板を無視して、驗主観の映像空間を見つめている。
バイザー外周を回る小さな光点が、3周した所で、打鍵音が驗の耳に届いた。
カタカタタカタッタン。
「■ハイ。私ガ機能優先デ作リ上ゲタ、電磁推進エンジント、超大容量バッテリーノ実物デス_」
宇宙服の入力した文字が、文字チャットウインドウに書き込まれる。
「なにそれ? そう言うの姉さんが好きそうね、詳しく教えなさいよ」
興味を持った、海賊姿の禍璃が、肩を怒らせて、映像空間の中に、手を突っ込んで引き出しのあたりを突っつく。
引き出しの中の宇宙服が、まるで突かれたように、体を揺らす。
「■コレハ、”スターバラッド”ノ、全テノ宇宙船ニ、使ワレテイル、根幹技術デス_」
背中のバックパックから、電磁棒を取り外す。両手に1本ずつ持って、松明のように振り上げて見せる。
スイッチを入れられ、先端から放電する電磁棒。
「なんか短いわね」
そう言われた、宇宙服は、棒をガシリと繋ぎ合わせ、一本の電磁槍にした。
「ザザッ―――で、あの、鉄の塊をどうやったら、そんなに小さく出来たんだよ?」
映像空間の中の驗は、決戦場に繋がってる映像空間を見ながら会話を続ける。
決戦場では、倒れた鉄塊にコウベがよじ登り、一角獣は鉄塊へ向かって頭突きをしてる。配管構造に帯電していた電力を奪ったのか、一角獣は体表面の流れるような放電を取り戻した。
「ザザッ―――ゴアァァァッ!」
「ザザザッ―――ああっ! チョットだけど、使い切ってたMPが戻ってる!」
「鋤灼君ー。どうかしましたか?」
白焚女史が、真っ赤な”自動機械”に乗ったまま、すぐ近くまで移動してきていた。
驗は慌てて引き出しを閉める。
「な、なんでも無いすよー?」
不自然極まりないが、女史はテーブルに、長めの”特選おやつ”を並べることに専念している。残念会を開催する気、満々なのだろう。
「もぉーうぅー、……やってりゃりゃ……れりゃいっ、……ど・す・えっ!」
歌色さぁん、これぇー、ブドウジュースよぅ?
ひっく! うぃーーーーっ! とクダを巻く”悪夢の処刑人”。
片や、VR専門家にして、特別講師。片や、”自動機械”群システム管理者にして、スターバラッド運営サイドだ。
根幹となる技術群の出自が、VR設計士とは違うのは、否めない。
骸骨型のフェイスガードを付けた、細身の巨漢が、空になった”特選おやつ”の瓶をテーブルに叩きつける。
”瓶”は光の粒子になり、受け取り保留のアイコンと化した。
「いえ、先生、これ、”お酒”ですよ? 生徒さん相手に、まずかったかしら?」
タンジェリンオレンジのカーディガンを羽織った白焚が、ブドウの絵が描かれた瓶のラベルを、指さした。
『コレは、お酒です。※アルコール成分はありませんが、体質によっては酔う場合があります。』
ラベルに描かれている一房のブドウの、一粒が人の顔になっている。ツノが生えていて、魔女帽子をかぶっている、例のアイツだ。キャラメイカーズのタイトルロゴといい、メインヒロインの扱いが、どこか雑なのは、やはり、鳴り物入りで、登場したのに、サービス開始と同時に、突如失踪したからだろうか。
「えーっ! てっきりブドウジュースとばかり。校舎内での酒盛りはぁ厳禁……でも、歌色さん大人だしー、VR空間内じゃ、長時間酔っぱらう訳じゃ無いしー、問題なぁーい? ……のかしらぁ?」
頬に手を当て、思案に暮れる猫耳。
次々と、縦に細長い”特選おやつ”を、手に取り開封していく、処刑人。
「いいわね、いいわね、こういうの!」
と眼を細めて喜ぶ白焚女子。”自動機械”に乗ったまま、上機嫌で環恩の隣へ戻っていく。
……やはり、システム管理者は、寂しいのかもしれなかった。
盛り上がってきた、成人組とは対照的に、教室直通の映像空間を隠し、ヒソヒソ話を続ける、生徒組。
因みに、観客達は、コウベと謎の鉄塊と、一角獣の行動に目が離せないでいる。
広場は、観客がおやつを囓る音と、環恩達の一足早い、残念会の喚声に包まれる。
「ザザッ―――で、何の話してたんだっけ?」
ヒソヒソ。
「■コノ電磁槍ノ中ニ、ドウヤッテ、アノ電磁推進エンジント、大容量バッテリーヲ詰メ込ンダカ、オ尻ニナリタインジャ、無カッタカシラァ?_」
カタカタカタ。
「おい、字が間違ってんぜ?」
「■ゴッメンナサーイ。ウフフフフゥー_」
「なによ、鋤灼みたいな、しゃべり方するんじゃないわよ」
「ザザッ―――……ワルコフ、説明するのに飽きて来たな。さっさと頼むぜ、あっちもほっとくわけにもいかねえし……」
映像空間の中では、一角獣が、やや遠間から大電流を放つ。コウベは小鳥に頭を捕まれ、まるで持ち上げるかのように羽ばたく方向へ、飛び退いて躱している。
「■一言デ言エバ、課金パワーデス_」
カタタタタタタンッ!
入力スピードが倍速になった。
「「「はっ?」」」
「■最高ランクノ強度ヲ誇ル、”圧縮プロトコル”、『量子圧縮』ヲ課金適応シマシt_」
「なにそれ? 50円とか払えば、VRアイテムを小さくしてくれるの?」
「■ソウデスネ。金額ハ、違イマスケド」
「幾らぐらいなんだぜ? 俺も、インベントリいっぱいだから、デカいアイテム小さくしたいぜ」
「■50兆宇宙ドル、カカッテシマイマシタワー」
「ザッ―――「「ブッッ! 今なんて言った!?」」」
「50兆って、”宇宙ドル”の、年間流通量と同じじゃないの!」
「ザッ―――そんな大金、まさか、ハッキングでっ!?」
「■イイエ、ゲーム内仮想暗号通貨、”宇宙ドル”ノ堅牢性ニハ、白旗ヲ揚ゲザルヲ得マセンデシタ_」
「ザザッ―――白旗って、やっぱり一度は試みたんじゃねーか!」
映像空間の中の、驗が、VRHMD前面に表示された顔を歪め、指先で宇宙服を弾く。
必死に、電磁槍で、ガードし、よろけながらも、説明を続ける。




