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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
13:サインオーガ爆誕!

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77/153

5:決戦! MΘNΘCERΘS 終盤戦その1

2016/10/20 22:13 日付を訂正。

2016/09/15 14:54 難航しました、間が開いてしまい申し訳ありません。何とぞよろしくお願いします。

 ”LV0”というか、”撃破数”、いや、”戦闘回数0”と行った方が正確かもしれない、3人パーティー。


 1:先鋭的なフォルムの割に、やる気が見られない印象。つまり、外見がサイボーグ的な意味で、ポンコツ。実害としては、射撃装備積載量が売りなのに、射撃命中率が0(絶対に当たらない)。……やっぱり中身もポンコツ。


 2:スタイル抜群の超美少女だが、乱暴者というかすべての行動目的が雑(・・・・・・)。要約すると中身がポンコツ(粗忽物)。小鳥を愛でる優しさ……は無いが、小鳥と同レベルで喧嘩が出来る、純朴さがある。”特選おやつ”への情熱だけは一級品の自律型NPC。


 3:謎の宇宙服。好戦的な割に、切っ先に切れがない。典型的なパワーファイターかつ、お調子者。初期フロアでの最長稼働記録を所持。スターバラッド内部への進入も、お手のもの。端的に言えば、管理者権限をねつ造所持(・・・・・)している自律型NPC。


 彼らは、今日、この世界に初めて降り立った。謎の宇宙服も、レギュレーションを守って、正規……比較的ちゃんとしたルートで此処(ここ)に来たのは、これが初めてのはずだ。装備の一部が強力なだけで、その攻撃力の計算式の元となる全ステータスがほぼ初期化されている状態。最弱も最弱、最弱以下の爆弱状態だ。


 対するは、LV52のボスクラスモンスター。

 どういうわけか、小型ボス最高峰から、対戦(・・)を申し込まれて仕舞ったため、ダメ元でレアボスとの対戦を受けることにしたのだが。

 このレベル差を、物ともせず立ち向かうだけで、もはや快挙と言って良い。


「あっ、赤くなったぁー!」

 環恩(ワオン)が、メカ猫耳をピクピクさせて、外のデカい方の映像空間を指さす。


 テーブル席に座る一同が、指さす先を見る。

 モノケロスのやたらと長いHPゲージ。

 その先端。

 ほんの僅(わず)かだが、確かに、赤い色が差している。ドットで言えば2ドットくらい。

 環恩(ワオン)達の目の前、定格サイズの(小さい)映像空間では、まだ、色の滲(にじ)みにしか見えない。


 本日、これが初戦闘という彼ら。ひたすら倍率僅か、+0.2のコンボ累計(・・・・・)を積み重ね、とうとう達成した(一矢報いた)結果だ。

 ”コンボ86回完遂で(・・・・・・・・・)撃破(・・)”なら、ようやく終盤に差し掛かった所。

 現在63。『97368 DAMEGE! 63HIT COMBO!』。


『MΘNΘCERΘS__/LV52』

『HP_6302632/6400000』


「やっとぉ、倍率の効果がぁ出てぇ来まぁし―――」


「どうしたの? 姉さん?」

「どうかし……はりましたか?」

「どうしたんだぜ?」


 さっきまで、観客一同と一緒になって、嬌声をあげていた猫耳が、顎に、拳を当てて黙り込んだ。


「んーっ? ……なんで、一角獣(モノケロ)さんがジッとしていて……バリン……くれるのかなって思っただけなんだけど……バリバリッ」

 極太の恵方巻きのようなサイズの、スナック菓子(ベーコンサラダ味)に囓(かじ)り付く笹木環恩(ササキワオン)。


「そりゃあ、アレだぜ。最初の攻撃が当たって、その衝撃で受けた、”体の硬直”が解ける前に、次の攻撃が当たってるからだぜ」

 早くも完食した烏賊飯(いかめし)風の袋をテーブルの上で、光の粒子に変える。そして、ビリビリーと、新しい”特選おやつ”を開封する刀風曜次(カタナカゼヨウジ)。


「まあ、連続攻撃の基本よね、パクッ」

 刀風(カタナカゼ)の説明に、笹木禍璃(ササキマガリ)が同意する。

 手羽先を両手で持ち、はぐはぐと囓(かじ)りついている。さっき、刀風(カタナカゼ)の、烏賊飯(いかめし)と取り替えようとしていたが、コレはコレで満更でもないようだ。

 ”特選おやつ”の良いところは、開封と同時に、僅かながら、暖まるか冷えるかする事と、手づかみで食べても、手が汚れない事だ。


「それはぁそうなんだけどぉ、にゃんばる(アタシ)のぉ連続攻撃見たくー、近接でえ、ひっきりなしにー、攻められてるってぇ感じでもないからぁ、いくらでもー、何かぁ、やり返せそうじゃなぁいー?」

 味が気に入ったのか、環恩(ワオン)はパッケージの裏書きを眺めている。


「んっ? そういや、高速化とか瞬間移動とかされたら、コンボ切れちまうんじゃねーのか?」

 袋から、串カツの一本を取り出しながら、疑問を口にする魔女っ風。


「<必中>スキルの恩恵で、……コンボ自体は切れやしませんけど、……MPゲージ(魔法)使われたら、……シールドでガード……割り込みされたりして、……厄介かもしれませんどすなあ」

 ずっと、手の上でもて遊んでいた、”特選おやつ”を開けて中を見ている、悪夢の処刑歌色(カイロ)。


「あ、言ってる側から、一角の野郎が、なんか、ぐるぐる回りだしたぜ? モギュモギュ!」

 袋の底のタレを、大量につけ、満足げに串カツに囓(かじ)り付いている。

 ちなみに開封するまでは、分子構造が静止しているので、タレまみれになったりはしない。


「目の前の、鋤灼(スキヤキ)たち以外に、敵か居るのか、確かめてるのかしら?」

 海賊マガリは、手羽先を完食し、骨をパッケージ袋に詰め、平手でテーブルにパシンと叩き込んだ(・・・・・)。

 チャリーン♪

 『キャッシュバック:30S$(宇宙ドル)』の表示が、海賊が退けた手のしたのテーブルに表示されている。

 ※2016年6月18日現在―――YEN(JPY)=7・748S$(SPD)―――によると”手羽先の骨”の価格は約3.8円。


 つまり、詳細は省くが、制作者サイドからの、”手羽先の骨”の預り金(デポジット)のようなものだ。

 ”手羽先の骨”は、工作(クラフト)にも使えるため、”特選おやつ:手羽先”の需要は高―――ドッカン!

 不意に映像空間を揺らしながら、大きな物がテーブルに叩きつけられた。


「ななんだぜっ!? 一角獣が飛び出て来やがったかっ!?」

 飛び跳ね、真後へ尻から落ちる刀風(カタナカゼ)。

 同じポーズで禍璃(マガリ)も吹っ飛んでいる。


「っよう! あの、あんちゃん達に、これ差し入れしてくれっかい?」

 テーブルの上に投げ出されたものは、一角獣(モノケロス)ではなく、何か、いろんな物が押し込められ真空パックされた袋状(形)。

 形状や、パッケージデザインからすると、特選おやつに間違いないが、その大きさ(・・・)が普通ではなかった。

「なんだぜ? このデッカい”特選おやつ”、始めて見た」

 テーブルに足をかけ、腹筋だけで着席する、魔女っ娘。

「ほんとデカいわね」

 起き上がり、テーブルに置かれた一抱えはあるソレを、指で突(つつ)く海賊。


「パーティー用のぉ、数人分セットが圧縮されてるぅ、超高級”特選おやつ・パーティー用”じゃないですかぁ!」


 あてぇは、聞いたことなら有りますえ、中身の調理済みの分子配列が、食事中ずっと、最適化され続けるから、味が美味しくて長持ちして、触感も本物そっくりで、ものすごく美味しいって話。本当かよっ! 生徒たちは、”特選おやつ・パーティー用”に興味津々だ。


 ふいーっと、”片目に眼帯をした着ぐるみのウサギちゃん”が、出てもいない額(ヒタイ)の汗を拭っていた。

 あらぁ、こんなお高いもの~? 気にしねえでくだせえ、あっしは、あのあんちゃん達の男気に惚れたんで―――そうですかあ、じゃあ、確かにお預かりしますぅー!

 猫耳(ワオン)が、”パーティー用”をしっかり抱き抱えて、コンマ一秒も遠慮せずに礼を言う。

 その声は、普段の子ども声じゃなくて、舌っ足らずでカワイらしい、キャラに設定された音声ライブラリで発せられている。


 ガッガッ!

 突然、映像空間の中の一角獣が、四つ足を延ばし、踏ん張りだした。


「おおっといけねえヤ! 戦局が動きましたでヤんすね。じゃっアッシも、観戦に戻りマすんで」

 あんちゃんらによろしくーと戻っていく丸い尻尾がカワイイ、任侠ウサちゃん。

 猫耳環恩(ワオン)が、ありがとぉー、と大きく手を振って見送るが、ウサちゃんは、スグ目と鼻の先に、再び座りこんだ。


「……鋤灼(スキヤキ)はんたちの、……”評価・分析”が……済んだんやろか」

 袋の底を巻き上げて、インゴット状の”イチゴタルト(中身)”を、押し上ている悪夢(カイロ)。映像空間を見つめている。


 一角獣は、踏ん張ったまま、何かに気づいたらしく、ついと鼻先を持ち上げた。

 そして、視覚化された”自身の命”。湾曲した緑色の棒(HPバー)を凝視する。

 視線を水平に(バーに沿って)移していく、その首の動きは、頭上に延びる太いツノにも、当然伝わる。

 イライラを体現し、放電する角先(つのさき)。空間に、ゆっくりと青白い真一文字を残していく。


 ピタリ。やがて動き止め、首を傾げる獣。

 首を軸とした、視線の反対側。その、空中に残る軌跡の末尾がちょっと曲がる(カーブ)。

 一直線に空間を切り裂いていた、大気中に溢れ出ている、青い傍流が一点に荷電していく。


 モノケロスの視線の先には、やたらと長いHPゲージ。

 その先端。

 ほんの僅(わず)か、確かに、赤い色が差しているが、色の滲(にじ)みにしか見えない。ドットで言えば2ドットくらい。


「ザザッ―――グゥルルルッ」

 獣の内面が、牙の隙間から溢れ出す。


「ザッ―――ゴアァァァッ!」

 自分が傷つけられて居ることを、目の当たりにした、獣が、驗(シルシ)達を振り返った。ツノから伸びていた青い一本線を、どう言う物理現象を持って、再現せしめたのか、見当も付かないが、鞭のように振り回し初(・・・・・・・・・・)めた(・・)。

 スターバラッドの世界では、たとえそれが、一瞬(フェムト秒)でも、実際に分子構造を物理演算出来た物(・・・・・・・・)しか、再現出来ない。その、意外と万能な不文律には、名前がある。ソレをV.R.IDシステム(トポロジックエンジン)の仕様(・・)とプレイヤー達は呼ぶ。もっと言えば”特記仕様書”第一項となるが、それは、管理者サイドにしか解らない。


 バッシャァァァン!


 地面に焦げた曲線を描いて、落ちた大スパーク。この場合の正電荷(標的)は驗(シルシ)達なのだろう。

 驗(シルシ)一行(パーティー)は、投擲しながら、半歩ずつ斜め後方へ下がり続けてきた。力一杯(ちからいっぱい)投擲して、元のポジションに戻ると、斜めに半歩下がると解ったため、その投擲ポジションにワルコフが弾丸を1発ずつ並べて置いた。

 モノケロスとの距離は、約30メートル。この開けた地面の約半径(はんぶん)。雷撃鞭が、直接届く距離ではない。<必中>スキルがなければ驗(シルシ)の攻撃だって、本来届かない。

 ピッシャン! ピッシャアァァァン!

 ドッガァァァァァンッ!

 雷鳴に混じって、爆発音。

 鞭の先から、黒い球のような放電を投げ始める。

 攻撃レンジによって、技の形態が変化する必殺技なのだろう。


 その黒い人魂のような雷球は今まさに、驗(シルシ)に落ちようとしている。たが、平然と、投擲モーションに入る驗(シルシ)。

 藍色(モノケロス)は、首を上下左右に振り回している。キリンの首喧嘩(ゲンカ)の映像を彷彿(ほうふつ)とさせる凄まじい動き。


「ザッ―――標的(ロックオン)マーカー出て無えから、直接俺のことは狙ってねー筈(はず)だ」

 少年は投げる。が、小さい棒は真上へすっ飛んでしまった。


「ザザッ―――いけねっ! すっぽ抜けた!?」


「いいえー、<必中>スキル、発動してるなら、必ず当たるはずですよ」

 ザンッ。脚だか腕だかを駆使して、休憩所の屋根からぶら下がる、不吉な色(危険色)の自動機械。緊迫した、状況に割り込む人影(シルエット)。


 うおらぁー! いけー! やったれぇー! がむばってぇー!

 周囲の喧噪にかき消され、映像空間の中までは、謎の人物の声は届かない。タイトスカートがめくれるのも構わずに、平べったい形の明るい色の自動機械に胡座をかく彼女(・・)は―――


「おまえは!」「あなた!」「あらぁ!」「どちらさん……どすか?」

 謎の声に振り向く全員。


 映像空間の中では、戦いが熾烈に変化していく。

 ポポポポポポポポ。

 驗(シルシ)の周囲、前後左右に、8個の標的マーカーが現れた。


「わっ! 危ねえ!」

 慌てる少年サイボーグの背後、左後方のマーカー付近から、小さい放電が発生する。

「君たち! 左後方から来ますよ!」

 環恩(ワオン)の横に付けた自動機械は、形状こそ、”自動屋台(ディナーベンダー)”そっくりだったが、その全長はかなり小さい。”自動屋台(ディナーベンダー)”が会議室用の巨大な会議机だとしたら、これは、せいぜい一人用の簡易デスクサイズ。女史(・・)の尻一(ひと)つ乗せたら、結構天板上が埋まるくらいだ。

 タンジェリンオレンジのカーディガンの小さいポケットから、縦に長めの”特選おやつ”を取り出す。

 謎の人物の声、この距離なら映像空間向こうの、少年にもちゃんと届いたようだ。


「え? 背後? だれ!?」

 超小型銃を雷撃鞭の出所に向けて射撃(シュート)。

 コウベのいる方へ、空になった銃を投げ―――


 銃を左手で受け取り、右手には装填された、火薬搭載型のブービートラップみたいな。

 なぜか、宇宙服も、構えた左手に電流を迸(ほとばし)らせている。

 ナックルガードから発せられる、何かの作動音。


 赤いランプと、見慣れてきた小さな放電。

 チカチカチカ。ココン。グオオングオオングオグォ。

 少年の顔面をとらえようと、突き出され―――

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