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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
13:サインオーガ爆誕!

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76/153

4:決戦! MΘNΘCERΘS 中盤戦その3

2016/10/20 22:17 カレンダーの曜日と一日ズレてしまっていたので訂正。

2016/09/09 21:03 微調整しました。よろしくお願いします。

2016/09/08 21:10 状況が前後していた所を修正。

2016/09/08 8:05 やや、見所の無い回になってしまいました。けど、キャラ達が、勝手なことをし出さなければ、次回から戦闘に入ります。何卒よろしくお願いいたします。

 ―――答えは単純。”その場で新しい武器を作る(クラフト)”だ。

 ―――それを、86回連続で命中(HIT COMBO)させれば良い。


 武器作成スキルは、魔法系スキルに似たような物があるが、そもそも、そんな真っ当な状況ではないのだ。彼らは3人ともステータス表示すら全部出そろってない、チュートリアル以前の状態という、有様なのだ。出来ることを、やってみるしかないのだ。


 ワルコフの電磁槍が飛んできた、つまり作戦開始してしまったので、高速機動のまま、木星でスイングバイする探査船のごとく、一角獣を周回して、そのまま戻ってきたコウベ。


 映像空間(ミラー)にコウベが大写しになった。

 湧く、観客たち。確かに、見た目は超カワイイ。ピタピタのコスチュームだし。


 ピタピタさんは、上体を起こすまま軽く飛び上がる。半回転し、高速機動で得た慣性を殺す(ブレーキング)。”重力補正”スキルも、使われているようで、加減速が非常にスムーズだ。裏拳を空撃ちして、右手のナックルガードを格納。着地と同時に驗(シルシ)が投げてよこした、超小型拳銃を、背後も見ずに受け取り、即”分解”する。更に弾みを付けたショートフックを放ち、左手のナックルガードガードも格納。スピンの要領で維持されていた回転が止まり、出来たパーツを驗(シルシ)へ放り投げた。


 うおおおおおお!? カッケーッ!

 切れのあるダンスのような、1回転半の華麗なターンは、観客を魅了した。


 そして、ピタリと静止した彼女の、視線の先には、爆発炎上する、獣。

 即座に青白い亀裂が大気を焦がし、噴煙が四散した。

 ジ、ジ、ジ、と、藍色の体表面を走る放電に、陰りは無い。

 想定通りとはいえ、全く効いていない様子に、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)の暴れ者ガールも、さすがに口の端を引き吊らせる。


 見る限り、毛の先ほども効いてはいないのだが、青白く光る獣の頭上に―――ソレは現れた。

『1 DAMAGE HIT!』。

 燦然(さんぜん)と光輝く”1ダメージ”だ。


 モーションに入る、鋤灼驗(スキヤキシルシ)選手、第1投目。

 少年はフリック入力のショートカットを設定し直していた。

 『コマンド入力』『彫金』『プレイヤー名』『タイムスタンプ』『Enter』『Enter』と。

 これで手に掴んだ物に、一瞬で”ダブらない銘”を刻むことが出来る。


 一度彫金されたアイテムは、LV1の”分解”では解体できなくなる。

 そのため、武器には皆、武器の名前や、プレイヤーの名前を彫り込むことで、簡易的なプロテクト代わりにしている。

 プレイヤーの名前は本人にしか彫金する(彫り込む)ことが出来ないので、プレイヤー銘が入っていれば、全く同じ構成の武器でも、別の武器として扱われるのが慣習となっている。

 実際、有名プレイヤーの愛用品だった物が、高値で取り引きされることも有る。


「総数86丁でぇ総装弾数86発ぅ。全部コンボで当てたらぁ、最高位クラスのボスが倒せるー……作為的というかぁ……”ガトリング・マシーナリー”のー、裏のー仕様なのかもぉしれないわねぇー」


「ふつう、超小型の銃をその小さい分だけ大量に詰め込むってんなら全86丁、総弾4発で、えっと? 344発になんのか?」


「それなら、弾丸のロード順をエディットできる”改造ヘヴィー・ライフル”一丁で足り(・・)……」


「……無い(・・)どすなぁ、……弾丸技工士(バレット・スミス)だって……純粋な弾薬の……種類で言ったら、……精々、20種類……がいいとこどすえ」


 一角獣撃破のための、”行動の詰め込み議論”が再燃し、映像空間を見(応援)もせずに、演算アプリを開きだす環恩(ワオン)達。

 映像空間(ミラー)の中では、サイボーグが、小さい棒を投げている。そして投げた後もう一度投げ、さらに投げ、追加で投げ、投げ、投げ、投げ、……投げていた。


 小さい棒は、小惑星採取の為に設計された採掘槍(ペネトレイター)のような構造だ。先端が攻撃対象に接触する衝撃で、バレル部分に装填した弾薬が発射される仕組みだ。

 この部分の設計は宇宙服(いけず)とVR設計師(カイロ)の共同作業によるものらしい。映像空間越しに喧嘩しながら作ってたのを驗(シルシ)は面白そうに眺めていた。メカ猫耳(ワオン)曰(いわ)く、弾丸装填(ローディング)と同時に撃鉄(ハンマー)代わりの打突針を引き起こす機構(のコッキング)がどうしても難しくなるって話だった。

 結局と言うか、やはりというか、”バレル内部に弾丸と打突針を入れておくだけ”というシンプルな構造になった。

 打突針には重石(おもし)が付いていて、着弾と同時にバレル内部を慣性のまま移動し弾丸カートリッジ底部の雷管(プライマー)を叩くと言う物だ。ゼロ距離射撃に因る攻撃力アップも期待できなくもない。攻撃力アップと言っても、実数値の話では無く、コンボと算出されるだけの最低限の攻撃力達成の話だ。


 そして、テストしている時間はなかった。

 実地テスト兼、決戦。そもそも、ついさっき粉砕された”音響レンズ”も、ろくなテストなどしていない。

 もっともテストなどしていたら、モノケロスの咆哮(獣声)を受けてしまった場合の危険性に気が付き、すべての作戦が頓挫(とんざ)していた可能性も有る。


 ワルコフの電磁槍を驗(シルシ)が投げたことで、攻撃力算出法に違いが出て、”1”ダメージを、もぎ取ることが出来ないかと思われたが、何の問題もなく『1 DAMAGE HIT!』が出た。

 ここで歓声を上げたのは、驗(シルシ)とVRE研の面々だけだった。

 見た目のインパクトは、威力に比例する(・・・・・・・)。

 このわずか”1”が、スターバラッドのシーンを塗り代えていくとは、誰も思わない。


 驗(シルシ)が電磁槍を使い、”1ダメ”を叩きだした事で、ワルコフの”攻撃力”は、装備由来(・・・・)だと判明した。ワルコフも、今はスターバラッドのレギュレーションに乗っ取っているので、LVが上がるまでは鋤灼(スキヤキ)君とそう変わらないみたぁいと、環恩(ワオン)は推測。

 謎の宇宙服のバックパック側面に、セットされている標準兵装、電磁槍。加速用の噴射ノズルへの点火は、ワルコフ(宇宙服)からしか出来ないようだが、装備自体の攻撃力であることに変わりは無い。

 雷撃系耐性が超あるはずの、一角獣に、本当に(・・・)雷撃系でダメージを与えたことから、少なくともLV0でも使用できる武器の中では、”最強”クラスであると歌色(カイロ)が、やや興奮している。手元の有効攻撃力試算のためのツールが、この”1ダメージ”を実測値として計上、自動的に更新された。


 そして、コンボを重ねていく驗(シルシ)少年に、次第に沸き立つ観客一同。

 その背後、不吉な色(・)が見え隠れしているが、誰も背後を気にする余裕は無かった。

 観客は、鋤灼驗(スキヤキシルシ)が加算する、数字に取り付かれている。

 現在7。『3 DAMAGE! 7 HIT COMBO!』だ。

 イヤァッフー♪ ボルテージは無駄にヒートアップしていく。


 コウベから受け取った、金属の円筒(バレル)に、1クリックで、加工する。

 そして、ワルコフが並べてくれていた、弾丸を足で踏んで回収。

 自動的にロードされ、完成する『驗(シルシ)式ペネトレイター』。

 正確に言えば、『SIGN†ORGE 2016/06/18 15:06:01』だ。

 わざわざ射撃して、弾倉を空にしてから、分解するのは、攻撃力(殺意)を検出する察知能力を無効化するためだ。

 空の拳銃を分解して棒状にして、投げつけられても、攻撃力は下がる。少なくとも上がりようがない。

 一度”殺傷能力”の無いもの(・・・・)として、評価した物を、再び評価対象に入れることは、いくら高性能でもAIの特性上、なかなか出来ない。と踏んでの、環恩(ワオン)の賭だった。


 完全にガードされた場合、当たったとしても、その攻撃力は半減してしまい、攻撃判定から漏れてしまう場合がある。

 そのために、自ら小型拳銃を撃ち尽くし、無力化して見せてから、新品の小さい棒として作り上げているのだ。

 装填すると新しい攻撃判定が付いてしもて、”殺意”を再検出されまへんか? と歌色(カイロ)が心配したが、”ガトリング・マシーナリー”の弾薬の取り回しの性能に掛けるしかなかった。リロード行動のない”自動リロード”は、実際、敵に気づかれることなく、無限に撃ち続けられる。そして、コンボは成立している。


 モノケロッスゥッ♪ って、グネッたのも伊達では無い。

 このサイボーグに注目していて貰わないと、装弾数1/1を次々に撃ち尽くすが、有効攻撃力は無いと、驚異たり得ないと、こんな奴が何を投げてこようが、さしたる問題では無いと、思っていて貰わないといけないのだ。

 ”殺意(有効攻撃判定)”を1カ所に集めないようにも、注意している様子が見られる。

 最初に最大まで詰め込んだ超小型銃を、取り出した分の積載量(ペイロード)が、開いているはずだが、一度に充填(リロード)することを避けている。

 ワルコフが1発ずつ、地面に並べたものを、足の裏から回収し、”自動リロード”で驗(シルシ)式ペネトレイター(小さい棒)に補充している。

 涙ぐましくも、しみったれた作戦だが、弾薬(有効攻撃判定)を一度に驗(シルシ)ボーグに充填(リロード)してしまうと、脅威レベルが上がって、熾烈な攻撃にさらされかねない。


 観客は、鋤灼驗(スキヤキシルシ)、いや、”サイン†オーガ”が加算する、魅惑の数字にのめりこんでいる。

 現在20。『38 DAMAGE! 20 HIT COMBO!』だ。

 ヒャッハァー♪ テンションは止まるところを知らず、着実にゆっくりとエスカレートしていく。


 コンボ成立のための、小賢しい仕掛けは、もう一つの幸運も引き寄せていた。

 驗(シルシ)は、適当に放り投げた小さい棒(ペネトレイター)の着弾を確認せずに、右(・)脇腹に突き出た、細い補助腕(サブ・アーム)から、超小型銃を受け取る。

 左手(・・)でモノケロスを射撃。不利スキル<失中>により当然外れる。

 攻撃が外れた場合でも、コンボが持続して成立する場合がある。

 使用した武器に関する、後処理の順番だ。

 武器切り替えで、コンボに繋げたりする場合に、使用後の武器の格納処理などが終わるまでは、コンボの有効期間が延びるのだ。


 つまり空撃ちしても、その武器に関する操作をしている限り、僅かながらも、コンボ持続の有効フレームが伸びて、コンボが続けやすくなるのだ。

 武器に関する操作とは、コウベによる”分解”と、驗(シルシ)による、”加工(クラフト)”だ。この部分を超高速(必死)で行い、理論上最速でつなげていく計算だったのだ。図(はか)らずも、当たらない射撃分のフレーム消費を、トータルで抑える事に成功したのはとても大きい。

 しかも投擲<必中>スキルの強制効果により、有効時間内に驗(シルシ)の手を放れていれば、着弾までの時間は、コンボ継続扱いになる。

 ”必ず当たる”というのは、ゲームシステム上、やっかいな物なのかもしれず、もしここに、ゲーム運営サイドの人間が居たとしたら(・・・・・・)、即刻、<必中>スキルに修正を加えていたかもしれない。


 盛り上がる宇宙開拓時代の公園とは裏腹に、藍色の獣は、静かに身じろぎするだけで、目立った行動はしてこない。

 ソレはソウかもしれない。何せ、―――


 『MΘNΘCERΘS__/LV52』

 『HP_6399962/6400000』


 トゲ付きの藍色毛皮の、HPバーは、まだ1ドットすら赤くなっていないのだ。

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